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幽霊作家  作者: ふりまじん


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40/40

経費


 しばらく、2人は黙ってお互いの疑問を整理していた。

 文月には『赤本』はどうでもいいことであり、今までの情報をどう、来月号に活かし、なんとか乱歩先生の原稿が上がるまで読者を飽きさせないかが問題だったし、向井は『赤本』の行方に気を取られていた。


 『悪霊』はすでに解決編へと進んでいて、ここでの回想と考察は、読者の文句は出ても受け入れられるものだと思えた。

 特に再来月は3月の年度末でもあるし、この辺りは特集してもいい気がした。


 怪奇ミステリは人気があるジャンルだし、故・夏目漱石、芥川龍之介とアイルランド文学というのもなかなか面白そうな気がした。

 うまくすれば、あの『赤い革の綴り』の正体も乱歩先生に教えてもらえるかもしれない。


 とりあえずは、これでなんとか明日の会議を乗り切ろう。

 編集長の、まさか、本気で自分に江戸川乱歩の作品の続きを書けなんて言ってはいないのだ。

 

 そう考えが決まると、なんだか気が大きくなってくる。ウイスキーをゆっくりと味わう。すると、なんだか気持ちが良くなってきた。

 連日の残業に溜まった疲れもあって文月は一瞬、意識を失った。



 はっ、と、気がついた時に隣にいたのは、自称、明智小五郎だった。

明智は少し、呆れたように文月を見た。

 「随分とお疲れのようで。」

その嫌味な感じに文月は嫌な予感がして時計を見た。9時を過ぎている!

え?納得できない文月はもう一度腕時計を見つめた。そして、どうにも時間が変わらないのを知ると、次に向井を探した。

「む、向井さんは?」

文月の言葉に明智は苦笑してバーテンダーに頼んだ。

「まあ、水を飲むといい。それにしても、洋酒は基本、アルコール度数が高いから、気をつけないとね。」

明智は優しかった。そして、向井が、何かを思いついたからと返ってしまったことを教えてくれた。

「か、帰った?」

文月の間抜けな声に明智が笑った。

「ああ、彼は、夢中になると鉄砲玉だからね。それより、文月君が代わりに書いてくれるのだよね?」

明智は嬉しそうに文月を見る。

「は、書く?あ、ああ、そうですね、でも、今月号は考察文で埋めようと考えているんですよ。」

と、呑気に説明する文月を明智は皮肉な笑顔で文月を責める。

「ふっ、おかしいな、私は君が彼の代わりに台本を書くと聞いたのだがね?」

「え?」

文月は驚いた。が、明智は淡々と説明を続ける。

「私は君が代わりの脚本を書くと言っていたのだがね?」

明智の言葉に文月は驚いた。

「え?そんな事、知りませんよ。お断りします。」

文月はキッパリと断った。明智は少し考えて、ため息を一つついた。

「そうか、向井君らしいな。では、私もここで失礼するよ。」

明智は立ち上がる。文月も帰ろうと立ち上がったところでバーテンに声をかけられる。勘定の催促である。

 渡された請求額に文月は倒れそうになった。


 こんな大金…経費で落ちませんからっ…

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