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おもてなし



 翌日から、私たちのおもてなし大作戦がはじまった。

 騎士は全員殿下に帯同するそうだ。護衛だから仕方ない。

 文官は体力と興味と相談で、自由参加するそうだ。

 

 初日は殿下が希望したため、私が指導する武道を一日体験してもらった。

 まずは心得から。

 次に、受け身が出来ていることを確認し、初心者向けの型と動きの意味を丁寧に教えた。

 思った通り、体はよく鍛えられているが筋肉は柔軟で、体感も良くセンスも良い。性格も素直だからか、こちらの指摘を受け入れすぐさま吸収し、想定よりも多くを教えることができた。これは強くなるわ、と納得の一日だった。

 リリアン嬢には、温泉と岩盤浴の後で、オイルマッサージを体験してもらった。

 元々手入れが行き届いている美しい肌であったが、体の芯を温め、大量の汗とともに老廃物を流し、保湿オイルで全身の血流とリンパの流れを改善することにより、肌はしっとりもっちり、浮腫みもすっきり、身体も軽くなったと大好評だった。


 二日目はトレッキングにした。

 リリアン嬢が、元平民ですから!と殿下と同行を希望したので中級コースを提案したのだが、令嬢のか弱さを痛感する結果になった。

 まぁ、殿下は鍛錬を名目に、恥ずかしがるリリアン嬢を抱き上げたまま踏破してご満悦だったし、リリアン嬢も、殿下の逞しさにうっとりしていたから良かったけれど、同道した騎士たちの目は死んでいた。

 各コースの難易度と目的の明確化。案内人の教育、体力の劣る者へのサポート、お楽しみポイントをコース内に複数設定し、満足度の向上を図るなどの工夫も必要。

 様々な課題と改善が見えて、大変為になった。


 三日目は収穫体験だ。

 ちょうど大根が収穫時だったので、抜いてもらうことにした。

 殿下が大根葉を毟ったり、大根を折ってしまったり、と悪戦苦闘する中、リリアン嬢がスポンスポンと小気味よく抜いていき、見事に昨日の挽回を果たした。

 リリアン嬢が丸々と太ったミミズに目を輝かせ、手の平に乗せて立派だと称賛する姿を、殿下が引き気味に見ているのが実に面白かった。

 他にネギや白菜を収穫し、大鍋で豚汁を作った。勿論、肉類や野菜をふんだんに使ってバーベキューも楽しんだ。

 提供されるだけでは味わえない喜びと楽しさがあると、お褒めの言葉を頂いた。


 四日目は、のんびりと釣りを楽しんでもらった。

 じっとしているのが苦手な人は、狩りに連れて行った。

 討伐ではなく、遊戯でもなく、食べるための狩り。命を頂くための殺生だと初めに伝えたからか、物思う者もいたようだ。

 狩った獲物はその場で血抜きなどの下処理をして、釣った魚はバケツに入れて生きたま持ち帰ってバーベキューをした。

 二日連続でバーベキューになったが、誰も文句を言う人はいなかった。


 五日目は、牧場体験だ。

 ドキドキの乳絞り。絞った牛乳でフレッシュチーズ作り。ソーセージ作りでは、羊の腸が破れてミンチが飛び出し大惨事になった。 皆、大笑いをして楽しんでくれた。

 夕食は、牧場の生産物をふんだんに使った。

 誰もかれも、おいしいとモリモリ食べてくれた。


 そして六日目。

 ついに、殿下との模擬戦だ。

 観戦希望が多かったので、野外の鍛錬場で行うことにする。

 余興として、弟子と騎士が前座試合をして場を盛り上げる。

 そして、私と殿下が試合場で相対した。

 

 殿下は木剣、私はトンファーのような得物を持った。

 剣も嗜んだが、男性に比べて筋力に劣る私で打ち合いは不利だ。あまり筋力に頼らず体術を阻害しない武器が好ましい。

 加えて、万が一にも殿下に怪我をさせないもの。かつ、対峙できるもの。

 私の知識では、トンファー一択だ。ふふふ。制圧させて頂きますよ、殿下。

 

 殿下はとても落ち着いていた。

 トンファーを不思議そうに見たが、心動かされる様子はない。

 恐れも慢心も、侮りもない。泰然と流れる気に、油断できないと気を引き締める。

 

 審判は騎士団長だ。

 広場の中央で礼をし、騎士団長の開始の声で私たちの試合は始まった。

 

 仕掛けてきたのは殿下。

 鋭い踏み込みで下段から斜めに切り上げる。足を引き、半身で躱すと、剣先が流れるように弧を描き、空気が横に切り裂かれる。

 それを鼻先で躱し、殿下の次の動きを読む。

 三閃、四閃、次々と繰り出される淀みない剣戟。鋭く無駄のない剣の軌跡は、まるで舞踏のように美しい。

 これが二年の鍛錬で手に入れた動きなのか。信じられない成長ぶりに私は感嘆する。さすがヒーロー!

 

 殿下の攻撃を全て躱し切ると、殿下は間合いを取って微笑んだ。


「流石だね。掠りもしない」

「流れるような殿下の剣技に見惚れてしまいましたわ」


 称賛を籠めて私も微笑む。

 あれ程の動きに、息一つ乱さない。毎日真摯に取り組んだのだろう。自信がないだけで、根は真面目な人だったのだろうから。

 心配そうに見つめるヒロインちゃん。ううん、リリーをちらりと見る。

 以前のように声を上げることも表情に出すこともない。だが、その瞳の中に愛情と信頼がはっきりと見える。

 

 良いカップルじゃん! やっぱり悪役令嬢なんて要らなかったんだよ!

 

 何だか嬉しくなって、笑みが深くなる。

 殿下の周りの空気がひりついた。


「楽しいですわね、殿下。さぁ、続きを始めましょう?」

「……あぁ!」


 すっと息を吐きだして、殿下は大地を蹴った。

 鋭い突きと共に懐に飛び込んでくる。正しく正中線を狙った突きは見事という他ない。

 トンファーを剣の腹に当てて軌道を変えつつ抑え込み、逆の腕で攻撃を行う。

 制圧体制に入った私に、殿下がすかさず引く。

 力点を外されれば、反撃を喰らう。鍔に近い剣腹を抑えながら殿下の動きに合わせて体移動を行う。

 その僅かな力の移動を付かれた。

 殿下は、抑え込む長棒から剣を滑らせる。手首を返し、刃を当てると一気に弾いた。

 私は力に逆らわずトンファーから手を放す。

 そのまま次の攻撃に転じようとした殿下だが、抵抗を失ったことで過剰となった力に腕が振れる。

 私はもう一方のトンファーの長棒を掴んだ。

 力が乗らないまま振り下ろされた剣先を、持ち手と棒の部分で絡めとった。十手の要領だ。

 そのままテコの原理で殿下の手から木剣を弾き飛ばす。


「そこまで!」


 騎士団長の凛々しい声が響き渡る。

 殿下は、飛ばされた剣を見ると、晴れやかに笑った。


「まいった。完敗だよ、アンナ」

「とんでもございません。私、殿下を制圧するつもりでしたのに、剣を奪うことしかできませんでしたわ」


 ころころと笑って見せると、殿下は掌で顔を覆い、天を仰いでしまった。


「アンナ殿。もう少し労りとか謙虚とか、殿下に優しさを向けて差し上げては」

「何を仰るの? 制圧できなかった相手への最大の賛辞ですよ?」


 騎士団長の口出しに、私は心外だとアピールする。

 そんな私たちを前に、殿下の身体が小刻みに震えだす。それはすぐに、朗らかで明るい爆笑に変わった。


「はぁ~、流石だよ。見事だ。僕の憧れの人は、遥かなる高みに居ると分かって嬉しい」


 笑顔で右手を差し出す殿下に私も手を差し出し、がっちりと握手する。


「でも、来年は殿下に敵わないかもしれません」


 二年の伸びしろは、脅威というより化け物級だ。


「そうだろうか。勿論僕はアンネローゼ嬢を超える為、鍛錬を惜しまない。しかし君も同じだろう? 成長を続ける君を、僕はずっと追いかけるんだろう。そんな気がするよ」


 穏やかに笑う殿下に、胸がほっこりする。

 これが愛されワンコの力なのか。かつての同僚のワンコ愛が少しだけ分かった気がした。



◇◇◇



「あーあ、格好よく君に勝って、父上に王太子になると宣言するつもりだったのにな」


 場所を変え、野外パーティが始まった。

 食材や酒類を用意した上で、農場と牧場も解放したので、各自好きなものを取ってきては自由に料理を楽しんでいる。

 会場の隅では、トンファーに興味を持った騎士が、弟子に使い方を習っている。

 侍女に手を出そうとして制圧されている騎士もちらほらいる。

 うちの子たちは強いから、生半可に手を出すと怪我ではすみませんよ? と注意喚起するのを忘れていたと思い出す。

 ま、いいか。身も持って知る方が手っ取り早い。

 

 殿下のぼやきに、首を傾げる。


「私に勝たなくても、王太子になればよろしいのでは? 『周囲の人を守れるほど強くなる』という条件は十分満たしていますし」

「そう思う?」

「ええ。騎士団長なんて相手にならないほど強いですし、私の弟子たちでも、殿下の相手が出来そうなのは片手で足りる程しかいませんよ?」

「君は、私には辛辣だよね」

「だって、騎士団長様ですもの」


 素直な所感を述べれば、嬉しそうな殿下の隣で、騎士団長が顔を顰める。


「本当に驚きました。弟子たちにも良い刺激になるでしょう。リリーも本当に素敵になったわ。国母として相応しいですわ」


 殿下の隣に控えるリリーが、頬を染めて微笑む。滅茶苦茶可愛い。

 リリーとは、この滞在期間中に愛称呼びをするまで仲良くなった。

 正直出会いがアレだったので私に脅えると思ってた。でも、彼女はするりと懐に入ってきて、あっという間に親しくなってしまった。天性の人たらしである。

 平和な今の世だと、優秀さよりもリリーのような人が上に立つ方が良いと思う。加えてリリーは頭も良くて素直で努力を惜しまない。なによもう、完璧じゃない!


 にこにこしながら、リリーと見つめ合う。あんまり可愛いから、ついつい抱き着いてしまう。慌てるリリーも本当に可愛い。

 リリーを愛でて楽しむ私から、さりげなく殿下がリリーを奪う。

 ほっとするリリーも可愛い。殿下ズルイ。


 そんなことをこっそり思いながら、手にした果実酒を口に含んだ。

 酒精が低く、甘い味と香りが昼間から飲むにはちょうど良い。


「国に戻られたら、王太子になるのでしょう?」

「アンネローゼ嬢は許すとおもうか?」


 少し眉を下げる殿下に、私は力強く頷く。


「勿論です。彼女が思う以上にお二人は素敵に成長された。平民に下るという方がアンネローゼは怒るでしょう。是非立太子され、国を良い方に導いでください。そしてリリー、そんな殿下を支えてあげてね。今まで通り」


 二人の目が潤む。


「出来るだけ早くした方が良いわね。どうせ国王は準備してると思うし、時間をかければ善からぬ輩が画策してくるかもしれない。殿下のためにも、リリーの為にも、さっさと立場を明確にした方が良いと思うわ」


 善からぬ輩とは、主に私の両親なわけですが。

 時期的にも、二人の成長ぶりでも、今が一番相応しいと思う。

 殿下は頷くと、リリーの腰に手を当てて引き寄せた。


「ありがとう、アンナ殿。貴女の言葉で決心がついた。式典には是非貴女を招待したい所だが……」

「この地より見守らせて頂きます」

「また来ても良いか?」

「勿論です。いつでもご来訪をお待ちしております」


 にっこりと微笑んで、殿下とは握手を交わし、リリーには抱き着いた。

 柔らかい身体が気持ちいい。良い匂いもするし、殿下いいなー。


 明日の朝に出立する、ということで、皆、最後のパーティを心行くまで楽しんだ。

 私たちも小難しい話はやめて、無礼講の輪に加わる。

 私は全員と話して、アクティビティの感想を聞き取った。手ごたえバッチリである。

 そうして、翌朝に殿下たちご一行を見送ったのだった。



◇◇◇



 それから間もなくして立太子の礼が執り行われた。

 殿下は正式に王太子となり、その場でリリアンとの婚約も発表された。

 殿下の凛々しさとリリアンの愛らしさに国民は熱狂し、姿画は飛ぶように売れて経済効果は抜群だった。

 殿下の強さが騎士や冒険者から広がり、有言実行の殿下と、殿下を支えたリリアンの人気は爆発した。

 もう、どんな画策をしても覆らないだろう。

 殿下は強いし、全力でリリアンを守るだろうし、そんな殿下を騎士達や国民が守る。

 あー良かった。

 めでたしめでたしのハッピーエンドで良かった。

 弟子から報告を受けた私は心からほっとして、何かから解き放たれたような充足感を噛み締めた。



◇◇◇



 「師匠!」「先生!」「お嬢!」「姉御!」

 

 あちこちから掛けられる声に片手を上げて応えながら、私は領内を見回っていた。

 

 温泉郷の発展は目覚ましく、いつしか総合レジャーランドと言われるようになった。

 アクティビティは当初、楽しむためのレジャー用を用意していたが、騎士団や冒険者から相談を受け、訓練を目的としたものもラインナップに加わった。

 今では、訓練の団体予約がかなり先まで埋まっており、温泉郷の稼ぎ頭の一つを担っている。

 

 温泉で湯治客相手の治療院も開設した。勿論、リハビリテーション施設も併設している。長期療養にも対応すべく、治療院には宿泊施設も備えた。

 治療費を抑えるため、簡単な作業をリハビリとして行ったり、患者同士助け合って生活して貰っている。


 患者をサポートするスタッフには教育を施した。私は医者ではないが、前世の講義と今世の実地で、身体に対する講義はできる。

 すると、スタッフの医療知識の高さが噂になり、受講希望者が殺到してしまい、そのまま専門学校になってしまった。

 魔法が無く、魔獣相手に剣で戦うこの世界において、医療に対する需要は高い。

 ここを卒業できればくいっぱぐれることはないと、市井で大人気だそうだ。


 学校といえば、私の武道も学校になった。主に、冒険者養成校だ。

 現役冒険者、騎士や貴族の子息も、短期留学してくることがある。こちらは、相手が希望するコースを教え込む。

 貴族子息は主に護身術を、他は戦いの幅を広げる為に、興味のあるコースを選ぶことが多い。

 正直貴族とは関わりたくないのだが、色々と柵もあって、完全に突っぱねられないでいる。

 

 面倒なことに、貴族には、権力を嵩に着た世間知らずが一定数いる。

 事前に、受講生や患者は客じゃない。身分も一切考慮しない。こちらの意に沿えぬなら叩き出す。貴族の扱いを望むなら相応の場所に行くように。と伝えて念書まで書かせるのだが、世間知らずは理解ができないようだ。いや、常識が違うから仕方ないのか。

 念書、掲げた理念、当校のブランド力、ちらりと見える王家の威光、圧倒的武力。

 他にも様々な伝手を使ってトラブルを防いでいるが、規模が大きくなってくると、個別の対処も難しくなる。


「そろそろ辺境伯の爵位を受ける頃合かなぁ……」


 この国から、辺境伯の授与を打診されている。

 国の端、かつてスタンピードで壊滅した土地。

 人が消え、国から切り捨てられ、採取する冒険者のためにギルドが管理していた土地の権利を譲り受けて開発してきた。

 不毛の大地なら見向きもされないが、金と人を生む場所となった今、守るには権力が必要だ。

 弟子だけなら、何があっても自由に生きていけると思う。でも、そうじゃない人の方が多い。

 一度足を洗った貴族社会に入りなおすのは気が進まないけど、私には守る人たちがたくさん出来てしまったから。

 ここらで覚悟を決めないといけないかもしれない。


「え、お嬢! 辺境伯になるの!?」


 突然素っ頓狂な声が上がった。

 いつの間にか隣にいる、ラッキースケベ従者が驚いている。


「うーん、ここも規模が大きくなって()()()貴族が来るようになっちゃったし、この場所を守るなら権力はいるかなって」

「じゃ、じゃあ、お嬢が爵位を受ける前に俺と結婚してください!」


 突然プロポーズされて、目が丸くなる。


「突然なに言ってんのよ」

「だって、だって、お嬢と身分が違ったら一緒になれないじゃないですか! 今なら平民同士結婚できますよ!」


 初めて見る真剣な表情で、私の手を掬い取り、膝まづく。


「お嬢。拾ってくれた時から、ずっとずっと、お嬢の事が好きでした。お嬢の事だけ見てきました。愛してます。俺と結婚してください」

「無理」


 即答するが、こいつ、めげないんだよなー。


「お嬢、俺、尽くしますよ! ずっと一緒に居て、何でも願いを叶えて、大事にします! 俺、超優良物件ですよ!」

「ラッキースケベ野郎が?」

「お嬢限定に決まってるじゃないですか! お嬢の事何でも見たいし知りたいし、愛ですよ!」

「その愛はいらない」

「遠慮しちゃう奥ゆかしいお嬢も好き! 愛してる!」


 既にコント、平常運転になってきた。

 私の周りには、すっかり人だかりができている。


「ちょっと! 何抜け駆けしてんすか!」

「協定を破るとか、一番弟子の矜持は無いんですか!」

「しょーがねーだろ! お嬢が辺境伯になったら手が出なくなっちまう!」

「え────!! お嬢、貴族になるの!?」

「お嬢、貴族は嫌だって言ってたじゃん!」

「この場所をハイエナ貴族から守るために権力が必要だって……お嬢、健気すぎる……いい人すぎる……尊い……女神……」

「おじょおおおぉおおおおおお!!」

「煩い黙れ!!!」


 どんどん弟子が集まってきて、口々に叫び出して、阿鼻叫喚。

 カオスな状況を一掃するため、ドスを聞かせた声を響かせる。


「まだ、爵位を受けると決めたわけじゃない。でも、受けた方が良いとは思っている。お前たちはどうでもいいが、患者や生徒、この土地に移り住んでくれた人たちは守りたいからな」


 どうでもいいと言われた弟子たちは、誇らしげな顔をしている。


「俺たちはお嬢を守る存在ですからね!」

「そうさ。お嬢も、お嬢の大切なものも丸ごと守るぜ!」

「だから、一番近くでお嬢を守る権利が欲しい!!」

「トーナメントを開こうぜ! お嬢にプロポーズする権利をかけたトーナメント!!」

「お嬢の隣は、強くなくちゃ務まらねーからな! やろうぜ!!」


 勝手に盛り上がって、勝手にイベントが開催されるようだ。

 ま、プロポーズくらい聞いてあげよう。受けるかどうかは別問題だけどね。


 盛り上がっている集団を眺めていると、気配もなく私の隣に男が立った。

 あの日の顛末を伝えてくれた、一番弟子の兄の方だ。


「弟がすみません。お嬢を煩わせることはさせませんし、害も無さそうなので許して頂けますか」

「ん、いいよ。プロポーズくらい聞いてあげるし」


 聞くだけね。と暗に示してふふっと笑うと、彼も微笑んだ。


「では、私のプロポーズも聞いて頂けますか?」

「……お前もか」


 跪き、プロポーズ体制に入った所で、気付いた弟子たちから待ったがかかる。


「何やってんですかあぁあああ!」

「一番弟子兄弟! 自重しろ!!」

「抜け駆けすんなああっ!」

「ずるい! 次は俺がプロポーズする!!」

「俺も! 俺もする!!」

「バカっ横入すんな!」


 あっという間に列ができた。なんだこれ。

 取られていた手をするりと取返し、私は顎を上げて弟子たちに通達した。


「トーナメント優勝者には、二人きりで食事をする栄誉を与える。皆、励めよ。解散!」


 途端に、うおおぉと鬨の声が上がり、思い思いの場所に散っていく弟子たち。

 兄の方も「残念」と笑みを含んだ呟きを残して去って行った。


「お嬢、モテモテですねぇ」


 騒ぎに駆け付けてきた侍女たちが、含んだ笑みを浮かべてつついてくる。


「遊ばれてるのよ。私はただの神輿だもの」


 肩を竦める私を見て、侍女たちも肩を竦める。呆れた目を向けるのはやめて欲しい。

 でも、こんなバカ騒ぎをして、盛り上がって、笑える日々はたまらなく愛おしく幸せだ。

 願わくば、こんな日々がずっと続きますように。

 高く澄んだ青空を見上げて、私は心から願った。






これで終わりです。


正直、投稿するか迷いました。

でも、置いておけばいつまでも、ちみちみと弄ってしまう予想がついたので、さっさと手放すことにして一気投稿しました。

このお話は、一つのことに集中しすぎると、身に付いてないものはあっさりと失うんだな、ということを学んだ私のエビデンスですね(笑)

とはいえ後半は、好きに書き散らかしたので楽しかったですw


もうちょっとサクッと、頭の中を文章に変換できるよう訓練したら、途中で止まっているのに着手したいです。

今手を出すと、何か違くなりそうで。。。

のんびり活動していきますので、見かけたら読んで下さると嬉しいです!

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