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64/105

64,予告。

 


 アリシアはしばらく王都を離れることにした。


 鍛冶ギルドの要求に従おうというわけだ。

 興味深いのは〈銀行〉が追いかけてこないこと。

 借金はまだまったく返せていないのに。

〈銀行〉には〈銀行〉の企みがあるのだろうが、いま放置してくれているのは、ありがたい。

 鍛冶ギルドと〈銀行〉を同時に相手取るのは、少々、骨だったろうから。

 

 ちなみに借金返済のために錬成スキルで得たお金は、いまは王都ダンジョン最下層においてきた『収納100倍』『重量100分の1』効果付与の小さな金庫の中に入っている。

〈滅却せし獣〉が守ってくれることだろう。


 王都を出るとき、別々のタイミングで三人の人物と会うことになった。

 まず〈テンプルナイト〉のエブリ。

「王都を出るって、本当なんですね」

「ええ。しばらくのあいだ、ですが」

「戻ってくるんですか?」

「ええ」

「すみません、アリシアさん。恩人のあなたの助けになれず。ですが鍛冶ギルドも、冒険者にとっては必要なんです。彼らのブラックリストに入れられては、武具を購入できなくなりますからね。それに鍛冶素材も冒険者ギルドが買い取ってくれなくなるし」

「ええ、分かっていますよ。エブリさん、気になさらないでください」


 悔しそうなエブリと別れてしばらく進むと、こんどはケールが現れた。

「あなたのことですから、このまま尻尾をまいて逃げることはないんでしょうね」

「そうですか? 私は、そこまで好戦的な人間ではありませんが」

「さて、どうでしょうね。オークションのとき、ガボットを叩きのめしたのは、いまでも語り草ですぜ」

「ガボットさんですか……先日、固形石鹸で足をすべらせて亡くなったそうで」

「まぁ、あいつは酒のみでしたからね。泥酔して風呂に入ろうとしたんでしょう。あんな奴のことはどでもいいんですよ。アリシアさん。鍛冶ギルドは、冒険者にとって必要なギルド、ということだけは頭に入れておいてくださいよ」

「分かっていますよ、ケールさん。まるで私が、鍛冶ギルドを滅ぼすことを危惧しているようではありませんか?」

「ええ、まぁ、あなたなら──いえ、なんでもありません。では、またお会いしましょう」


 ケールも立ち去る。

 こうして独りで、てくてくと王都を囲う城壁の正門(象が何十体も通れるほど広い)を前にしたころ、鍛冶ギルドのギルマスであるブラムウェルが、部下を引き連れて現れた。


「お見送りしてくださるのですか、ブラムウェルさん?」

「詐欺女。少しは賢かったようだな。ちゃんと警告どおり王都を出るとは──だがよく聞けよ。僕の鍛冶ギルドは、何もこの王都だけじゃない。すべての城郭都市には支部を持っているんだ。だからどこの城郭都市だろうと、錬成店をはじめたら、僕の耳に届く。そのときは、分かっているだろうな?」

「ええ。肝に銘じておきましょう」


 すっかり勝ち誇った様子のブラムウェル(そもそも勝負をしていた覚えもアリシアにはなかったが)。ふと思いついた様子で、アリシアの腹部を殴るフリをした。

 アリシアはとっさに半歩後ろへと回避行動をとる。

 とたんブラムウェルとその取り巻きたちが、大笑いした。


「ブラムウェルさん、プラムウェルさん。あまりそういうことは、しないほうが良いですよ」

「『そういうこと』とは、どういうことかな?」

「他人を見下すのは、よくないですよブラムウェルさん。いつか、自分に返ってきますよ。そういうことは、返ってきます」


 ブラムウェルは嘲笑して、

「とっとと失せろ、詐欺女」

「では、失礼します」


 王都を出て、しばらく都市と都市をつなぐ街道を進む。

 いつのまにかライラが隣を歩いていた。シーラ以上に気配を消すのがうまいとは。

 この少女は、チートの効果付与がなくとも、はじめから冒険者としての素質があったのでは?


「鍛冶素材はどうですか?」

「大量よ、お姉さん。さ、ついてきて」


 ライラの案内で、街道から外れたところにある、廃れた宿に向かった。そこの宿で待っていたのが、大柄な男。

 ライラが紹介する。

「こちら、ダングさん」


 アリシアは挨拶した。

「はじめまして、ダングさん。あなたが戻ってきてくださって良かったです」

「へえ、そうですかい?」とダング。

「ええ。冒険者たちにとって、武具は不可欠です。あなたは、腕のよい鍛冶職人と聞きましたよ?」


 このダングこそが、かつて鍛冶ギルドには所属せず、フリーで王都に武具店を開いた鍛冶師だった。

 ところが鍛冶ギルドによって店を焼かれ、妻子の身も危ないからと、王都を脱出していたのだ。

 そこをアリシアがライラに頼み、捜しだして連れ戻してもらったのだった。


「鍛冶ギルドが、武具は作るでしょう。これまでのように、これからも」

「そうでしょうか? 鍛冶ギルドは、確かにこれまでは武具を作ってきました。ですが、これからも冒険者たちのために、武具を作ることができるでしょうか?」


 ダングは不可解そうに言う。

「一体、何が言いたいんだい、あんたは?」


「私が思うに、鍛冶ギルドはもうじき、武具を作れなくなるということです。少なくとも、冒険者が装備したくなるような武器は」


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