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27,『アンデッド対策』セット。

 

 アンデッド現象の原因は古代の環境生物と判明した。


 古代というのは、人間がこの地に移り住む前。

 ハイエルフの時代──ハイエルフには耐性があったが、人間にはない。それは大地のなかに生息する、一種の生き物。


「王都墓地の増設作業で、古い地層を掘り返しましたかね」

「で、どうすればアンデッド現象を止められそう? 浄化領域みたいなのを展開する?」

「それは魔法ですね。私は魔法使いではありません。対処法は、単純明快。シーラさんが行ったように、アンデッド化した者を破壊すればよいのです。この古代生物は宿主が活動できなくなれば、その時点で機能を停止するので」

「すべてのアンデッドを殺せばいいというわけ? 宿主も何も、アンデッドはそもそも死んでいたはずなのに?」

「アンデッド化した状態で『死ぬ』と、その体内に巣くっていた古代生物も死ぬ──というイメージでしょう」

「アンデッド自体は、頭を潰したら死んだけども──これ、もう片付けるよ」


 シーラが運んできたのは、二体のアンデッド。片方は頭が潰れ『死んで』いる。もう一体は、拘束したもので、アリシアが錬成スキルをもちいて、古代生物を明かしたほう。

 こちらはまだ『生きて』いるので、シーラが頭を叩き潰した。


「空気感染の問題は?」

「風妖精の鱗粉素材による『清浄な空気を呼吸するためのフィルター』効果を付与します。

 さらにアンデッドを効率よく破壊するため、『アンデッド熔解』の特殊効果も付与しましょう。アンデッドの肉片を素材として使いますが(ちなみにこれは鍛冶素材ではありません)、その肉片は爪先程度でいいので、素材在庫は問題ないでしょう──

 これら二つの効果は、セット販売したほうがよいですね」


 アリシアは一瞬、あることを一考した。

 割増か、安売りか。

 アンデッド禍の重要性を考えると、セットの値段を割増にしてもいいように思える。客の足元を見る、というのは好きではないが。商売人としては、それくらいしてもいいだろう。

 一方で、王都の危機だからこそ、より多くの冒険者がアンデッド対策の効果付与の恩恵を得るべきであり、そのためには安売りが妥当。


「迷ったときは、通常価格で売るとしましょうか。おや、ちょうど依頼者たちが戻ってきましたね」


 ケールを先頭に、上位の冒険者たちが駆けてくるところだった。


 シーラは姿を隠す前に、アリシアに尋ねた。


「その『アンデッド対策』セットだけど、いくらで売るつもり?」

「風妖精の素材も、アンデッドの素材も貴重です。いえアンデッド自体は、いまも王都墓地で蔓延っていますが、それを捕獲してくるのはリスクが高いですからね。結論としては、500万ドラクマ」

「それ、通常価格?」

「もちろんです」

「……君が割り増しするような商人じゃぁなくてよかったよ」


 シーラが地下室に消え、アリシアは店の表に出た。

 アンデッド化の原因を手短に説明。

 そして『アンデッド対策』セットの効果付与の値段を話した。


 いまとなっては、この額に文句はでなかった。だがケールたちから要望はあった。


「空間感染を対策してくれるのはいいんですがね、アンデッドは噛まれても感染するんです。奴ら、一体ごとに駆除するなら問題ないが、数で押し込まれると厄介かもしれない。何か、噛まれる対策はありませんかね?」


「噛む力はたいしたことはないはずなので、『防御力の増加』付与で充分でしょう。こちらも『アンデッド対策』セットに入れるとしましょう。値段は530万ドラクマで」


 さっそく『アンデッド対策』3点セットを、まずはケールに付与しようとしたとき──ケールが慌てて止めてきた。


「なぁ、まってくださいよ、アリシアさん。確か、ひとつの武器に付与できる効果は3つまでですよね? もしや、この『アンデッド対策』3点セットは、すでに付与されている効果に上書きされるんじゃ?」

「当然です」


 ぞっとした様子のケール。

 ほかの冒険者たちも同様の反応。彼らのような上級冒険者は、すでにアリシアから、かなり高価で便利な特殊効果を付与してもらっていたのだ。

 それらが上書きで消えると知って、ぞっとしないほうがおかしい。


 アリシアは溜息をついた。

「難しく考えることはありません。アンデッド対策用の武器を新調し、そちらに『アンデッド対策』3点セットを付与すればいいだけでしょう」


「おお、確かに! 武器屋に急げ、みんな!」


 駆けていくケールたち。それを見送って、アリシアは思った。

(武器屋の店長さんには、感謝していただかねばなりませんね)

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