第20話「一息ついて」
「んへぇ~……疲れましたわぁ……」
その後、ティアラ様とのお茶会を終え、自室へと戻った私は服も着替えずにベッドへと倒れ込みました。
流石に今日一日で色々あり過ぎましたわね。
体がジンワリと重く、頭も火照っています。
ご令嬢方との会合にルイーズ様との対決。
そして、クロムウェル様の従姉にあたるティアラ様との予期せぬ出会い。
体力だけならどんなご令嬢にも負けない自信がありますけど、さすがに疲れ果てましたわ。
ベッドの上でゴロリと転がり見慣れた天井を見上げてみます。
でも、大変でしたが実りのある一日だったのは間違いありません。
ティアラ様の言葉を信じるのであれば、ご令嬢方の私に対する意識は大きく変化したはずです。
お茶会の最中、あのお方に聞いてみたところ。
『令嬢たちが集団であなたを貶める? ないない、ありえないわ。今日この場で、己の気高さと愛情深さを証明したあなたを相手取って、陰謀を企てるほど性根の腐った子はいないし、そんな事をすれば自分の評価がガタ落ちするじゃない』
との回答を得ました。
つまり、これまでのループで私が告発されていた原因には。
ご令嬢方の嫉妬と、私が『王子様を誑かして婚約者となった悪女である』と言う間違った認識があり。
それを大義名分として結束していたので、そこが改められれば陰謀も企てられないと言う訳ですわね。
つまり、初期の目論見通り、婚約の許可を得られたから陰謀が立ち消えたって事になるのですが……。
「全然、実感わきませんわ……」
なんでしょう、このスッキリしない感じ。
理想ではもっとこう……。
『レイリィース様! あなたは本当に素晴らしいご令嬢ですわ! あなたが婚約者になるのであれば私共も納得です!』
『オーホッホッホッホッ! そうでございましょうとも! 皆様方、今後ともよしなに! オーホッホッホッホッ!』
ぐらいのさっぱりとした終わり方を期待していたのですが……。
「まぁやっぱりそんな上手く行きませんわよね……」
現実は非情ですわ……。
それに何より。
「これはまだ通過点に過ぎないわけですしね……」
そう。
例え私の処刑が今回の会合で回避出来たのだとしても。
まだクロムウェル様を取りまく陰謀が残っています。
あの地下道で王子様を狙った暗殺者が、そして地下道についての情報を流した人間が、まだ残っているのです。
そうである以上、まだまだ気を抜けませんわ。
『お近づきの印と言う訳ではないけれど、いい舞台を見せてくれたお礼にあなたの願いを一つ叶えてあげましょうか』
ふと。
お茶会の最後の最後で、そう言われたティアラ様の事を思い出します。
『もちろん私の出来る範囲で、って事になるけれど。まぁ、余程の無茶でなければ叶えてあげるわよ?』
あのお言葉、一体何を考えていらっしゃったのか……。
うーん。どうにもティアラ様って読めないお方ですわね。
これまでのループでは全く姿を現さなかったのに、今回に限っては随分グイグイ来ると言うか……。
あの答えで良かったのかどうか、今でも分かりません。
『ならばティアラ様、どうかクロムウェル様をお助けください。それが私の願いですわ』
『ふ~ん……。自分を、ではなくクロムウェルをね』
『はい』
『別にルイーズを罰しろとかでも構わないのよ? 私、口は固い方だから誰にもバラさないし』
『いえ、クロムウェル様に力添えをお願いします』
『ははぁ~……なるほどね……』
こちらをジッと見つめる金色の瞳。
心の奥底まで見透かすような鋭い眼光。
そして、続く言葉。
『似てるのね、あなたたち』
『えっ?』
予想していなかった言葉に、呆けたような声を返してしまったのを覚えています。
そしてまたニンマリと笑いながらティアラ様は告げられた。
『クロムウェルとあなた、そっくりよ』
『そ、そうでしょうか?』
『ええ。まぁ、いいでしょう。あの子に協力すればいいのね? 個人の出来る範囲で良ければ力を貸しましょう』
『あ、ありがとうございます!』
『まぁ、方法は一任してもらうけどね。よろしいかしら?』
『ええ、もちろんです! よろしくお願いいたしますわ!』
『フフッ……フフフフッ……』
最後に見せたあの怪しげな笑み。
「もしかして、私早まりましたでしょうか……」
い、いや、ティアラ様に関しては、そんな変な噂聞きませんし、悪いお方とも思いませんけど……。
でも、あのルイーズ様が後々のお力添えを求めて手紙を出す程度には、強大な力を持たれているわけで……。
「だ、大丈夫……。大丈夫ですわよね?」
少し不安ですが、今更どうこう出来ないのは確かです。
「はぁ~……まぁ、よっし!」
言ってしまった物は仕方ありませんわ!
とりあえず! 今日は散々頑張ってくださった使用人の方々を労いに行くとしますか!
会合で提供された軽食がかなり余ってるはずですし!
皆で頂いちゃいましょう!
まずは食事! 人生の基本ですわ!
考えを巡らすにもエネルギーがいりますからね!




