表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/62

第18話「会合①」

『オーホッホッホッ! 私はレイリィース・ジョゼフィーヌ・ヴィランガード!


 この度のお見合いでクロムウェル様の婚約者に選ばれた王国随一の才媛さいえんですわ!


 急なお手紙、どうか許してくださいましね。


 何しろ、私はこれからと~~んでもなく忙しくなる予定なので、急になるのも仕方ないってもんでしょう!? オーホッホッホッホッ!


 さて、早速ですが本題に入らせていただきます。


 明日10時、ヴィランガード家の別邸べっていにて、お見合いに参加されたご令嬢方にお集まりいただき会合を開きます。


 どうかふるってご参加いただければと思っておりますわ。


 まさかとは思いますけど、王族の婚約者となるこの私の誘いを断ろうなんて、不義理な事を考えられている方はいらっしゃらないでしょうね? このレイリィースとお近づきになれるチャンスですわよ?


 是非、楽しくお喋りしたいと思っておりますわ。


 それでは明日10時、またお会いしましょう!


 レイリィース・ジョゼフィーヌ・ヴィランガード


 追伸 お腹の調子が悪い人用にお薬を用意しております。具合が悪くなりましたら、いつでもお声かけくださいまし。




――――――




 お見合いの日から明けて、翌日。


 続々と集まってくる馬車とご令嬢方、そしてその対応に追われる執事さんにメイドさん達の姿を、私は別邸べっていの二階にある部屋の窓からのぞいていました。


 この別邸べっていは王都南の外れにあります。


 都心に近くはありませんがその分土地は広く、屋敷の門から続く広い庭あり、噴水あり、来客用の馬小屋あり、宿泊棟ありの立派な邸宅ていたくですわ。


 まぁ我が家は元々騎士の出自で、ここも古くは兵やら部下を収容するための拠点的な意味合いがあったそうですから、広くて当然ではあります。


 時刻は9時半。


 約束の10時までもうすぐですが、ここから見ていた所、手紙を出したほぼ全てのご令嬢方が集まってくださったように見受けられます。


 助かりますわ。


 心を痛めながらあんな文章の手紙を23枚も書いた甲斐かいがあるってもんです。


 まぁ何はともあれ。


 重要なのはこれからです。


 今はただご令嬢方を集めるのに成功しただけ。


 しかも方法としてはあまりよろしくない方法で、です。


 相手を煽り、はやし立て、権力をちらつかせ、半分脅してここに集まって頂いた。


 こちらとしても、このような手段は望んでいませんでしたが、とにかく時間がありませんでしたからね。


 誰かに仲介を頼むのも、少しずつ予定をすり合わせるのも、10日間と言う短すぎる期限では遅きに失する可能性があります。


 今回の手紙は、私が婚約者に決まったと知り、はらわた煮えくり返っていたご令嬢方にとっても想定外なスピードでしたでしょう。


 何かを企むにしても頭の奥底で考えていただけで、実際に行動していた方はいないはず。


 それに手紙に書いておいた『追伸』


『お腹の調子が悪い人用にお薬を用意しております』


 これを見て、お腹に一物いちもつ抱えていた方々はビックリしたでしょうね。


 まだ何もしてないのに気取られたのかと。


 もしくはただの『はったり』かと。


 はたまた本当に薬を用意しているだけかと。


 そして、その答えを知るためには『私という人間』を実際に見てはかるしかなありません。


 何にしろ、我ながら酷い文章になってしまいましたが、狙い通りご令嬢方は集まって来ました。


 集めることが出来ました。


 あとは説得するだけですわ。


 私とクロムウェル様の婚約を認めさせ、私を貶める陰謀を起こさないようにしてもらうだけ……。


「まぁ、これが一番難しそうなんですけど……」


 ため息をつきながらそうつぶやいていると、背後の扉がバタンと開きセバスチャンが入って来ました。


 ノックもなく、随分と慌てた様子です。額には脂汗が浮かんでいますわ。


「お、お嬢様ぁ!? あなた一体なにをしでかしたんですか!?」


「何をって、私はただご令嬢方を呼び集めただけですわ」


「ただ集めただけであんな殺気立ってる訳ないでしょう! ご令嬢方の付き人をご覧なさい! あれは相当な手練れですよ! これから内紛でも起こすんですか!?」


「そんなの起こしませんって。それより準備はどうなってますの?」


「それよりと申されますが……! あーもう! 準備なら万端ばんたんです! 使用人一同が半分徹夜して完璧に整えました! ご令嬢方も最後の一人が今到着した所です! 会合は予定通り開催できる見通しです!」


「わぁ! みんな流石さすがですわね! 後日、ねぎらいのパーティーを開きますわ!」


「………………」


 にこやかに笑う私を見て、渋い顔を隠そうともせず、爺やがこちらをジロリとにらみ付けました。


「お嬢様、疑う訳ではございませんが本当に大丈夫なんでしょうか? 今日は旦那様も奥方様もいらっしゃいませんし……。お二人ともお嬢様に一任するとおっしゃってはいましたが、爺やはもう心配で心配で……」


「さぁ? これから次第ですわね」


「うぅ……。もし問題が起こったら、旦那様にも先代様にも申し訳が立ちません……」


 何もしない方がよっぽど酷い『問題』が起きるんですけどね。


 まぁそれはともかく。


「あとは出たとこ勝負ですわ。それじゃそろそろ行きましょうか」


「でっ!? 出たとこ勝負ぅ!? ななななな、お嬢様ぁ!?」


「あっ、あの屈強な付き人さんたちは邪魔なので、どっかの部屋に案内しましょう。爺や、すぐに準備を」


「邪魔ぁ!? なんてこと仰るんですか、お嬢様!?」


「返事は?」


「か、かしこまりましてございます……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ