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25,錬成スキルの価値。

 

 しかし、錬成スキルは高く評価されすぎている。

 ここに集まった冒険者たちは、無限の力をもったチートと思っているようだ。

 アリシアが指を鳴らしたら、アンデッド問題が解決でもするかのような。


 そもそもアンデッドとは何か。

 死体が蘇るというが、自我は失われている。肉体だけが動いているのならば、呪いなのか。

 それとも、闇魔法で動かされているのか。

 前者と後者では、対応する効果が異なる。


 それともうひとつ、ここにいる冒険者たちが誤解していることがある。この誤解をまず解かねばならない。

 というのも冒険者たちは、みな手ぶらだ。

 否、武器や防具は装備している。そしてその武器や防具にアンデッド対策の特殊効果を付与してもらおうと、われさきに差し出してくる。

 だが、ドラクマ硬貨は一枚も見えない。


「錬成店は、後払いは受け入れておりません。アンデッド対策の効果ともなれば、それは高価なものとなるでしょう。皆さん、まずは自宅に戻り、大量のドラクマ硬貨を持ってくるべきでは?」


 しばし冒険者たちは、意味がわからない、という顔をしていた。

 やがて理解が広がるにつれて──アリシアにとって、理解するのに時間をかけすぎている──抗議の声が上がった。


「王都のピンチだというのに、あんたはカネを取ろうというのか!?」

「王都存続の危機だぞ!」

「人命がかかっているというのに!」

「業突く張りが!」

 などなど。


 しかし抗議(と一部にはただの罵詈)に対して、アリシアは淡々と応える。


「無料にしろ、と? 確かに、私はこれまで二人の人物の装備品に、無料で効果を付与したことがあります。しかしながら一人目のとき、私はまだ錬成スキルの正しき価値を理解していなかった。そして二人目は、錬成店の宣伝に一役買っていただくため、互いの利益となった。

 分かりますか? いま私は、錬成スキルの価値を理解している。そして、あなたたちに無料で効果を付与することで、これという利益にはならない」


 ケールが抗議する冒険者たちを黙らせ、代表として言った。


「しかし──アンデッドによって王都が滅びたら、あなただって困るはずですぜ」

「滅びませんよ。あなたたちが、私からアンデッド対策の効果を購入すれば。適正価格で」

「だが、大金を請求しようというんでしょうが?」


「大金とはいえ、あなたたちが支払えないほどの、法外な値段をつけるつもりはありません。こちらも複数のアンデッド対策効果を用意するつもりですので、支払い能力にみあった効果を購入すればよい。私はなにも、物乞いからお金をとろうとしているわけではありません。冒険者ギルドを代表するトップランカーであり、毎回のクエストで多額の報酬を得ている者たちに対して、請求しているのです。お分かりですか?」


「……分かりましたよ」

 と、ケールが不貞腐れたように言う。

 どうにもこの男は、未熟な精神の持ち主のようだ。先日のガボットよりはマシかもしれないが。

 支払いが必要と分かったとたん、冒険者たちは駆けだした。大量のドラクマを持ってくるために。


 そしてアリシアも急がねばならない。

「シーラさん、いますね?」

「あいよ」

 

 地下室から上がっていたシーラは、冒険者たちからは見えないところで隠れて、アリシアたちの会話を聞いていた。


「アンデッド対策の特殊効果の付与について、ですが。素材保管庫内の素材で足りる、でしょう。しかし」

「アンデッドの情報が足りないので、どのような対策にすればよいか分からない?」

「はい。呪いなら呪い対策、闇魔法なら闇魔法対策、精霊の仕業ならば精霊対策──すべてに対処する効果を準備している時間はないでしょう」

「空気感染するらしいからね」

「……王都内に墓地はありませんが、王都から半キロ離れたところに、王都墓地があります。アンデッド化は、そこの墓地から起きているようですが」

「あの墓地は、それこそ大量の死者が眠っているね」

「アンデッド自体よりもやはり空気感染が問題でしょう。どの程度の範囲で感染するかは不明ですが──風向きが良くないですね」


 王都墓地から王都に向かって吹いている。


「私に必要なのは?」

「アンデッドを一体、確保してきていただきたいのです」

「いいけど。アンデッド対策の効果ができる前に? ふむ。それはリスクが高い。傭兵稼業をしている身だから、命は惜しくないけどさ。ここで私が無駄死にすると、君が困るでしょ」

「空気感染とは、アンデッド自体から発する『何か』によるものでしょう。そして『空気感染』というのだから、呼吸による吸入で感染する──可能性が高い」


 シーラが首をかしげる。

「すると?」


 アリシアは答えた。

「風の妖精の素材を使うときがきたようですね。唯一無二の素材を」

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