9 ある日のこと
書けたらすぐ投稿するスタイルにしようかと思います。
今日は部活もオフでバイトのシフトが入っていてそれに加瀬と時間が被る日。
この間切ってもらった紙にワックスをなじませ、新しい服に身をまとい家を出た。ほんの些細な変化だが俺にとっては大きな変化だと思う。脱、普通!自信もつきその日の足取りはとても軽かった。
おかげで早くバイト先についてしまい加瀬と会うことはできなかった。まあ、働きだせばいやというほど顔を合わせるから問題はないだろう。服は見せれないけど。
実は、新しい服を着ていく子について結構悩んだ。もし、もし加瀬と遊びに行くことがあるとしたらその時まで取っておこうと考えたが、今の態度から考えたら夢のまた夢の話なので着ていくことにした。なんというか、敗北感......
そんなことを考えながらレジを打っていると「お疲れ様です」という凛とした声とともに加瀬が現れた。やべえ、めっちゃ緊張する......なんて言われるんだろう?まず気づくかな?いや、唯もあんなけ言ってたしそれはないか。
「あ、柏木くんお疲れ。髪、切ったのね。 前よりさっぱりしていいじゃない。」
うん。分かってたよー。そうだよね。この子なかなか表情変わんないんだよね。今度中川から心を読み取る奥義みたいなの教えてもらおう。
「あ、ありがとう。結構髪型変えたけど変じゃないよな?」
恐る恐る聞いてみると「そうね、大丈夫よ」とだけ返ってきた。よし。やっぱ心を読み取る奥義教えてもらおう。
そんなくだらないことを考えつつ俺たちは仕事へと戻った。
途中何回かレジを打ち間違えていたが......また疲れとかたまってるのだろうか?
お昼のピークを越し、2時くらいになると客足が落ち着いてくる。いつもこの時間帯にお昼にたまった洗い物をやったり、軽い掃除をしたりする。その時だった。
―――――あいつが来たのは
「いらっしゃいませー。1名様でよろしいですか?それではお席のほうにご案内させていただきます。」
一見普通の中年の男だ。だが、明らかに様子がおかしい。一番近くにいるのが俺だから俺しかわからないが、少々息遣いが荒く、目線が泳いでいる。まるで獲物を探すような目をしていた。それを俺は瞬時に読み取った。昔、両親たちは俺にいろいろ習い事をやらせた。何事も人並みにできてしまうから秀でたものを見つけたかったのだろう。もちろん、格闘技や武術もやった。だからか、俺はこの男は危険だと直感で判断した。
「こちら、メニューになります。お決まりになりましたらお呼びください。」
そういって一旦キッチンに下がる。食器をふきながら観察していると加瀬が向かいのテーブルにオーダーをとり行くためキッチンを出た時だった。
男の目が定まった。
まるで獲物を見つけたかのような目。
そして携帯を取り出した。一瞬だったが、写真ではなく録画画面が見えた。
ああ。痴漢だ。こんなしょうもないことする奴がまだいるのか。
俺はこんなこともあろうかと監視カメラの位置は把握済みだ。男は初めて来たのか、監視カメラにばっちり移っている位置に座っている。これなら証拠も確実に映るだろう。あとは言い逃れできないようにぎりぎりまで携帯を近づけさせるしかない。すまん、加瀬。耐えてくれ、、、、、!
そんなことを考えてるうちに男は興奮した顔で加瀬のスカートの近くまで携帯を近づけていた。あと少し……、あと少し、、、、、、、今だ!
俺はキッチンを飛び出し男のもとへ向かう。
「すみません、こんな向きに携帯のカメラを向けて何を撮ろうとしていたんですか?」
加瀬を背中に守るように立ち、カメラを持っていた男の手をつかむ。男はもちろんだが、加瀬は最初自分が何をされたのかわからないような顔をしていたが、男の携帯の画面に表示されている録画画面を見ると何をされようとしていたのか把握し、涙目になりながらスカートを抑えた。
「い、いや俺はただ……そ、そう!ブログにこの喫茶店のスイーツを投稿しようしようとしてたんだよ!ほら、俺結構人気あるし、店の評判も上がるよ!」
そういって男は自分がやってあるだろうブログを見せてきた。その時点で俺の怒りは頂点に達した。
「お客様。あちらに監視カメラがございます。あの位置だとお客様が何をされてたか、しようとしていたかすべて見ることができます。これでもまだブログがどうとか言い訳をしますか?」
「うっ…………」
決着はついた。キッチンから出てくるときにパートのおばちゃんに警察を呼んでおくように頼んだのでそろそろ来るだろう。…………噂をしていれば警察が来た。簡単な説明を監視カメラの映像を見せると、案の定男は連行された。ほんと、未遂でよかった。
「……あの、柏木君。」
おっと忘れていたわけじゃないけど男と警察の対応でいっぱいいっぱいだったな。今にも泣きそうな加瀬をほっといたのは素直に悪いと思ってる。うん。いや、マジでごめん……
「大丈夫だよ。動画も俺と警察の前で消してもらったし。心配かけて悪かったな。」
「ううん。最初は何が起きたのかよくわからなかったけれど、自分が何をされそうになったか分かったとたんに怖くなったの。本当、助けてくれてありがとう。」
あの、あの加瀬が優しく柔らかい笑顔を浮かべている。それだけで俺は天にも昇るような気持ちになった。
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いざという時に助けれる人ってやっぱ素敵ですよね。