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95,王都付与。

 

 アリシアの復活で、冒険者たちの失われた付与効果は戻ってきている、はず。この『はず』は、まだ確認できていないため。


 シーラの短剣に付与された効果は消えず、冒険者を引退済みのチェットには効果を与えていない(錬成素材集めのときに付与した効果は期限切れ)。


 隠れ家から出て、市長と接触するため進む。

 このとき大通りに出たとたん、暴徒の一団と出くわした。アリシアたちは、名もなき市民としてやりすごすつもりだったが、そう簡単にはいかなかった。暴徒の一部が、アリシアとシーラを取り囲む。


「なぜ彼らは、私たちを取り囲んだのですか?」

「暴徒だから、若い女を見つけるとレイプする権利がある、と思い込んでいるんじゃないの」

「ほう。それは私の推測の外をいく愚かさ。勉強になります」


 何やら興奮した様子の暴徒の男たちが、アリシアたちに襲いかかろうとする。

 シーラは「これで自己防衛が確定」と呟き、率先して襲ってきた数人の男たちの喉を、短剣で裂く。

 後ろのほうにいた暴徒たちは、これで一気に醒めた。暴力の興奮に酔いしれて、偶然見かけた美女二人を襲って楽しむつもりだったのに。

 当人たちは、『軽い気持ち』だったのだ。が、高い代償をし払うことになった。シーラは、自分たちを襲おうとした暴徒は全員殺すつもりだったし、とくにアリシアにも止める理由もなかった。

 皆殺し。


 最後の男が、「た、たすけ」て命乞いし終わる前に、その喉が裂かれる。アリシアはちょうど道端に転がっていた傘を開いて、血しぶきが飛んできてガードできるようにした。


「終わりましたか」

「終わったよ」


 見やると、シーラは返り血を一滴も浴びていない。


「芸術の領域ですね」

「君の錬成スキルには負ける」

「いえいえ、私はただ、生まれもったスキルを活用しているだけです。シーラさんの殺しのスキルは、自ら鍛錬して会得したもの。尊敬いたします」

「それはどうもね。その賛辞、素直に受け取ろう」


 その他扱いされていたチェットが、思い出しように言った。

「ちょっとシーラさん! 皆殺しにすることはなかったのに! 一人か二人、痛い目にあわせるだけで、みんな冷静になったのに!」

「あのねチェット。いくら暴動の興奮で正気を失っていたとはいえ、女子を襲おうとするような輩は、生かしておいたら害でしょうが。私は正義を果たした」

「……言われてみると、そうかもしれませんね。正義、ですね」


 実際のところ、殺したほが単純だったからだが。単純を尊ぶ……単純。その後、ライラが合流する。


「アリシアお姉さん、おはよう」

「おはようございます、ライラ」

「シーラお姉さんから事情は聞いているわね? どうするつもり?」


 アリシアは、王都に『アンデッド浄化』の効果を付与するプランを話した。さすがにこれにはライラも驚く。


「都市そのものに? それって、可能なの? まず都市は生物ではないし、それに王都の広さときたら」

「装備品に付与するのが、私の錬成スキルの効果です。まぁ人体付与もしたことはありますが。とにかく王都の塔を武器と解釈すれば……私の脳内において、錬成スキルがその解釈で納得すればよいのです」

「だけれど、大変でしょう?」

「やりがいがあります」


 このとき。すでにアリシアは準備を始めていた。まずアンデッドを浄化するためには、複数の錬成素材が必要。

 その中でも、聖瓏晶は不可欠。これはもともとアルティメットレアという貴重な錬成素材。素材保管庫には2個しかなかったが、王都全域に効果を及ぼすためには、1万個は必要だろう。

 1万個の増殖が必要ということになる。つまり聖瓏晶の特性を、無ガ石に感染させるわけだ。

 よってまずは無ガ石が1万個必要となる。

 この無ガ石自体は、素材保管庫に千個ほどあるが、ぜんぜん足りない。そこでまず無ガ石を増殖させる必要がある。

 幸運なことに無ガ石は、ほかの錬成素材とちがって、無から作りだせるようになった。つまり、ひたすら増殖させることができる。


 だからまず無ガ石を1万個にする作業。

 この作業、すでにアリシアは素材保管庫と脳内で接続し、実行していた。

 一方、シーラがライラに説明している。


「王都に『アンデッド浄化』の効果を付与するためにも、まずその効果の購入者が必要なわけだよ」とシーラ。

「国王?」

「市長を選んだわけ」

「市長! ちょうどいいわ。いま市庁舎から冒険者ギルド本部に移動したところよ。そこを対アンデッド戦の前線基地にするために。なぜ知っているかといえば、アタシが市長の護衛を任されていたから。冒険者ギルド本部まで届けたから、お役御免になったけれどね」

「冒険者ギルド本部……つまり、冒険者ギルドのギルマスもからんでくるわけかぁ。あんまり良くはないなぁ。どうせなら市庁舎にいて欲しかったよ」

「市長はともかく、ギルマスなら、このアンデッド騒ぎの元凶が『効果の消滅』と知ってるわけですものね。それをアリシアお姉さんの責任とするかどうか……微妙なところよ」


 アリシアは別のことを尋ねた。

「ライラ。冒険者たちは、装備品に付与されていた効果は復活しましたか?」

「ええ。個人差はあるようだけども、続々と復活してきたわよ。それでアタシも、アリシアお姉さんが目覚めたことに気付いて、隠れ家に戻ることにしたの。で、その途中でみんなを見つけたから、こうして合流できたわけ」

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