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18,デバフ地獄。

 

 錬成スキルを発動。

 素材保管庫と接続。

 

 毒カ晶を10個素材として消費し、次のデバフ効果を付与する。

『装備者は毒状態となる』、『装備者が毒状態のとき、猛毒状態となる』、『毒などの状態異常が解除されない』。


 火焔晶を破壊して使うことで、通常の反対の効果となる。

 つまりすでに〈修羅炎の剣〉に付与されていた『火炎属性』を『解除』する。


 また逆汚草という恐ろしい素材を使って、次のデバフを付与。

『これまで攻撃した回数分、攻撃力が減少。最大減少は攻撃力が0』。


 ほかにも、『装備者の防御力が減少する』、『武器の重さが10倍になる』などを付与した。


 とたんガボットがその場に片膝をつき、苦しそうに呼吸する。

「な、なんだ、どうなって、いや、がる」


「〈修羅炎の剣〉に付与させていただいたデバフ効果によって、あなたは猛毒状態となっています。ご安心ください。〈修羅炎の剣〉を装備品から外せば、治ります。二度と装備はできないでしょうが」

「おれの愛剣である、〈修羅炎の剣〉を、手放せ、だと? バカにするのも、いい加減に、しろ。誰かぁ、おれを解毒してくれ!!」

「残念ですが、回復術士のかたでも治癒はできません。『毒などの状態異常が解除されない』は、絶対ですので」

「この、クソ、アマがぁぁぁ!!」


 さすがSランク。猛毒に全身を侵されながらも、飛びかかる気力があるとは。

 飛びかかる──アリシアに向かって。

 振り下ろされる〈修羅炎の剣〉。

 惨劇は止められないと思い込んだポーラが悲鳴を上げた。チェットは白目をむいて失神し、シーラも危うく裏手から飛び出すところだった。


 しかし〈修羅炎の剣〉の刃は、アリシアの右肩にぶつかったところで、止まる。


「あら、これでも少し痛いですね。打ち身になりそうです」

「な、なぜだ! なぜ斬れん!!」


 逆汚草は、本当に恐ろしい素材だ。シーラが採取してきた多彩な素材の中にこれを見つけたとき、アリシアはぞっとしたものだ。


「あなたの〈修羅炎の剣〉に付与したデバフ効果の中には、『これまで攻撃した回数分、攻撃力が減少。最大減少は攻撃力が0』というものがあります。

『これまで攻撃した回数分』。これは効果が付与される前から、過去にさかのぼってカウントされます」


 そのことの意味を理解したガボットが、顔面蒼白となる。

「ま、さか」


「あなたは〈修羅炎の剣〉を獲得し、さまざまな敵と戦ってきたのですね? その攻撃の回数は限りない。それらがすべてカウントされた以上、すでに攻撃力は0でしょう。よって、この〈修羅炎の剣〉で与えられるダメージは、ひのきの棒と同程度。火炎属性も消させていただきましたし」


 ガボットは〈修羅炎の剣〉を取り落した。

 装備を外したことで、猛毒状態が解除される。


「貴様ぁぁ!!」

 素手でアリシアにつかみかかろうとするが、ポーラが飛び出してきて、ガボットをけん制した。

「ガボットさん。暴力はいけないわよ」

「ポーラ、裏切るつもりか!」

「裏切るも何も、いきなり女性を斬りつけたのは、あなたのほうよ」


 ガボットは毒づき、まわりの冒険者たちに大声で呼びかける。

「おい、このアリシアとかいう詐欺女を、どうにかするんだ! こんな横暴が許せるものか!」


 アリシアは溜息をついた。


「詐欺女、ですか? ですが、私の錬成スキルの力は、はからずもいまあなたの剣によって、再認識されたはずですが? あなたのレジェンドクラスの剣が、ただの棒きれなみ──いえ、装備すれば猛毒状態になるので、それ以下の代物となった時点で」


「ぐっ。だ、誰か! この女を捕らえろ! おれの〈修羅炎の剣〉にデバフだかなんだか知らんが、ふざけた効果を付与したこいつを、許すんじゃない!」


 アリシアは、ほかの冒険者たちに向かって、静かに語りかけた。

「皆さん。私を怒らせれば、私は容赦なく、あなたたちの冒険者生命を奪いますよ? あなたたちの自慢の武器や防具に、最悪なデバフ効果を付与することによって」


 冒険者たちが、愛用の武器などに視線を向け、ゾッとした。


 アリシアは続ける。

「私は客観的にいって、自分が無慈悲であることを知っています。泣こうが喚こうが、私はやると決めたときは徹底的に、潰します。お分かりですか?」


 実際のところ、アリシアは別に怒ってはいなかった。

 はじめから、ガボットにも怒りは感じてなどはいない。

 ただルールを守らせることは、義務に思える。

 そのためには、手段を選ばないのは本気だ。つまり容赦がないのは。


 笑い声がしたので視線を向けると、ケールという名の〈グラディエーター〉が、ガボットの前に立った。

「すべてを失った感想はどうだ、ガボット?」

「く、てめぇ!」


 ケールは鼻で笑い、それからアリシアを見やった。


「すぐに下僕に命じて、530万ドラクマを運ばせてこよう。あなたの錬成スキルによって、私の武器がさらに強化されるのが、いまから楽しみだ」

「ええ、ケールさん」


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