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エピローグ①「お見舞いの日々」

「レエエエエエイ!! お前って子はなんだっていつもいつもいつもいつもぉ!!」


「このお馬鹿さんは本当にもう! 本当に本当に本当に本当に本当にもうもうもうもうもう!!」


「ぐぎゃあ!! お父様お母様!! 私、怪我人! 怪我人ですからそんな全力で抱き着かないでくださいまし!!」


「お嬢様ぁ! ご無事で……よくぞご無事で……ううぇえええええん!!」


「爺やも! そんな子供みたいな泣き方してないで助けなさいな!!」


「静かにしなさい、レイ! ここで怪我したのも何かの天啓だよ! お前はもっとおしとやかさを学ぶべきだ!」


「そうですわよ、レイリィース! 幸いここは王都ですし、礼儀作法の家庭教師は山ほどいます! ベッドで動けない間は先生に座学を詰め込んでもらいましょう!」


「ママ! それって最高の案だよ! さすがだね!」


「でしょう、パパ!? こうなったら善は急げですわ! さっそく探しに行きましょう!」


「よーし! それじゃレイ! 僕たち、ちょっと出かけてくるから安静にしてるんだよ!」


「そうそう! ベッドから一歩もでないように!! いいですわね!!」


「それじゃ行こうか、ママ!」


「はい! パパ!!」


「アハハハハハッ!」「オーホッホッホッホッ!」


「………………動きたくても、ぐったりしてもう動けませんわ」


「うえええぇえんん! お嬢様ぁっ……!!」


「爺やもいい加減、泣き止みなさい! お手洗いに行ってる王子様も、もう戻ってきますわよ!! ほらしゃんとして!!」


「うぐううっ……。かしこまりまりまりましてございまするぅ……」



――――――




「だからね。あなたには本当に悪い事をしたと思っているのよ。わたくしの行動が少し性急に過ぎた面があったのは確かですもの。それを気取られたのが原因で、コウは行動を早めたのでしょうしね」


「いえいえ、ティアラ様には陰ながら色々とお世話になっていたようで、感謝のしようもないですわ」


「私がしたことなんてあなたに比べれば本当に小さなことよ。ただ調べて、根回しして、教えただけ……。切った張ったの大立ち回りをしたあなたに比べれば、本当に小さな小さなこと……」


「いや、そんなことは……」


「でもね、結構楽しかったわ」


「えっ?」


「やっぱり舞台は見るよりもその上で踊った方が楽しいわね。また何か機会があればあなたとご一緒したいものだわ」


「えぇっ……? いや……えっと……その……さすがにもう、私はこんなのごめんというか……」


「あらそう? 残念。でもきっとあなたと私って――」


「――そこまでにしろ、ティアラ・エルモンド・ディスパーション」


「あらあら、ジョー・ジャック・ジャン・ジョーンズ。私の話をさえぎるなんて、なんのつもり?」


「王子がいない間の護衛を頼まれてるんでな」


「あらやだ? 私がこの子の敵だとでも?」


「違う。あんたは毒だ。扱いようによっては薬にもなるが、基本は人が触れるものじゃない。黙って棚に飾られてろ」


「まぁ! フフフッ! 酷い言い草ね。誰に拾われたのか忘れちゃったのかしら?」


「過去はどうあれ、今の主はクロムウェル王子だ。あんたじゃない」


「フフフッ……。相変わらず可愛い子ね……。まぁいいわ。今日の所はこの辺で棚に戻りましょうか。それではね、レイリィース。またどこかで……」


「あっはい……。お気をつけて、ティアラ様」


「………………」


「……ジョー様?」


「なんだ?」


「ちょっとこちらに……」


「………………」


「んー、頭はカツラでおひげが生えてて~……。でもやっぱり、あんまり似てませんわよねぇ、お二人って……」


「わざと似ない様にしてるんだ。これでも、化粧して声音こわねを寄せて衣装を整えれば近くから見ても気付かれん」


「うーん……本当ですの……?」


「ハァ……。『おいたはそこまでにしな、レイリィース』」


「っ!?」


「これで満足か?」


「ひゃい……。び、びっくりしましたわぁ……。で、でも困りましたわねぇ。そんなに似てるんじゃ、今後イタズラされた時に見分けがつきませんわ」


「大丈夫だ。心配するな。そんな悪戯するつもりはない」


「はい? どういう意味です?」


「馬に蹴られて死にたくはない」


「ん~?」


「好き合う二人の邪魔をする気はないと言ったんだ」


「ハマチョッ!? なななななななああ!」


「はぁ……王子も物好きだな……」




――――――




「レイリィース様! 失礼いたします!」


「アヤ……。怪我人の部屋だぞ、もっと静かに入りなさい」


「あっ。し、失礼しました……」


「いえいえ、肩の力を抜いて、楽になさってください。アヤ様もシナノ様もお見舞いに来ていただいてありがとうございます。どうぞ、椅子におかけくださいな」


「「ありがとうございます。失礼します」」


「はい。ご来訪に感謝いたしますわ。ベッドの上でごめんなさいね」


「いえいえ、お体が一番大事ですから。……それで傷のおかげんはいかかですか?」


「ご心配ありがとうございます、アヤ様。もうすっかり良くなってて、今度、抜糸する予定ですの」


「あ~良かった……。あの騒ぎの後、レイリィース様が刺された上に意識を失ったと聞いてずっと心配していたんです。かといってクロムウェル様もいるこのお宅に訪問する勇気も中々湧かず……」


「あらまぁ。お気になさらず気軽に訪ねていただいて構いませんでしたのに」


「いやいや! そう言う訳にもいきませんよ! レイリィース様はクロムウェル様の婚約者な訳ですし! そのクロムウェル様も、今度王位を継ぐやもしれない訳ですし! やはり節度を保って……」


「でも、私達お友達でしょう?」


「っ!?」


「友に距離を置かれることは、風を失い、光をなくし、温もりが消えるのと同じですわ。寂しいことをおっしゃらないでくださいまし」


「レ、レイリィース様……」


「アヤ様……」


「うぐぅ…………」


「…………シ、シナノ様? きゅ、急に泣き出してどうしましたの?」


「し、失礼をば……。しかし今の状況はまさしく『ジークフリード物語』の3巻、135ページと同じで……。思わず胸が熱くなってしまい……ぐぅうう……」


「ご、ごめんなさい、レイリィース様……。実は兄もあの小説が大好きで……」


「あらあら。でしたら、このあとここの案内でもしましょうか?」


「ッ!? ま、まことですか!!?!?!?」


「ええ。お医者さまにも『息が切れない程度の運動はするように』と言われてますので、ちょうどいいですわ」


「レ、レイリィース様、ご無理をすることはありませんよ?」


「アヤッ!! せっかくのご厚意を無下にするなんて失礼ではないか! ここはお言葉に従おう!」


「ハハハッ……。これですよ。こと本が関係すると人が変わっちゃうんです……」


「フフフッ。楽し気でいいじゃないですか。さっ、まずはお茶でも……」


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