メール
「許さないって……」
「佑月愛。お前がいじめた少女の名だ」
その名前を出すと言うことは、やっぱり、この人は……。
「そして、俺のいもうとの名でもある」
「……ごめんなさい」
「手紙も二度と書くな。愛には一度も見せていないが、不愉快だ」
やっぱり、ちゃんと届いてなかったんだ。わかっていたけれど。ぎゅっと、手を握りしめる。
「私は……」
いじめたことを反省してる。でも、その言葉が傷つけられた彼女にとってどれだけの価値になるだろう。
「……ごめん、なさい」
結局私の口から転がり落ちたのは、謝罪の言葉だった。
「俺はお前の言い分や謝罪が聞きたい訳じゃない。ただ、誰が許そうと俺はお前を許さないことを覚えておけ」
「……わかりました」
私が頷くと、佑月会長は鼻を鳴らした。
「不本意だが、執行部の一員になった以上明日から仕事はしてもらう。だが、今日はもう帰れ」
私の横に置いていた腕を退けると、佑月会長はくるりと踵を返した。
そういわれて生徒会室に居座れるほど、私の神経は図太くない。
失礼します、と一言だけ残して生徒会室を後にした。
翌朝、学園に着くと早速隣の席の子に挨拶をする。
「おはよう」
けれど、その子は目をあわせてくれない。なんでだろう。昨日は、笑顔を見せてくれたのに。
聞こえなかったのかな。もう一度、挨拶をする。
「おはよう」
すると、その子は気まずそうに私を見たあと、小さな声で囁いた。
「ごめん、私に話しかけないで」
「……? わかった」
もしかしたら、何か彼女に嫌われるようなことをしてしまったのだろうか。それか、今日は機嫌が悪い?
疑問に思いながらもひとまず席に座り、授業を受けた。
昼休み。その後も様々な子に話しかけたのだけれども、女の子はみんなそろって、気まずそうな顔をしてもう、話しかけないでほしいと言われるだけだった。
いい子は、きっと友達がたくさんいるに違いないのに。このままじゃ、いい子になれないよ。私が途方にくれていると、一人の男子生徒が私にこっそりと声をかけた。
「八条さん、ちょっときて」
「……? うん、わかった」
男子生徒についていかれたのは、とある空き教室だった。
「このメール、見てほしいんだ」
「メール?」
人の携帯を覗くのは少し気が引けるけれど、何かこの状況を打破するきっかけになるかもしれないと、見せてもらう。
どうやら、何人かに一斉送信されたメールのようだ。
『可愛い僕のお姫様たちへ! 頼みごとがあるんだ』
頼みごと? 何だろう。というか、これは、お姫様って誰が誰に送ったメールなのだろう。
疑問に思いながらも、読み進める。
『八条真白さんって子とあんまり仲良くしないでくれたら、嬉しいな。あっ、もちろんこれはお願いだから、嫌ならこのメールは無視してね!』
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