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講義と練習

地球換算 2035年1月24日 0900 世界名”キュラーム” 

第6統合軍拠点 大講義室 

 この世界に来てから、早2週間が過ぎようとしていた。

あの後は特に何も起こらず、毎朝の様に目の輝きが足りないと小言を貰っている。

ここでの2100就寝、0500起床の生活にも慣れてきた。

 だから、俺は大講義室に来ていた。何故なら、ここである講義が行われるからだ。

他にもまばらに人はいるが、かなり少ない。

肩に見える階級章は、全て少佐以上の物だった。尉官は俺1人だけである。

教室の前につるされたスクリーンには、大きな字が映されていた。

 そこに書かれていたのは、今回の講義の大綱が書かれていた。

”この世界”キュラーム”の地理、歴史、公民等。(佐官以上全員参加 0900開)”

 俺はこの世界に来てからまだ日が浅い為、このような講義を受けることにした。

情報は知っていて損ではない、むしろ得だ。

 講義開始が0930だからか、雑談をしている受講者もいる。

まるで大学の講義前の様な雰囲気だった。

 きっかり30分後、講義開始。

今回の講師は、どうやら現地の人らしい。有意義な物に成りそうだ。

 壇上に上がった女性は、ケモ耳が生えていた。

身長は約1,5m前後で、髪の色は黄金色だ。

髪型はセミロングで、髪飾りは付けていない。

耳は頭頂部に生えており、毛は髪と同色で有る。

顔立ちは少々きつめだが、小柄な為か逆に可愛らしく見える。

大学ノートにメモを取った。

 ざわつく受講者たち。

しかし、壇上に上がった人物は気にも留めない様子だった。

「では、これより”この世界”キュラーム”の地理、歴史、公民等。”の講義を始めたいと思います。講師は私、篠原キヨが担当します。よろしくお願いします。」

 俺は手早く大学ノートにメモをした。講師の名前は篠原キヨ、年齢不詳。

「では初めに、こちらの地図をご覧ください。」

スクリーンに映し出された地図は、オーサグラフ形式とメルカトル形式のふたつだった。オーサグラフが上で、メルカトルが下である。

 オーサグラフ地図に関して説明しよう。

従来のメルカトル地図では北極付近の陸地が肥大化してしまうと言う欠点があった。

だが、オーサグラフ地図はほぼ正確に球体の面積を投影可能な地図だ。

2000年以降に発明された新しい地図で、当初は余り広がらなかった。

しかし、2025年以降爆発的に普及。

今現在ではスタンダードな地図と成っている。 

 この世界の陸地は非常にいびつな形をしている。

まず、大陸が1つしかない。その大部分が北半球の東側に存在している。

また、大陸の北西に大きな入り江があり、そこに大きな島が存在している。

経度0、緯度0の所に大きな半島が存在し、東側に大きな島が一つある。

その北西部分には細長い半島があった。

 東側の南半球側に小さな島があるが、そこは自軍の補給基地がある。また、大陸の東側の海上には我々の拠点としている列島があった。

 そして、北大陸の南端から沖合200㎞に×印が有った。

恐らく、そこが僕の転移してきた場所だろう。

 「まず、この世界の地理から解説します。」

そう言った後、講師は話し始めた。

「世界全体としては、温暖な気候であり、寒冷地は殆ど在りません。

そちらで言う所の温帯が、この世界の主な気候です。北の方に行っても、それは余り変わりません。その理由は歴史を見れば分かると思います。」

 スクリーンの画像が切り替わる。

3枚の画像が出され、そこには地下洞窟に書かれた壁画が映っていた。

逃げる人々を追いまわす、巨大な蛇などが書かれた物だ。

そして、その蛇に立ち向かう数人の人もある。

更に、何か黒い人型のモノが人を食べている様な様子も描かれていた。

「かつて、この世界全土を巻き込んだ戦争が有りました。

我々はこれを”魔獣戦争”ないし”第1次戦争”と呼称しています。

その時に、現在の大陸の形に成りました。

実際、戦争が行われる前の時と比べ、陸地は約3割ほど消失したようです。

この時は、人類対魔物の戦争でした。」

その発言に、受講者たちは驚いていた。

「この魔獣戦争は、今から1万年ほど前の事です。

そして、今から2000年前に第2次戦争が始まりました。」

そう言って、1度大きく息を吸う。

「第2次戦争は、これまでの物とは違いました。人間などの国家同士による、本格的な国際紛争でした。この為、陸地への被害は殆ど有りません。

 この戦争により、またも幾つかの国家が滅びました。

世界全体での死者数は、およそ500万人です。」

 俺はその話を、ノートを取りながら聞いていた。

「そして、死者が原因でアンデッドが大量発生しました。この為、戦争に関する複数の条約が締結される事と成ったのです。

 更に、各国はギルド連合―特に冒険者ギルド―の誘致を始めました。

それで、現在の様な状況に成るまでおおよそ4年ほどかかったそうです。」

「ギルド連合は、あらゆる職に携わる人々の為に造られた組織です。

会長と呼ばれる人物が主権を握っていますが、監査委員会等が設置されている為、不正行為等は殆どない組織です。創設者はイリーナ・アーゼンバークで、現在は行方不明と成っています。

創設当時は余り良く思われませんでしたが、第2次戦争の時にその必要性が明らかに成りました。彼らは冒険者を率い、アンデッド達を全滅させました。

 冒険者は世界各地を放浪する人々で、始めの内はそれぞれが勝手に動いていました。

しかし、それでは出会った魔物や訪れた地域に関する情報が殆ど共有されない。

その為、各地に似たような組織が出来始め、それらを全て統合させた。

その人物が、イリーナ・アーゼンバークでした。」

そう言った後、パソコンを操作した。

「これが、彼女に関する唯一の手掛かりです。」

そう言った後に、スクリーンが切り替わる。

そこに映し出された物は、1枚の硬貨だった。

表面には文字と数字が書かれ、裏面には女性の顔が有った。

「これはギルド連合創立100周年記念硬貨です。この裏面に刻まれている人物が、イリーナ・アーゼンバークであると言われています。灰褐色の髪を短く切りそろえ、左側頭部に菫花の髪飾りを付け、黄金色の瞳を持った女性と言う事しか分かっていません。文献等も大半が焼失しており、本当に存在していたのかも不明なのです。ですが、同時代に記された手記などからその存在は確定的であると歴史研究会は結論付けています。

ですが、今から14年前ほど前まではその存在は確認されていました。」

「では、この世界で最も広い国土を有する”オーガル帝国”に付いてです。」

そう言って、パソコンを操作する。

北大陸の西側4分の1が紅くなった。

そこがオーガル帝国の領地なのだろう。

大きさとしては、イタリア程度だった。

「人口250万人の帝政国家で、皇帝はマクスウェル・オーガル5世です。

国家全体としては非常に平和主義です。ですが、西側は森林が広がっており、そこに出現する魔物は非常に強力です。

更に、東に在る国家”ラーク王国”が非常に好戦的である為、安全保障環境は最悪です。」

 パソコンを操作した。

オーガル帝国の東に在る国家が、青色に染まる。

「次に”ラーク王国”に付いてです。

国王はウティ・ラーク。

この国は前述したように非常に好戦的です。

国民全員が戦闘の経験を積んでいる為、人口=軍人と言う事に成ります。

ちなみにですが、人口は50万人程度です。」

そう言って、パソコンを操作した。

「更に東隣に在る国家が、”グディーティクス連合”です。

国王等は存在せず、棟梁と呼称される人物が国家の主権を握っています。

あなた方風に言えば、民主主義的国家であると言えます。」

大学ノートに書き込む。

他の参加者たちを横目で見ると、皆真剣に話を聞いている。

 「次に、極東の”キファー皇国”に付いてです。」

講師の声が、響いた。

「この国は孤立主義的、余り情報は有りません。

しかし、現地に潜入した大尉の情報を元に解析しました。

第6軍第1大隊隊長、有馬直大尉。説明をお願いします。」

 そう言った後に入ってきた人物は、何所かで見た事があった。

日本人らしい黒髪を刈り上げにし、浅葱色の瞳を持った男。

黒い半長靴を履き、青系統の迷彩服を着た彼は、壇上に上がった後に言った。

「ご紹介に預かりました、第1大隊隊長、有馬直(ありまなおし)大尉で有ります。今回は、キファー皇国潜入調査の結果報告に参りました。」

そう言った後、頭を下げる。

そして、彼は話し始めた。

「まず、国家体制としては日本国とアメリカ合衆国の混合であり、皇帝はグスタフ・キファーです。」

そう言って、彼はパソコンを操作した。

「これが皇帝の写真です。」

映し出された人物の写真は、非常に鮮明だった。

恐らく、有馬大尉とのツーショットなのだろう。隣に彼が居た。

そう見ると、かなり背は高く、190以上はあるだろうか。

白髪の混じる濃い灰色の髪を、全て後ろに流した壮年の男。

何より、驚くべきは背中に付いたそれである。羽が生えていた。

外観的には蝙蝠が近いだろう。

だが、鱗などがある為、どちらかと言えば龍の翼が正しいのだろう。

「この国は人間では無く、古亜人族―所謂”龍人族”等が暮らす国であります。人口比的には、龍人族が半数を占め、それ以外はその他の種族が暮らしていると言った具合です。

ちなみにですが、首都及び近郊の都市の殆どは龍人族のみが暮らしています。」

質問等が終わり、講義が終了した。

 暫くして、スピーカーから声が聞こえた。

壮年の男の、しわがれた声だった。

「本日1400より、銃器講習会を始める。総員、グラウンドに1355までに整列せよ。」

腕時計を見ると、時刻は1145を指していた。

「これで、本日の講習会を終わります。有馬大尉、ご協力有難うございました。」

そう言って、講師は出て行った。

 僕は急いで食堂に向かう。本日のメニューはご飯とカサゴのみそ汁、目玉焼きと野菜のサラダだった。味のしない何かを急いで食べ、自室に向かう。

 鞄に荷物を詰め、グラウンドへと走った。

息を切らし、そこに到着したのは1325だった。

人は全員集まっているらしく、もう既に整列を始めていた。

俺は所属部隊の列に並んだ。

「サガミ、もう少しゆっくり行動しろ。お前はまだここに来てから日が浅いからな。」

そう言ったのは、隊長の白波瀬少佐―TACNAME zmeya(ズニーヤ)―だ。

どうやら俺が相当無茶をしたと思ったらしく、心配そうにこちらを見ている。

 大丈夫だと言うが、それが気を使っていると思われたらい。

「おーい、誰か毛布持ってきてくれ。それから湯たんぽも。」

「それなら、近くの倉庫に在ったぞ。湯たんぽも同じ場所に在った筈だ。」

そう言う声があちこち飛び交った。

「ズニーヤ、俺は本当に大丈夫だ。だから講習会には参加させてほしい。」

そう言うが、2番機のMagpie(マーグパイ)にこう言われてしまった。

「サガミ、無理は禁物だよ。余りそう言った事をしてはダメ。若いからと言って調子に乗っていると、痛い目を見るよ。」

手に毛布と湯たんぽを持ち、迫ってきた。

逃げようとしたが、3番機―Celt(ケルト)―に肩を掴まれる。

「諦めろ、サガミ。午前中はあの講習に参加したのだろう。だったら暫く横に成っていろ。時間になったら起こす。」

そう言われ、毛布の上に寝転ばされる。

 気が付くと、意識は落ちていた。

 目の前に、1つの人影がある。

そこに在るだけで、何もしない。

それから発せられる声は、分からない物だった。

「私は、生きている。過去の存在ではない。近い未来、必ず会う事になるだろう。」

景色は、どこかの街並みに成った。

 「…い、おい。起きろ。時間だぞ。」

ケルトの声で目が覚める。…夢を見ていたような気がした。だが、思い出せない。

「すまないケルト、眠りすぎた。」そう言ったが、ケルトを含む部隊の皆が首をかしげた。

「いや、僕は声を掛けていないぞ。ズニーヤ、声掛けたか?」

「いや、そんな事は無いが。マーグパイも声を掛けていないよな。」

「…ああ、掛けて無い。有馬大尉が掛けたのでは?」

 そう話す同僚達。しかし、それもびりびりと響く声に遮られた。

「総員、傾注!」

しわがれた壮年の男の声が、場の空気を一変させた。

「これより、銃器定期講習会を開始する。総員所定の位置に付け。」

そう言った後、それぞれがはじかれた様に動き出した。

 俺はズニーヤの背中を付いて走る。

3分後、漸く目的地に到着した。中には銃器がずらりと並べられている。

Kar98の様なボルトアクションライフルから、最新鋭の30式小銃まで在った。

「君たちには、この中から3丁の銃を選んでもらう。それらを全て分解、整備した後、組み直して終了だ。部品は無くすなよ、見つかるまで探す羽目になるからな。」

 それから数分後、俺は3丁の銃を選んだ。

自動小銃にはVz58を、拳銃にはM1919を選んだ。そして、ボルトアクションのモシン・ナガン(タイプ U.S.ライフル 7.62㎜ モデル1916)。

時計の針は1409を指していた。

まずは分解からだった。

 しかし。

ねじを緩め、それの中身を見た時に絶句した。中がグリスで埋まっていたのだ。ボルトの中身も、弾倉の内部も当然の様にグリスが詰められている。

錆対策の為なのかもしれないが、流石にこれはやりすだと、一目見て分かった。

まず、グリスをふき取る。

そして、錆の付いた部品が有れば錆落とし液に漬けこむ。

ボルト中部のハンマー(撃針)等を見て、またも驚いた。

(酷い錆だ。まさか、ここだけグリスを怠ったのか。)

錆落としに入れる。

 次に引き金周り。

(…これは流石に無いだろ。)

中にはグリスがぎっちりと詰まっていた。

しかし、ばらして中身を見た所、恐ろしい量の錆が支配していた。

容赦なく錆落としに入れる。

次に銃身。ライフリングに沿って金ブラシをこする。 

 銃の木製部品も点検。傷の類は無かった。

だが、一部塗装がはげていた為、塗装する事にした。

それのふたを開け、刷毛に付ける。全体にまんべんなく伸ばし、乾燥させた。

完全に乾くまでの間、錆落としの中に付けた物を組み立てる。

 まず、ボルトから。

撃針を組み付け、安全装置も取り付け、その他もろもろも付けた。

照準も組み直し、動作を確認した。

ストックの状態も確認し、組み上げる。

ボルトを起こし、手前に引く。前進させ、ボルトを下げた。安全装置もしっかりと動く。後は各所にグリスを注すだけだ。

「新入りちゃん、なかなかセンスが良いね。後はグリスの充填だけ?」

顔を覗き込みながら言ってきたのは、あのエレン少尉だった。

「…はい。ですが、そういう風に呼ぶのは止めてくれませんか?

せめて階級でお願いします。」

そう言うが、少尉は相変わらずニコニコ笑っている。

「まあまま、そんな硬くならないで。ここって結構規則緩いから。もっとこう、気楽に行こうよ。」

 ふと手元に視線を戻した。

そこには、ばらばらに分解されたモシン・ナガンの姿が…。

「さて、この手の事は反復練習だよ。あ、私中尉に昇格したから。」

そう言って、エレン少尉、いや中尉は去って行った。

 世知辛い。

 俺が最後の銃を組み立て終わったのは、夜も更けた2045の事だった。

「漸く自室に帰れる…。」

ふらふらとした足取りで、自室に向かった。

食堂は開いていなかった為、自室に在るカロリーメイトを食べるしかなかった。

「あ、おい。八重島少尉。君夕飯食べていないだろ。ちょっとこっち来い。」

そう後ろから声を掛けられた。振り向くと、そこには有馬大尉が居た。

「有馬大尉…。ですが、明日は早くから出発なのでは?」

俺はそう言った後、それを断ろうとした。

 有馬大尉は1部隊を率いる指揮官である。しかも、その目的は大陸での諜報活動。それ故に、多くの準備を必要としているのだ。

「ああ、出発に付いてだが明後日に延期になった。天候不順らしくてな。代わりの上陸地点までかなり距離がある為、明日は念入りに準備しろと総帥に言われた。それに…、君に重要な話がある。」

大尉の雰囲気が変わった。穏やかな雰囲気から、嵐の前の静けさへと。

 「それは、如何言う事でしょうか。」

そう俺が言う。

彼は「飯でも食いながら話そう。そうした方が気楽でいいだろう。」と言い歩きだした。

 着いたのは大尉の私室だった。無駄な物が置かれていない、簡素な私室。

在るのは服と鞄、それから複数の銃のみだった。

 「君の扶養者―田中弘治に付いて、幾つか聞きたい事がある。」

そう問いかけてきたのは、俺にサンドイッチを手渡した直後の事だった。

「田中さんですか?彼はごく普通の一般人だと思いますが。」

俺はそう言って、サンドイッチを食べる。

「いや、彼は普通の人間では無い。この新聞記事を見てくれ。」

 そう言って渡された物は、2022年10月10日の朝刊だった。

それの切り抜きである。

”富士山にて爆発?周辺には大量の火薬反応在り。”

その分にはおかしな所も見られない。これの何が問題だと言うのか。

2枚の写真もあるが、特に可笑しな点は無い。今度はじっくりと見る。

 2枚目の写真に、それが映っていた。

「この浮いているのは、人?」

白黒だから分かりにくいが、明らかに人が飛んでいる。

「ここに映っている人物が、僕の伯父である有馬忠義と、君の養父である田中弘治なのだ。」

大尉曰く、これ以外にも複数の証拠があると言う。

「1980年7月10日から同年8月9日まで、ある高校で複数の生徒が立て続けに亡くなった。これを止めたのも、田中弘治だよ。」

更に証拠を出す大尉。

「1999年、田中弘治はまたも偉業を成し遂げた。伏見稲荷に囚われた学生をたった1人で救助。更にその数ヵ月後には、八尺様をぼこぼこにして向う1万年は行動不能状態にした。

更に2022年3月、僕の伯父”有馬忠義”が霊術を扱う様に成った。この時にも田中弘治の存在は確認されている。

ここから、我々の運命は変わった。

知人曰く、本来であれば滅びの道を歩む筈だった人類は、今その運命から逃れ始めているらしい。その第1段階が、我々の異世界転生だ。」

 俺は信じられなかた。普段着が作業服で、ずぼらな格好をした彼がその様な人物だとは思えなかったのだ。更に、俺は彼の伯父を数回目にしている。

3人で来る事が多く、同行者は1人固定で、もう1人はランダムだった。

ある時はフードを目部下に被った女性で、またある時は老人だった。

「ちなみにだが、僕の伯父の嫁は付喪神らしい。詳しくは分からないが。」

「真実は小説よりも奇なり、ですね。」

「ああ、まったくだ。僕だって始めて知った時は椅子からひっくり返ったよ。」

 数秒後、彼と俺は同時に笑いだした。落ち着いた所で、情報を整理する。

「要は、ここ最近の田中さんの動きが知りたいのですね?」

俺がそう言うと、彼は肯定した。

「まあ、そう言う事だ。深夜に出かけるとかは?」

「いや、そう言うのは一切なかった。恐らく、平日の昼間に動いていたと思う。」

「なるほど。所で、君は今何歳だ。」

「今年の5月に17歳になる。」

その後しばらく雑談をして過ごし、部屋を出た。

 (1週間後から訓練機でのフライトだ。午前中は不具合の対処等の講習。午後からの本格的なフライトに備えよう。)

自室に入り、布団に寝転がる。

(早く寝よう。明日も0500起床だ。)

目を閉じた途端、意識が落ちた。

20220911 文章削減

20220918 弾奏→弾倉

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