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100/105

100,借金完済。

 

 総裁であるジェイデンは、金塊を受け取った。簡単に品定めして、贋金ではないことを確認。


「この量ならば、いまの世界金相場で3億ドラクマになるだろうね。では、完済証明書を用意させよう。少々、ここで待っていてくれるかな?」

「はい」


 ジェイデンが立ち去り、アリシアは一人、応接室に残される。しばらくして、ジェイデンが戻ってきた。領収書と完済証明書を渡してくる。


「アリシア・シェパード君。そういえば、下請けに出している者が、君に不快な思いをさせてしまったようだね」

「下請けのかた? といいますと?」

「はじめに君に借金のことを伝えにいった者だよ。残念ながら〈銀行〉は、時に取立のために、下請けを出すことになっているのだ。だが時に、われわれの品位の水準に達しない者が行ってしまうことがある。今後、誰にもこのような不快なことは起きないと、私は弊社を代表して約束したい」

「ええ。理解いたしました」

「それではシェパードさん」


「いえ、まだ用件が」


 アリシアは、王都全域への『アンデッド浄化』の件を話し、それを購入するため市長は預金を引き出したいのだ、と話した。


 ジェイデンはうなずくと、

「では部下に手続きを進めさせよう」


 その後はつつがなく進んだ。

 まずアリシアは、外で待っていたシーラたちを呼ぶ。

 市長は10億ドラクマを引き出し、それをアリシアに渡す。

 アリシアは『収納1000倍』の小袋に、10万枚の1万ドラクマ効果を入れた。


 アリシアはさっそく、アップグレードを行う。王都の塔を装備にみたて、それに『装備者にアンデッド浄化』の効果を付与する。

 今回は聖瓏晶を1万個、素材として消費することで、王都全域に効果を及ぼさせる。

 かくしてアンデッドたちが浄化し、消滅していった。


 このアンデッド消滅を見届けたことで、〈銀行〉にいた王都騎士団の3旅団は王宮エリアに戻っていく。クーデターは流れたというわけだが、〈銀行〉に移動していた理由をどう説明するつもりなのか。おそらく、なんらかの準備はしてあるのだろうが。


 一方、市長は20歳は老けた様子で市庁舎に戻り、アリシアたちはひとまず冒険者ギルドに帰還した。その帰路で、ライラが不可解そうに言う。


「借金完済できたの? 本当に? 市長からの10億ドラクマ支払いの前に?」

「ええ」


 アリシアは人魚の国で、出張の錬成依頼をこなし、料金として金塊をもらっていたことを話した。


「私の想定よりも、いまの金相場は高かったようです」

「うーん。本当に、完済できたの?」

「領収書と完済証明書をいただきましたよ。偽造ではないようですが、念のため後日、法律事務所の知人に見てもらいましょう」


 しかしライラはまだ納得がいかない。

「〈銀行〉って、これまでアリシアお姉さんを奴隷にしてわが物にしようと、なんとか借金返済を邪魔しようとしていたのよね? それがここにきて、まぁアリシアお姉さんが直接乗り込んだからとはいえ、すんなりと完済を受け入れたの? 変よね?」


 シーラは面白そうに言う。

「この総裁、バカではないようだね。引き際をわきまえている。それと鍛冶ギルドの件が、効いているんだろうね」

「どういうこと?」

「鍛冶ギルドはアリシアと戦争し、負けた。その結果、鍛冶ギルドは解体、そこのギルマスも死んじゃって」


 アリシアが訂正する。

「クロムウェルさんが亡くなったのは、呪いの火炎のせいですので」


「まぁね。とはいえ人体発火でなくても、クロムウェルは長くなかったと思うよ。ジェイデンという総裁は、そのことが頭にあったんだろうね。アリシアをうまく討てないのならば、下手に敵対関係を長引かせるよりも、和解しようと。

 実際、借金完済によって、アリシアはもう〈銀行〉をどうこうする理由がなくなった。〈銀行〉は、いわばアリシアと同盟を結ぶことで、最大の脅威をやりすごしたわけだ」

「ふーん。ということはアリシアお姉さん。もうこれで、〈銀行〉とかかわることはなくなったわけね? アタシなら、ここまで嫌がらせしてきた〈銀行〉を許さないけども。アリシアお姉さんは、そういう私怨では動かないものね」


 だがアリシアは首を横にふった。

「いいえ」


 シーラが意外そうな顔をする。

「〈銀行〉とやりあう計画があるの?」


「〈銀行〉は、私を狩ることを諦めてはいませんよ。ただ方法を変えるつもりのようですね。ジェイデンさんは」

「ということは──〈銀行〉を潰す?」

「いえ。私は、そのようなことは致しません。私は、ただ平和的であるだけですよ」

「平和的……………やはり潰すわけだ」


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