new style②
「加瀬君!ゆりちゃん!結構長い時間職員室にいたんだね~」
教室に帰るとすぐに結月ももが話しかけてきた。
「転校初日なこともあって、なかなか手続きやら学校側からの説明が長くて。」
「一限目はもう終わってるから二限目からだね!次はHRだから先生が来るまで話そうよ!」
「かまわないが。」
そう言うと、結月ももの後ろから二人組の女子がこちらに近づいてきた。
「やっと話せるね~。私は美月愛奈って言います!みんなあいなって呼んでるからあいなで!」
「私は木嶋真綾です。私のことは呼びたいようにどうぞ~。加瀬君、ゆりちゃんよろしく。」
「愛奈さんと木嶋さんね。よろしく。」
「愛奈さんと木嶋さんですね。よろしくお願いいたします。」
一通り自己紹介を終えると、結月ももが話し始めた。
「ゆりちゃんも加瀬君も他のクラスですごい話題持ち切りだったよ!」
「そりゃ、美男美女コンビだもんね~。転校生なんてなかなか来ない上に、来た人がこんなビジュ整ってたらね~。」
ビジュ、、、?
ビジュとは何を指すかさっぱりわからないが、とりあえず話の腰を折るわけにもいかないので静かにしていることにした。
「愛奈は二年連続帝都学園ミス№1の座が危うくなってきて焦ってるんじゃない~?」
「まーちゃん、この二人の前でそのことは話さないで、、、」
うなだれている美月愛奈とそれをいじる木嶋真綾を横目に望月ももが説明をしてくれた。
「実は、愛奈は去年の文化祭で行われたミスコンテストで、先輩たちを抑えて一位になったんだよ!」
「もー言わないで~~」
文化祭がどういうものかは組織から説明があったが、ミスコンテストとやらが何かは説明がなかった。ビジュとミスコンテストが何かを早急に調べなくてはな。そんなことを考えていると、木嶋真綾からいじられていた美月愛奈が話題を変えるためか、ゆりに話を振ってきた。
「ゆりちゃんもそんなに可愛かったら前の高校で人気すごかったんじゃないの?」
「いえ、その、、前の学校のことは、、」
「ゆりちゃん、隠さなくてもいいんだよ!そんな可愛かったらファンクラブの一つや二つあったでしょ!」
「いえ、、えっと、、」
「こら、愛奈。ゆりちゃんが困ってるでしょ。ごめんなさいね、ゆりちゃん。愛奈少し元気が良くて人とのかかわり方が欧米仕様になっているだけなの。」
「まーちゃんそれどういうこと?!褒められて、、る、?」
「愛奈、真綾はすごい褒めてるから安心しな~?真綾は私と二人でいるとき必ず愛奈のこと話してくるんだから~」
「そんなことありません!」
三人が仲良さげに話し始めてくれたおかげでゆりの話題から逸れたようだった。一応ここに転校してくる前は違う高校にいたということにはなっているが、あまり話すと色々面倒なことが起こりかねない。ひとまず助かったといったところか。
「遅くなっちゃった~!じゃあ、HR始めまーす~!」
先生が入ってきたことで教室に散らばっていた生徒は自分の席へと戻っていった。
「ゆりちゃん、加瀬君またねー!」
そういうと、結月ももたち自分の席へと戻っていった。
「今日は一か月後に迫った期末試験に向けて、グループワークをする班を決めたいと思います~。じゃあ、クラス委員は前に出てきて進行よろしくお願いね~!」
「わかりました。」
そう言うと、さっきまで話していた内の一人である木嶋真綾が席を立ち教卓まで歩き始めた。
「先ほど先生が話した通り、今日は期末試験に向けたグループワークの班を決めたいと思います。基本は前回の定期試験のグループのままで行きたいと思いますが、多少の微調整を行いたいと思います。」
木嶋真綾はそう言うと、黒板にある表を貼りだした。
「これは前回の定期試験の順位と各グループの教科別平均得点が乗っています。何個かの班には得意科目や苦手科目に偏りが出ているため点数や科目ごとの傾向でこちらが班を作り直しました。この表に新しい班のメンバーが記載されているため確認してください。」
そう言うと間もなく前から、黒板に貼りだされている紙と同様の紙が前から送られてきた。
班のメンバーは、、結月もも、木嶋真綾、美月愛奈、橘友里と僕の五人組か。
「加瀬君と橘さんが転校してきた関係で人数に多少のばらつきはありますが、もし何かあったら私の所まで来てください。これでグループワークについての話し合いを終了させようと思います。何かある方はいますか?」
教室には沈黙が流れた。
「無さそうなため各班グループになって試験までの計画を立ててください。」
木嶋真綾から指示が出ると各生徒はグループワークのメンバーと計画を立てるために席を立ち始めた。
「じゃあ、さっそく始めよっか!まーちゃん進行よろしく!」
「そこから人任せなんだね、、。じゃあ始めます。とりあえず、私達三人の得意科目と苦手科目はもう把握しているから、2人の得意科目と苦手科目を教えてくれる?」
得意科目と苦手科目か。これと言って特にないんだがな、、。
「わたくしは、特にこれと言って得意科目と苦手科目はございません。」
「ゆりちゃんは特にこれといって無しと。」
無くても良いということが分かった為、ゆりと同じようなことを言ってごまかしておいた。
「基本的にグループワークでは、得意科目を他の人に教えて更に理解を深めて、苦手科目は学生間で教えてもらうことによって先生とは違って距離が近いから気兼ねなく質問してもらって克服してもらうことになっているわ。」
「わかった。僕とゆりは得意科目と苦手科目は特にないから、皆が苦手科目の分野を教えることにするよ。」
「この三人で教えることができない分野は数学と現代文だからそこを教えてくれると助かるわ。」
「じゃあ、数学は僕が。現代文はゆりに任せよう。」
「かしこまりました。」
数学か。この年代、この学校の授業の進み具合や定期試験範囲などは資料に書いてあったからそれに沿ってやればいいか。
「ちなみに、まーちゃんが物理・化学、ももが日本史・世界史、私が英語と古典教えるからね!」
「よろしく頼んだ。」
「よろしくお願いいたします。」
「まあ、得意科目・苦手科目と言っても、ほとんど真綾一人で事足りるんだけどね?」
結月ももはそう言うと先ほど配られた紙を見せてきた。
「真綾のところ見てみ?」
木嶋真綾のデータを見ると、数学、現代文、英語以外の科目はすべて満点近く、順位は学年一位となっていた。
「もも、少し恥ずかしい。」
木嶋真綾はそう言うと、少し顔を赤くして俯いていた。
「うちのまーちゃんはすごいでしょ!勉強・スポーツ共にこなします!容姿端麗、文武両道、大和撫子!」
「ちょっと愛奈本当に恥ずかしい、、」
木嶋真綾は褒められると更に赤面し机に伏せた。
「真綾は褒められるの弱いんだよね~?可愛いなあ~」
木嶋真綾は顔を上げると、
「とにかく!そんな感じでやるから!明日の五限目の時間からよろしく!私は先生の所に報告してきます!」
「あ。まーちゃん逃げた~」
木嶋真綾は勢いよく席を立つと担任の元へ歩いて行った。
木嶋真綾か、、。彼女の成績の話をしたときに、学年二位も同時に目に入った。結月ももが二位か。成績の話をしたとき、あまりに木嶋真綾が取り乱したためそちらに気を取られていたが、少しだが結月ももの雰囲気が変わった気がした。