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59,クラン。

 

 人体発火の犠牲者の共通項探し。

 それをはじめて丸一日。

 これという収穫はなく、シーラはとくに焦ることはなかったが、困ったなぁとは思っていた。

 

 このころには錬成店は通常営業に戻っていた。

 アリシアの読みどおり、鍛冶ギルドが煽って作った暴徒などは、数時間で自然に解散。いまもまだ錬成店の人気は継続されており、予約がキャンセルされることもない。


 ただし『火炎耐性』が効果を発揮しなかった、という噂は広まっており、いっときほどの勢いが失われているのも事実。


 店内の奥で、シーラはアリシアと会っていた。

「共通項は、ないね。さまざまな情報網を駆使して、いろいろと調べたわけだよ。ところがまったく関わりがない。連中、へたしたら、顔さえあわせたことはないかもね。とくにロンだよ」

「ロン?」

「そう。あのネトラレ君。まだ冒険者にはなりたてで、修羅場をくぐっていたドニーやビクターと接点がないんだよね。ケールならあるんだけど」

「寝取られて決闘していましたからね。しかしシーラさん。接点がないとは言い切れませんよ。もっと高いところから見下ろさなければ」

「高いところ? それって物理的な意味で?」

「というより、時空という意味で」

「時空を高くから見下ろす? あー、なるほど。しかし、なんでそんなに遠回しな助言をしたがるの?」

「趣味ですかね」


 というわけでシーラは錬成店を出、王都の情報局倉庫に忍び込んだ。

 王国は建国以来、国民を管理するという名目で、多角的な情報収集を行ってきた。

 もちろん税の取りこぼしがないように、という考えのためだが。

 そのおかげで、家系図も辿りやすい。

 たとえば、だれそれの死亡時に、所有していた農地を誰が相続するのか、などが管理されることは、王政府にとっても大事なわけだ。

 つまり持ち主のない農地が複数出ることは、国にとってもプラスにはならないわけだから。


 さて。

 人体発火の犠牲者は多いが、まずはロン、ドニー、ビクターに絞ることにした。

 彼らの家系図を入手し、その後は王都新聞局や冒険者ギルド記録庫などにも忍び込み、三人の祖先を相互チェック。

 ようやく四世代前の祖先で行き当たった。


「ほう。全員、冒険者ギルドの同じクラン所属だったのかぁ……クランって、なんだ?」


 どうやらクラン制度は、半世紀ほど前に廃止されていた。

 つまり冒険者パーティの巨大バージョン。

 パーティが多くとも10人はこえない一方で、クランは100人規模もざらだったとか。


 このクラン制度が廃止となったのは、あまりにクランが組織化されてしまったから。つまり冒険者ギルドの役割が薄れてしまうことを恐れて、ギルド側が廃止したと。

 とにかくロン、ドニー、ビクターの四代前の祖先が、〈風見鶏〉というクランに属していたようだ。


 記録によると、この〈風見鶏〉は中規模クランで、最大時の人数は84人だった。

 だが、あるとき突然解散している。


 シーラは一考する。

(解散……この手の大手組織が解散するのは、『やらかした』ときだけだ。しかし、何をやらかしたんだろうねぇ……)


『私たちはこれこれをやらかました』などという証言が残っているはずもない。

 こういうときは、新聞局の古い新聞記事が役立つ。

〈風見鶏〉が解散したころ、何か大きな事件はあったか? 


 ひとつだけあった。

〈風見鶏〉が解散する数日前。

 ある小さな村が、賊に襲われている。


 賊の出没など珍しくはないはずだが、これがわざわざ記事になったのは、かなり凄惨だったから。

 村人は皆殺し。

 それどころか、何人かは拷問された形跡まであったという。


(これかな? これだとして──どうなるのかな?)


 とりあえず、この村の虐殺事件が〈風見鶏〉の仕業なのか? 

 証拠はないが、そのかわりこの賊が討伐された、という記事もなかった。

 念のため冒険者ギルドの古い討伐記録も見るが、やはりない。

 ただし『討伐クエスト』として発注はされていたようだ。『賊の正体不明のため討伐不可』とだけある。

 そのように不明だったのは、実はこの賊の正体が、もう解散してしまったクラン〈風見鶏〉だったからでは? 

 しかしなぜ〈風見鶏〉は、村人虐殺という暴虐に出たのか。

 そして何よりも、この古い凄惨な事件が、いまの人体発火事件とつながるのか。


 シーラは、この新たに得た情報を持ちかえることにした──が、その前にせっかくなので、王都の大学に足を運ぶ。

 ここの民族学の教授を見つけて、ここの学生のフリして、尋ねる。


「先生。いま卒論の題材として、この村について調べているんですよ。謎の賊に村人が皆殺しにされた村なんですが。村の名は──」

「ユード村だね」

 と、年老いた民俗学の教授が先に答える。


 シーラは、へんな高揚感を覚えた。ダメ元だったのに、もしや? 


「ユード村には、何か秘密があったんですか?」

「秘密、というか、その村はとても特異な場所だったんだよ。冒険者の、ある唯一のジョブは、その村からのみ排出されていたんだ。だからその村が滅びたことで、そのジョブも消滅してしまったんだね」

「そのジョブとは、なんですか?」

「〈ウィッチドクター〉。つまり、呪術師だね」


 シーラは礼を言ってから、大学を出た。

「呪い……ははぁ。なんだか、見えてきたみたい」

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