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16,陥穽式。


 即席オークション会場では、シーラを使えなことに気付いた。

 シーラは素材集めとして今後も活躍してもらいたいので、錬成店で仕事をしていることは知られないほうが良い。


 そこで先日のチェットを再度オークションの進行役として雇うことにした。

 基本的にアリシアは人前に出るのが好きではない。苦手ではないが、好きではないことはしない。そこで進行役のチェットにだいたいの指示を出しておいた。


「今回、オークションにかけるのは特別な効果のものを二つ。ひとつめの付与効果『火炎、氷、雷、土の四大属性を付与する』というものです。もうひとつは『通常攻撃の全てがクリティカルヒットになる』というものです」


 チェットが目を見張る。


「そんな効果が武器についたら、僕なんかでもS──とはいわずとも、Aランクくらいにはなれそうですよ」

「オークションは、はじめは100ドラクマからはじめましょう」

「とんでもなく吊り上がりますね」

「もうひとつ。今回のオークションは、少々ユニークなものを採用します。最終的に一番高い値をつけた者が、特殊効果の付与権利を競り落とします。そこまでは通常と同じですが。二番目に高い値をつけた者は、その額を、わたくしに支払わねばなりません」

「え? 競り落とした者がその額を支払うのは分かるけれど。二番目の人も、ですか? その人は、付与権利は得られないし、お金は払うしで、丸損では?」

「ええ。そうですね」


 チェットは固唾をのんで、即席オークション会場のステージに向かった。

 会場の裏手では、シーラが待っていた。ここなら他人に見られる心配もないので、アリシアは合流する。


「話が聞こえたけど、なかなかえぐい手を使うね」

「あまりこの手の方法は用いたくはありませんでしたか」

「道義的に?」

「いえ、単純に錬成店の第一印象のためです。とはいえ、今回用意した付与効果は二つとも、SSランクのもの。ですので、ここまで攻めたオークションをしてみるのも良いでしょう」

「会場をちらっと見たけど、けっこう有名な冒険者も来ているね。君は運がいいと思うのは、黒弩龍出現を聞いて、王都にいなかったSランク冒険者たちが戻ってきていたことだ。彼らは黒弩龍を、Gランクともいえる冒険者がソロで討伐したことを、それを目撃した数多くの冒険者たちから聞いた。それが可能だったのが、どうやら錬成スキルというものによる、武器への特殊効果付与によるものだ、ということも」

「そこはシーラさんが、自然と噂を流してくださったおかげです。傭兵は情報操作も上手なのですね」

「うーん。いまの皮肉ではなさそうだから、そうだよ、と肯定しておく。ところで、言うまでもないけど、冒険者はランクが高いほど、報酬も多く獲得できる。簡単にいってしまえば、金持ちが多い」

「どうなるか見てみましょう」


 まずチェットは、『通常攻撃の全てがクリティカルヒットになる』の効果付与から始めた。こちらのほうが、おそらくランクは低い。

 おそらく、というのはアリシアは冒険者ではないので、どちらがより便利かは、推測に頼るしかないが。

 

 ライラという証拠があるため、すでに効果付与に対する疑いはない。

 その上で、『通常攻撃の全てがクリティカルヒット』の凄みについて、おのおの冒険者たちが判断している。


「シーラさんでしたら、いくらまで出します?」

「うーん。わたしだったら、次の四大属性付与のため、ここでは勝負に出ないかな。クリティカルというのは、微妙でね。もともと攻撃重視でなければ、クリティカルヒットを出しても、さほど威力には期待できない」

「でしたら、アタッカーのかたがたが、より求めてくださるでしょう」


 アリシアの予想どおりとなり、競りの額はぐんぐん吊り上がっていく。

 ところでチェットには、冒険者としての才能はともかく、競り人の才能は充分にあったようだ。会場内は異様な盛り上がりをみせ、アリシアは興味を失い、別のことを考えていた。


「アリシア。何を、ぼーとしているの? とんでもない値がついてきたのに」

「素材を三つ以上かけあわせる方法を模索していました」


 気づけば、競りに参加しているのは二人まで絞られていた。二人ともSランク冒険者のようで、ジョブは片方は〈ソードナイト〉、もう片方は〈グラディエーター〉。

 競り値は、200万。

 いま〈ソードナイト〉が210万をつけ、すかさず〈グラディエーター〉が220万をつけた。


「いよいよ、二人とも後に引けなくなってきたね。この効果も欲しいけど、何より負けたら、大損だ。いやぁ、恐ろしいオークション方式」

「三つかけあわす方法は…………」


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