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第4話『バッドエンド×n』

『ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン』


「ハッ!?」


 聞き覚えのある古時計の音!


 体を起こして周囲を見渡してみれば、見覚えのある別宅の私室内。


「も、戻って来た……戻ってきましたのね……! お見合いの日に!」


 コンコン。


『お嬢様、お目覚めでしょうか』


 ドアから響く声。


 爺やの声ですわ。


 でも、それに反応している余裕も時間もありません!


「に、逃げきって全部終わったらどうするかとか、人の心配してる場合じゃありませんわ……! まずは自分の命が大事! 近場はダメ! もっと、もっと遠くに行かないと!」


 ベッドから抜け出し、すぐに追いかけられないよういつもやってるように布団を人型に整えたら、小銭袋を取って窓から逃走開始です!




――――――




「オーホッホッホッ! 王国北の果て! 人もほぼいない雪山まで逃げてきましたわ! こんな所まで追ってくる王族がおりまして!? いーえ、おりませーん! いたとしても臣下の方々が止めてくれまーす!」


 完璧! 完璧な避難場所ですわ!


 まだまだ雪の残る険しい山ですが、幸先よく洞窟型のシェルターと凍ってない川も見つけましたし!


 王都で耐寒装備やサバイバルグッズを整えて来たから準備は万全!


 狼の毛皮を使った灰色のコートに、茶色の耐水ブーツに手袋。これにより凍傷の心配もなし!


 あとは十数日でもここでキャンプしてればそれで問題解決ですわ!


「さーて、本日は罠にかかった魚を煮込んじゃいますわよぉ! 貴重なエネルギー源! 貴重なエネルギー源ですわぁ!」


 シェルターの前で燃やしている焚火たきびに薪を足しながら、側に置いた鍋に雪を入れて水を作り、取って来た手のひら大の魚の腹を割き内臓を処理。


「内臓は遠くに埋めてぇ! 食事が終わったら乾いた木を探してぇ! 新しい罠も仕掛けてぇ! シェルターももっと過ごしやすくしてぇ! あーもう、やることがてんこ盛りですわぁ! もっと人手が欲しいですわねぇ!」


「失礼します! 木材を集めてまいりました!」


「あら、ありがとう。いい枝ですわね。そちらにまとめておいていただけます?」


「了解!」


 ふふふっ! サバイバルって何だかテンション上がりますわねぇ!


 やっぱり人間、部屋の中に引きこもってるだけじゃダメですわ!


 お日様の光を浴びないと腐っちゃいますとも!


「失礼します! 自分、食料の調達に行ってまいります!」


「あっ、助かりますわぁ! 東の斜面は雪がゆるんでるからお気をつけてぇ!」


「了解!」


 さーて、魚の下処理はこんなもので――。


 ん?


「んんんん?」


 今の殿方たちは一体――


「ほう、この俺とのお見合いから逃げ出して、雪山にこもってる女がいると聞いてきたが……」


 こ、この声!? そんな!? まさか!?


「フッ! そのとんでもねぇ生命力に、ずば抜けたサバイバル能力……。おもしれー女じゃねーか! 気に入ったぜ!」


「あ、あなた様は!?」


「お前、俺の婚約者になれよ!」


「げぇっ!? ど、どうして!? なぜ王子様がこんな雪山に!? 臣下の方々は何してますの!?」


「ハハッ! 近衛騎士の抜き打ち特訓の予定があってな。その目的地をわざわざここにしたんだよ。おもしれー女に会えると思ってな!」


「おもしれーのはあなたの脳みそですわ!」


 って、ハッ!?


 つい思ってもいる事を言ってしまった!?


 い、いやでも、これは逆にチャンスですわ!


 これで王子様から嫌われでもすれば、婚約もお流れになるはず!


 そうなれば私は生き残れる!


 王子様に嫌われさえすれば!!


「この俺に対して『おもしれー脳みそ』だと……? おいおい、てめぇ……」


「ゴ、ゴクリ……」


「ますますおもしれー女じゃねーか! お前、俺の婚約者決定な!」


「あなたのおもしれーに限度はございませんの!?」


「よし、コウ! 訓練が終わるまで、そいつは任せたぞ」


「承知いたしました」


「げぇっ!? コウ・マクガイン様!?」


「よろしくお願いしますね」


「今一番よろしくしたくないお方ですわ!?」




――――――



 ――絶対に許さない。


 ――連行しろ!!


 ――死刑に処す!


 ――飲め。


「こんちくしょおおおおお!!」


 グビィイイイイッ!



―――――――




「オーホッホッホッ! 風が気持ちいいですわねぇ! 外国行きの船に乗れましたわぁ! 流石のクロムウェル様も海の上までは追って来れないはず! 婚約者が決まるまでは、他国の観光名所でも巡ってやりますわ!」


「お、おい! あの船、こっちに向かってくるぞ!」


「待て! 帆をたため! 錨おろせぇ!」


「まずは砂漠の国アムルーに行って……ってなんか水夫の方々が騒がしいですわね。一体何が――」


「あの旗! 王族の船だぞ!」


「気をつけろ! ぶつけんなよぉ!」


「――そ、そんなまさか!?」


 ドタンッ!


「ふ、船から誰かが飛び移っ!?」


「ほう、この俺とのお見合いから逃げ出して、一人で諸国漫遊たぁ大した奴だ」


「じょ、冗談でございましょう!?」


「おもしれー女じゃねーか! 気に入ったぜ! お前、俺の婚約者になれよ!」


「あ、ありえませんわぁああああ!」




―――――――




 ――絶許。


 ――連行。


 ――死刑。


 ――飲め。


「諦めませんわよぉおおおお!!」


 グビィイイイイッ!




――――――――




「オーホッホッホッ! 今度こそ国外に逃げ出せましたわ! ここまでくればいくらクロムウェル様だって追って来れません! あとはラクダにでも乗って観光――」


「ほう、この俺とのお見合いから逃げ出して、外国で砂漠巡りだぁ?」


「えっ?」


「おもしれー女じゃねーか! 気に入ったぜ!」


「ええっ!?」


「お前、俺の婚約者になれよ!」


「さすがに諦めが悪すぎませんことぉ!?」




―――――――




 許


 連


 死


 飲


「負けませんわあああああああ!!!」




―――――――




「大きな屋敷の裏方メイドになれば――!」


「ほう? 貴族のご令嬢がメイドに扮するたぁ、中々おもしれーことやってんな?」


「何でここにいますの!?」




―――――――




「冒険者! 冒険者になって人生リセット――」


「おっと、中々おもしれー冒険者がいるじゃねーか。当然、俺からの依頼も受けてくれるよな?」


「王族の自覚がありまして!?」




―――――――




「いっそのことコロシアムの闘技者になれば――!」


「なんだ? 随分とおもしれー闘技者がいるじゃねーか」


「どこにでも来ますわね、あなた!?」




――――――――




「それなら~♪ いっそ舞台女優にでもなれば~♪」


「おもしれ~女じゃ~ねぇ~か~♪」


「ありえま~せんでしょ~♪?♪?♪?」




――――――――




 まだ!


 まだまだ!!


 まだまだまだ!!


 まだまだまだまだまだまだ!!


 負けませんことよぉおおおおおお!!



『ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴ――』


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