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第31話「開廷」


「それでは、これよりレイリィース・ジョゼフィーヌ・ヴィランガードの国王陛下暗殺未遂事件についての裁判を開廷する」


 私の正面、今立っている証言台の前。


 二段ほど高くなった裁判官席。


 その中央に座るお方が、コンコン!と小槌で台を叩いてそう告げられました。


 あのお方こそが貴族裁判所の長官にして、『会合』で私と対峙したルイーズ様の父。


 ギルバート・ラング・ローラン公爵。


 レッドブラウンの長髪をセンター分けした厳しい顔つきの男性ですわ。


 漆黒のローブのような法服ほうふくを身に付け、こちらをその青い瞳で見降ろしています。


 その脇を同じ服を身に付けた裁判官の方々二人が固めています。


 またその一段下の席に、書記の方々が発言内容を書きとるためにお二人座られています。


 ま、マジで始まっちゃいましたわ……。


 時刻は13時。


 貴族裁判所内にて、私の暗殺未遂についての裁判がついに開始されました。


「…………ふぅ」


 敵ばかりが存在する法廷の中で、一つ息をつき緊張をほぐします。


 こうなってしまった以上、なんとか死刑宣告を回避するために尽力しなくては……。


 過去のループにおいて、ギルバート様は私を殺すための陰謀に加担されていました。


 ルイーズ様が炊き付けたのもありますが、自らの娘を王族の嫁にしたい、他の者がその座に着くなど許せないという、ご自身の都合も多分に含んで、私を消すためにこの方は動かれていたのです。


 これは、これまでのループで行った調査で既に明らかになっている事実ですわ。


 そして、今回のループでも私にあの毒薬を飲ませるために、こんな無理な日程で裁判を開かれた。


 ギルバート様がこの陰謀に加担しているのはやはり明白ですわね。


「――以上の証拠を皆さんも確認されたでしょう。事ここに至っては、被告に国王暗殺の意思があっと見るのが最も自然です!」


 そうして私が考え込んでいる間にも、状況は進んでいます。


 今は私の左手側にある検察官席に立つ男性が、左手に持った紙を叩きながら勢いよくそう言い放った所です。


 肩ほどまでの長さのカールした金髪。


 ヒスイ色の瞳キラキラと輝かせた若い男性です。


 法廷に似合わない白を基調とした服を身に付けていらっしゃいます。


 その検察官さんの声を聞き、ギルバート様がコクリとゆっくり頷かれると口を開かれようとして。


「異議あり」


 それを遮るようにして私の右手側に立たれるシナノ・マリンフォード様がそう告げられました。


「まず、被告には国王陛下を暗殺しようとする動機がありません。そして、他国のスパイと密会したという証言、毒薬、被告の筆跡の密書。その全てが彼女を陥れるために偽装された可能性が残っています」


「なにを!」


「それを議論することなしに、判決を下すわけにはいかないでしょう。違いますか、裁判長?」


 食ってかかる検察官の方を無視して、シナノ様がギルバート様を見てそう問われます。


 しかし、黒衣の裁判長様はそれを見返すこともなく口を開かれました。


「その必要はない。今より判決を下す」


 ファッ!?


 理論整然りろんせいぜんとしたシナノ様のお言葉を無視するようにして、ギルバート様が判決を告げようと小槌を振り上げられて――!


「ご自身の陰謀が白日はくじつの下に晒されるのが、それほど困りますか!? ギルバート・ラング・ローラン公爵閣下!!」


 ――シナノ様が大声でそう告げて、その動きを止めました。


 ジロリと、裁判長様が弁護席に立つ、かのお方を見られます。


わたしの陰謀だと?」


「ええ、あなたの陰謀です。確か閣下のご息女は、先日のクロムウェル様とのお見合いに参加されていたとか」


「それがどうした?」


「分かりませんか? レイリィース嬢には国王陛下を暗殺する動機などありませんが、あなたには彼女を殺す動機が存在すると言っているのです」


「なにを!?」


「あなたは、ご自身の娘が婚約者に選ばれなかったのを逆恨みし、かといって王族を敵に回すことも出来ず、このような姦計を用い、己の矮小わいしょうな自尊心を少しでも満たそうとされた。そのためにレイリィース嬢が生贄となった。それがこの事件の真相なのではないですか?」


「き、貴様!? この私をうたがっているのか!? 自分が何を言っているのか分かっているのか!?」


「法廷内にある者には身分の上下など関係ありません。私はただ、真実が知りたいのです」


 肉が歪む音が聞こえて来そうな程の表情で、ギルバート様がシナノ様をにらみつけ、憎々し気に口を開かれました。


「先ほどの言葉は嘘か……!」


「協力すると言ったのは、弁護士としての協力であって、あなたへの協力ではありません」


「貴様……!!」


 そう言い合いながら対峙されるご両人。


 ていうか、シナノ様ってばお覚悟が決まり過ぎですわ!?


 あんなこと言ってたら、この裁判が終わった後どうなるか分かりませんわよ!?


 ご自身のどころか、ご家族の身さえ危険に晒される可能性が高いですわ!?


 しかもギルバート様なんて所詮は下っ端に過ぎませんのに、かのお方を標的にするなんて!?


 こ、こんなの!?


 やっぱり黙って見てられませんわ、もう!!


「そこまでにしてください、シナノ様!!」


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