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異世界転生したらしいのだけど、誰か悪役令嬢を連れてきて!

周回遅れで異世界転生に気づいたけど、誰か私を殴って頂戴!の続きです。

 そして、例の彼女は、目の前ですやすやと眠っているのである。

悪役令嬢である獄獄闇子を恐れてか、図書室には、図書委員以外いない。

いや、今、一瞬で借りて外に出た利用者がいるが。何を借りたのかは見えなかったけど、CDなら、返却時にボックス返却はNGだから気をつけて頂戴。心の中で念を送る。

何も持たずに席に座る彼女を揺さぶり起こす。


「天羽さん、そろそろ起きておきなさい。もうすぐ閉館時間よ」

「んぁー、やみこちゃんだぁ」


おはようございます、とあくびをする彼女に、おはよう、と返す。


「貴方、私のクラスの転入生が探してたけど、お会いになったかしら」


 私が所属するBクラスの転入生、調 旋律は国家級の【遊】の魔法を持つ生徒である。まぁ本当は、魔王軍から手配された手下なのだが。

ちなみにこの事はこの世界である例の乙女ゲームの説明ページの隅っこに書いてある。印刷会社のミスによる誤植でネタバレしたらしい。開発陣はお気の毒である。

という設定は置いてといて、今の話しをすると、調は天羽聖子を探しているらしい。私に話しかけてきた勇気ある体育委員Aが教えてくれた。


ゲームの調 旋律ルートだと、幼い頃に、天羽聖子が調を励まし、それを覚えていた調は天羽聖子にずっと恋していた。調の恋が実るルート……らしい。魔王様がちょこっと出演するから、このルートもクリアした、と自慢げに言う友だちから教えて貰ったことである。どうでもいいが、この乙女ゲームを押し付けた友だちは、とある動画サイトで、魔王様が登場する動画に全てコメントを残す人として有名である。


(それはともかく調は、天羽聖子に「久しぶり」と声をかけに来たのかもしれない) 


経済力は王子に劣るが、火・金・日で女の子enjoyな楓よりいいかも知れない。

だが、王子ルートしかやったことがない私には、ピアニスト 調 旋律の事はよく分からないのである。ともかく天羽 聖子に似合う人物か見極めねば。バンドマンでも美容師でもなければ多分大丈夫と信じたい。3Bは危険キケン……


「調くんとはさっき会ったよ。調くんのピアノ聴いてたら眠くなっちゃって、寝たら追い出された」


(んんんんんんんん?最悪の展開なのでは)


天羽聖子にコンサートでのマナーを叩き込むべきだった。庶民生まれの天羽聖子なのだ。しかたな……くはないよ!やらかしてくれたな天羽聖子。

脳内大パニックな私を知らずして、彼女は話を続ける。


「寝ちゃってごめんね、って言ったら「せーくんのピアノをちゃんと聴いてくれないあーちゃんなんかキライ! 」って言われた」


闇子ちゃん、どうやったら仲直り出来るか考えて欲しいんだ、との事だそうで。


(勿論協力させていただきますけど、調ルートも止めといた方がいい気がしてきた)


というか、自身の事を『せーくん』呼びってなんだ。魔王軍、パーティーメンツ大丈夫そ? と心配になってしまう。


 この後、実際に「せーくん様ぁ、ノートお忘れになってますよぉ」と登校途中に調を追いかける、角を隠しきれていない魔王軍の手下を見かける事になるのだが。


「その……調さんはいつもそんな感じなの? 」

「うん、そうだよぉ」


眠れなかったら闇子ちゃんも、調くんにお願いしたらいいよ、という彼女に、少しは反省なさい、と叱る。


「ともかく、演奏中に寝るのはマナー違反よ。今度は私と一緒に聴きに行きましょう」


 さて、これまでに【聖】の魔法、【遊】の魔法をあげてきたが、ここまで来るともうお分かりであろう、【闇】の魔法も存在する。


(『目覚ましの魔法』を使って、天羽聖子を起こす! )


なんでこんなショボい感じの魔法が禁忌の闇の魔法にあるんだろうな。と思う。

そう、【闇】の魔法は禁忌の扱いなのである。公に使うと国から大目玉を食らうのである。

闇の魔法が魔王よりも得意であった獄獄 闇子はドンマイである。『第三形態まである魔王様本当に凄い』という友人の話では、この乙女ゲームには戦闘モードもあるみたいで、第三形態があるヤツより強い闇子処刑ルートはある意味正しかった気がしてくる。

なんでラスボスよりライバルの方が強いねん。このゲームの開発陣が気になる所である。


「じゃあ、今いこー」


おっと、今ときたか。断る理由もないので頷いたが。


お・ん・が・く・し・つ~♪とスキップする天羽聖子についていく。ついつい、と・しょ・し・つ~♪と私も口ずさみたくなるな。


ルンルンな天羽聖子が扉をあけ、私も音楽室に入っていく。


ゴミ・ゴミ・ゴミ!

紙と楽譜が撒き散らかされた部屋に調 旋律は佇んでいた。

前にいる聖子は「ゴ・ミ~♪」と呑気に歌う。

あっ、あれは図書室で借りたであろう本。


こう、ゴミの中に置かれている本を考えていたら、私は倒れてしまった。


「ピアニストはダメッ! 」


あぁ、目の前が真っ暗だ。

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