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食卓ロマンス  作者: 道乎
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お見合いそして結婚

まずは自己紹介からさせていただきます。


私、遠藤かなめは今年で32歳になります。地元の不動産で事務員をしています。

特別可愛いわけでもスタイルがいいわけでも、仕事が出来るわけでもございません。

これといった特技もなく、手取り20万で細々と生活をし生きております。このまま一生独身か?と漠然と思って居たところ、親戚の叔父からお見合い話がきました。この年で今更・・・と思うところはございましたが、わざわざ話しを持ってきた叔父の顔を立てるためにお見合いをすることになったのです。そのお相手が。


僕、佐伯正治です。今年で28歳になります。貿易会社に勤めています。

僕は結婚願望が人一倍強いのですが仕事が忙しく、相手を見つける暇もなければデートをし恋愛をし結婚というステップを踏めずにいました。行きつけのマスターに愚痴をいうと、かなめさんの話しが出ました。かなめさんは僕のことを知らないと思いますが、僕はかなめさんに2回ほど会った事があり是非お見合いを設けてほしいとマスターに頼んだしだいであります。


そんなこんなで、私達はお見合いをすることになったのです。

お見合い当日は淡々と進んでいき、その日は顔合わせ程度と軽く話しをして無事に終わった。私からみた佐伯さんは長身のイケメンで、なぜこの人がお見合いをするのかと不思議なだった。本人は仕事が忙しく彼女を作っている暇がないというけれど、社内の女子の憧れしかないように思える。しかも、私は彼の5歳も上。きっと2回目はないだろう。いい思い出として終わろうと心の中で手を合わせて一日を締めくくった翌日、今週の日曜日水族館へデートしに行きませんか。と連絡が来た。素直に嬉しく浮き足立ってしまったことを覚えている。


駅で待ち合わせをしていると長身の佐伯が私に手を振ってきた。

「かなめさん、こっち」

「お待たせしましたか?」

「いえいえ、僕が楽しみで少し早めに来ただけです。お気になさらずに」

「そうでしたか」

「はい、それでは行きましょう」

佐伯さんは自然に私の手を取り歩き始めました。

「あの、」

「ん?どうしましたか?」

「いえ、あの。手を」

佐伯は自分がかなめの手をつかんでいることに気がついてなかったようで慌てて手を離しました。

「あぁ、すみません。イヤでしたよね?」

慌てふためく佐伯を見てキュンとした。

「イヤじゃないです!」

思わず勢いよく答えてしまい赤面する私をみて佐伯が優しく微笑み手を握り直した。

「では、このままつないでいてもいいですか?」

「はい、もちろん」

久々に感じる少し照れくさい甘酸っぱさに思わず笑みがこぼれる。

水族館でゆっくり過ごし、夜ご飯を食べていると佐伯がニコニコしてこちらを見ていることに気がついた。

「どうしました?」

「いえ、2人で食事をしていて楽しいなと思って。普段は1人で食べてるので味気なくて」

「わかります。私も普段は1人なので一緒に食べるとおいしく感じますよね」

「かなめさんは普段料理しますか?」

「簡単な物ですけどしますね」

節約のために・・・とはいえず少し言いよどむ。

「今度食べたいな、かなめさんの手料理」

「たいした物は作れませんけど、次に会う機会があったらお弁当作ってきますね」

「いんですか?」

「もちろん」

「じゃぁ、来週ドライブへ行きましょう!かなめさんのお弁当楽しみだな」

「苦手な物ありますか?」

「ウニと生サーモンが苦手です」

「私もそれ苦手なのでちょうど良かったです」

次の約束をし、その日は終わった。


「かなめ先輩。デートどうでした?」

翌日出勤すると後輩の早紀が近づいてきた。

「控えめに言って、とても楽しかった。余韻から抜け出せない」

「夢の国じゃないですか」

早紀が笑う。

「本当に素敵なのよ。スマートって佐伯さんの為にある言葉だわ。来週もデートなんだよ」

「すごいじゃないですか!」

「年甲斐もなくワクワクしちゃうよ」

「張り切りウィークですね!」

「そうなの」

「けど、先輩。わたしよく分からないけど、お見合いって3回くらいのデートで結論出したりしないんですか?」

「あ。そうよね...よく聞くよね。けど、今は令和だしそういうのあるのかな」

来週で佐伯と会うのが終了となると思うと悲しい気持ちになる。落ち込んでいるかなめを見て早紀が

「先輩、めっちゃ好きじゃないですか。先輩から告白しちゃってもいいと思いますよ」

「そんな勇気があったら、私は今頃人妻で子持ちだとおもう」

「そんなこと言わずに、言わずに後悔する方がつらいですって」

「そうね。よし、日曜日、また会いたいって言おう!」

「応援します!」

日曜日が来るのがとても待ち遠しかった。いつもより長い一週間を過ごし、ようやく来た日曜日。

今日は佐伯が車で迎えに来てくれた。車の前に立つ佐伯を見てキュンとした。

「おはようございます」

「おはようございます、晴れて良かったですね!」

「はい」

「じゃぁ、早速行きましょう」

スマートに助手席のドアをあけ私を誘導する。もう惚れるなってのが無理。思いのほか運転席と助手席の距離が近くて緊張する。

「僕、今日が楽しみで一週間長かったです」

同じだよー!昨日眠れなかったよ!とは言えず、落ち着いてるふりをする。

「私もです。ところで今日はどこに行くんですか?」

「着いてからのお楽しみ」

少しイタズラっぽく笑う佐伯に私は心の中で悶絶した。高速を1時間ほど走り景色が変わってきた。

「ドライブ久しぶりだから楽しいです」

「それは良かった。もうそろそろ着きますよ」

佐伯はそういうと、山の中にある細い道を曲がった。

「こんな所に道があるなんて。あ!佐伯さん見て!鹿がいる!」

「はは、鹿もかなめさんを歓迎してくれてるんですね。着きましたよ」

佐伯が車を停め、助手席のドアを開けてくれた。ゆっくり降りると空気が澄んでいるのがすぐ分かった。

「今日はここでゆっくりディキャンプしましょう」

佐伯はそういうと、手際よくタープを組み立てテーブルと椅子を出した。

「わたしも今日お弁当作ってきたので出しますね」

「楽しみにしてました!」

「本当にたいした物ではないんですが」

ワクワクが伝わってくるので少し弁当を出すのを躊躇するが作ってきた弁当を出した。

「おぉ!」

「今日は、定番のおにぎりお弁当にしてみました。お口に合うといいのですが」

用意してきた紙皿におにぎりと唐揚げ、卵焼き、金平ゴボウをわたす。

「こういうのいいですよね!いただきます!」

食べ始める佐伯をハラハラした気持ちで見つめる。

「うま」

その言葉に安堵した。

「よかった。私もいただきます」

「かなめさんの前にあるタッパーはなんですか?」

「え?あ。蓋を開けるのを忘れてました。漬物です。食べますか?」

「いいですか?」

「もちろん。漬物は好き好きがあるのでどうかなと思ってたんですが、好きですか?」

「漬物大好きですよ」

きゅうりの浅漬けを差し出すと、佐伯はおいしそうにパリパリ食べた。大自然のなかゆっくり食事をし他愛ない会話をした。

「おいしかった、ごちそうさまでした!かなめさん、コーヒーでも飲みますか?」

「はい」

「じゃぁ、ここからは僕がコーヒーをごちそうします」

そういうと、鞄からミルを取り出しゴリゴリ豆をひく。川の音と鳥のさえずりが合わさり心地の良さを感じる。雲一つない天気に頬に触れる少しだけひんやりする風に少し目を閉じた。しばらくして、コーヒーの香りがし目を開けると、佐伯が優しく微笑み膝掛けをかけてくれていた。

「ごめんなさい、私ちょっと寝てました?」

「いいんですよ。気持ちがいいですからね。ちょうどコーヒーも入りましたよ」

「ありがとうございます。おいしい」

「それは良かった。いいですね、こういう休日」

「本当。リフレッシュってこういうこと言うんですよね」

「いつもは1人で来るんですが、今日はかなめさんがいてくれるので楽しいです」

「1人で来るんですか?」

「はい。仕事でうまくいかなかったときとか気持ちの切り替えがうまくいかない時なんかはキャンプしによく来るんです。ここは電話もつながらない場所ですからゆっくり本を読んだりして過ごしてました。かなめさんはキャンプ好きですか?」

「したことがないので分からないですが、してみたいとは思います。今日がとても楽しいので」

「遅くなるのでそろそろ帰りましょう」

佐伯はにっこり微笑んで片付け始めた。その日の帰りの車中で結婚を前提に付き合ってほしいと言われた。デートを5回してプロポーズされ、私達は結婚することになった。


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