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10,Gランク冒険者。

 

 アリシアはFランク捜しをシーラに頼んだ。

 これも傭兵の仕事だろうし、共同経営者の仕事でもある。


 そのあいだにアリシアは近所の子供に店番を依頼した。アリシアが留守にしている間にお客がきたら、名前を記入しておくようにと。

『せっかく行ったのに閉まっていた』と悪い評価を立てられる対策としてせめても。その作業を終えたころに、シーラが戻ってきた。頼りなさそうな青年を連れて。


「アリシア。こちら、チェット。冒険者として名を挙げ、故郷に錦を飾るためやってきて、挫折していたところを獲得したよ」

「挫折まで済みましたか」

「とあるパーティにアタッカーとして加わったが、ゴブリン退治中にしくじったそうだね。心も折れて荷物をまとめていたところだったが、黒弩龍の出現ですべての街道が封鎖されたからね」

「なるほど。さて、チェットさん。準備はよろしいですか?」


 チェットは、ただでさえ血の気なかった顔を、より蒼白にした。

「ま、まってくれ。僕に何をさせようというんだ?」


 まだシーラは説明していなかったようだ。とはいえこのチェットに目的を説明していたら、いまごろ失神していただろうが。


「シーラさん。こちらに」


 シーラを店の奥まで呼び、当人に声が聞こえなくなったところでチェットについて論ずる。


「能力的に劣等であることは結構。というより好都合です。しかし心が折れていては、いくら武器に特殊効果を付与しても、黒弩龍には勝てないでしょう」


シーラは頭をかいた。

「やっぱり? だけど候補が、二人しかいなくてさ」


「二人? もう一人、とは?」

「そっちもFランク──いや、Gランクかな。そんなランクはないんだけど、あえていうならば」

「よく分かりませんが?」

「冒険者見習いみたいなものらしくてね。まだ14歳だとか」

「冒険資格を得ることができるのは15歳からでしたか。しか見習い扱いされるとは才覚はあるのでしょうね」


 資格取得年齢に達していないが優秀な者は、即戦力となるため、見習いとして囲っておくものだろう。


「うーん。この候補者は、実力もないに等しいようだね。スキルも獲得していないので素質はないし。ただ意欲は高いようだよ。意欲の高さを買われて、見習いとなったようだね」

「意欲の高さは素晴らしいことです」


 やる気というのは外部からはコントロールできない。だからチェットよりも、その14歳の候補者のほうが良い。

 アリシアの考えでは、戦闘力というものは、外部から好きなだけコントロールできるものだ。

 アリシアにとっては、その程度のものでしかない。


 チェットのもとに戻り、

「チェットさん。そちらの子供のかわりに店番をお願いします」

「え、店番? はぁ。分かりました」


 アリシアはシーラとともに店を出、くだんの第二の候補者のもとに向かう。

 14歳にしても、小柄な少女が待っていた。青い髪の、元気そうな子だ。

 シーラは念のため声はかけておいたようで、冒険者ギルド支部の建物の前で、イライラした様子で待っていた。


「あ、やっときた、傭兵」

「こちらがライラ。こちらがアリシア」とシーラ。


「ライラさん。はじめまして。単刀直入にお聞きしますが、黒弩龍を討伐する覚悟はありますか?」

「え、黒弩龍? そうね……手段があるなら、殺すわよ」


 ひとまず熟考した点は評価できる。少なくとも、いまの実力では歯がたたないことくらいは理解できているようで。

 アリシアとしては、勇敢はいいが、あまり無謀なのは困りものなのだ。ライラはぎりぎりでクリアしたといえるだろう。


「ライラさん。武器と防具は?」

「武器は、あれよ。アタシのおじいちゃんが現役時代に使っていた剣!!」


 ライラが、支部の外壁にたてかけてある大きな剣を指さした。クレイモアという種類だ。とにかくでかい。幅広な剣身が、ライラをすっかり隠せるくらいに。ただその点は、ガードとして機能できるかもしれないが。


「持ち運ぶのだけで大変そうですが?」

「まぁね」

「振り回したりできるのですか、その華奢な身体で?」

「できないわよ」

 と、胸を張られてしまった。


 アリシアは苦笑した。

 シーラがアリシアを手招きするので、ライラに断ってから移動する。


「やはり現実的じゃないんじゃないかな? あの小娘、武器の選別もなっていない。クレイモアなんて、女が使う武器じゃないよ。いまからでも、武器を選びなおさせよう」

「いえ、考え方としては間違ってはいないのではありませんか? 祖父から譲り受けた武器を装備したい、という気持ちは人間的でよろしいではありませんか」

「しかし、現実問題、武器として機能しないのでは? 振り回すこともできないってさ」

「いえ、それも案ずることはありません。ただ、これはだぶ効果を付与する必要がありそうですが」


「錬成スキルとかいうので、ね。だけど3つまでが限界なんじゃ?」


 アリシアは小首をかしげた。

「シーラさんには話していませんでしたか? 錬成スキルで付与できる効果が三つまで、というのは、偽りの話。ビジネス的な嘘です。実際は無限に付与可能です」

「ふぅん。で、どうするの?」


「あのクレイモアを魔改造しましょうか。あとはライラさん次第ですが。私は、ライラさんには期待できると思っていますよ」

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