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ジムノペティ


 次の曲になる。サティの『裸の子供達』が流れてくる。

 サティがそんなに好きなのか、文月は思いながらこの曲に少年時代を思い返す。

 エリック・サティは海運業を営む男の家に生まれた。

 そして、幼くして母親を亡くし、音楽学校に入学するも退学、そこから大衆酒場のピアノ弾きになる。

 『あなたが欲しい』もそんな酒場で生まれた曲である。

 

 「どんな生まれでも、美しいものは美しいし、心を打つものは、また、身分に関係なく心に響くものなのだ。」

農商務省の分割に伴う混乱の中、パリ万博の視察に書生として同行した叔父がそう言ってサティを聴かせてくれた。

 大衆文学 流行曲 それが悪いものではない。

 たとえ、この時代で芸術と認められないとしても、サティも、乱歩作品も、21世紀に伝わらないとは限らないではないか!

 そう、今はエログロ、三文小説と言われようと、大衆曲と笑われようと、こうしてサティの曲がこんな立派な紳士倶楽部で奏でられるように、『悪霊』もまた、一流の劇場で公演されないとも限らないじゃないか!

 

 少なくとも、今、その分水路に僕は関わっているのだ。


 文月の心が熱く込み上げてくる。

 そう、ミステリに置いて、犯人がわからなければ、駄作にもなり得ない。

なんとしても犯人をこの手であげることが編集者としての、昭和と言う新しい時代の文明人としての僕の使命ではないだろうか?


 文月は高価なウイスキーをグッと飲み干した。

 日本酒にはない、カッとする激しい感覚が喉を過ぎてゆく。

 なんでもできるような心持ちに、文月はメモを取り出し、向井を見る。


 「今は、美味い酒を味わっている場合じゃないんです。さあ、物語を、犯人を探しましょう。」


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