表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食卓ロマンス  作者: 道乎
3/3

ラー油に魅せられて

みーんみーんみー・・・ん


「セミでさえこの暑さにやられてるな。もう夕方だっていうのにまだまだ暑い」

読んでいた本を膝に置き、ベランダに目をやる。暑い日が続き、食欲もなくなるこの季節が俺は苦手である。さっぱりしたものを求めているのかスタミナがつくものを求めているのか自分でもわからない。それはきっとかなめも同じだろう。

「かなめさーん、今日の夜ご飯面倒だったら外食しない?」

居間に行きかなめを探す。すると、かなめはエプロン姿で台所にいた。

「何か作るの?」

「ラー油」

「ラー油?ってあの辛いラー油?」

「そう。私ね、辛い物がすごく好きなの。売ってるラー油は油の味しないから苦手でね。正治さん、辛いの平気?」

「激辛すぎるのは好きじゃないけど、辛いのは大丈夫」

「じゃぁ、楽しみにしてて。私のラー油の大ファンにしちゃうから」

かなめはフライパンを取り出しウィンクした。

「作るの見てていい?」

「もちろん!」

僕は食卓に座り、かなめが料理するのを見る。

「全部目分量なんだけどね。気分で作るから毎回辛さが違うのよ」

かなめは笑う。

「奥様は今日はどんな気分ですか?」

「かわいい旦那様のために中辛でいきましょう」

かなめは、サラダ油、輪切り唐がらし、花椒、一味唐辛子、白ごまを出した。

「作り方は簡単なのよ。サラダ油に塩を一つまみ入れて140度くらいに温めます。そこに、一味唐辛子、花椒、輪切り唐辛子を入れて、少し火を通すの」

そう言いながら次々油に投入していく。辛いにおいが家中に広がる。

「匂いがすでに辛いよ」

「ふふ、そうでしょ。そうしたら、仕上げにゴマを入れます。少しかき混ぜてゴマを焦がさないように、これくらいかな!あとは熱が取れるまで放置します。冷めたら瓶に移して完成です!」

「おぉ!」

「今日食べてもいいけど、数日置いてからのほうが辛くていいのよね。根拠はないけど」

ケタケタ笑う妻をみてほっこりした気持ちになる。

「食べるのが楽しみだな。そうだ。夜ご飯はどうする?食べに行く?」

「うーん、せっかくラー油を作ったから、さっそく使って何か食べようか」

「かなめさんがそれでいいなら。何食べる?」

「ラー油と言ったら、餃子がてっぱんですが、今日は暑いので『ひっぱりうどん』にしようと思います」

「ひっぱりうどん?」

「はい。こうご期待あれ!!あ、足りないものあるから買いに行かなきゃ」

食卓の上には、かわいい瓶にはいったほんのりあったかいラー油が3つ。初めて嗅ぐラー油の香りと、かわいい新妻に笑みがこぼれる。

「暑いから車で行こう。ついでにビールも買おうか」

「いいですねぇ」

手をつなぎスーパーへ向かう。セミはまだ鳴いてるし、熱風もすごいけどラー油の刺激的な香りで食欲が出てきたことに気づく。ひっぱりうどん楽しみだな。買い物も終わり帰宅する。

「じゃぁ、さっそく作っていきましょう!」

僕は食卓に座る。

「して、かなめさん。ひっぱりうどんとは?」

「山形の郷土料理みたいなんだけど、本場のものは食べたことなくて、姉から教えてもらったからオリジナルね。きっと」

いたずらっ子のように笑いながら、でも美味しいのよ。といった。

冷蔵庫から出てきたのは、うどん、納豆、卵、めんつゆ、ネギそしてシーチキン

鍋にうどんを茹でている間に、ちょっと深めのどんぶりにそれらを入れていく。

「はい、完成です!」

「早い!」

「目の前にあるラー油はお好みで入れてください」

鍋ごとうどんが前に出され、かなめは丼の中身をかき混ぜた。

「ほら、正治さんも混ぜ混ぜして」

言われるがまま混ぜ、ラー油も入れる。

「そうしたら、うどんを絡めて」

ズルズルズルー!豪快な音を立てながら、かなめはうどんを食べた。おいしそうだ。僕もかなめの後に続きうどんを垂れに絡める。ズゾゾゾ

「おいしい!!」

「でしょでしょ?よかった!」

「すごくおいしい。納豆やシーチキンだけだと少し重いかと思いきや、ピリッとしたラー油がアクセントになってビックリするくらい美味しい。ちょっと痺れるのは山椒?」

「そう、花椒。これがあるかないかでラー油の味が違うのよ」

「すでもかなめさんのラー油の大ファンだよ!辛いからビールにも合うね」

ビールをゴクゴク流し込む。

「ふふふ、そうでしょう。ラー油はなんにもでもあうんだよ」

「それに、この納豆タレっていうのかな。初めて食べた組み合わせだけどとてもいいね」

「本当はシーチキンじゃなくて鯖缶らしいんだけど、鯖缶は高いから私はシーチキン」

「十分美味しい!大満足だよ」

あっという間に完食をした。ラー油の魅力に取りつかれ、明日はこのラー油を何にかけようかと思いながら食器を洗う。冷ややっこ?いやいや、やはりてっぱんの餃子かな。餃子で食べたい。食器を棚に戻し台所が終わったくらいに、かなめが風呂から上がってきた。

「片付けありがとう!ビールのもう」

「かなめさん。明日の夕食のリクエストなんだけど」

「餃子?」

「なんで分かったの?」

「あはは、声に出てたよ。明日は餃子にしよう!」

「恥ずかしいな。明日帰りに餃子買ってくるね」

「ありがとう!明日の夕食が楽しみ。明日一日頑張れるね」

食卓の電気を消し今日を終える。明日も食卓に座るのが楽しみだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ