7 加瀬成美視点
今回も長めです。
私、加瀬成美は昔から何でもできるパーフェクトな女の子だ。成績は学年トップ、バレー部でも個人なら全国レベルといってもいいほどの実力がある。顔も可愛く、よく男子から告白される。最近は「クールなところが素敵」といわれて女子からも告白されるようになった。
昔は才能と少しの努力だけでトップへ上り詰めることができたが、高校生にもなると社会が広がり努力することが多くなってきた。それに自分の中でもトップでなければならないというプライ
ドのようなものがあるため、必然と無理をして努力をしなければならなくなった。
ついに今日、その無理していた努力にボロが出た。
この喫茶店に彼――柏木くんが来たときは何とも思っていなかった。この間私に告白した人だくらいしか思っていなかった。そう、思っていなかった。
その日私はとても疲れていた。いつもなら余裕でこなせていた勉強も今日は半分までしかできなかった。原因は過労と寝不足。ここ最近結構シフトを入れているうえに勉強、家事などをやっている。それが積もりに積もったのだと思う。
今日のご飯は――帰ったら勉強と――などといろいろなことを考えながらお皿を運んでいた。その時彼はたしかカウンターを掃除していたかしら。ふいに私はつまずいてしまった。「あっ」という言葉が漏れると同時に地面が近くなる。手からお皿が離れる。これは後で叱られるでしょうね。そう思いながら私は目をつぶった。が、私の体はいつまでたっても地面に倒れることはなかった。
「っぶね。加瀬、大丈夫?」
そんな声とともに目を開けて視線を移すとさっきまでカウンターを掃除していた加瀬が私を抱きかかえていた。そんな単純なことだが私の中で何かが溶けるような感じがした。でもこの態勢は恥ずかしいわね。
「...ええ。ありがとうと言いたいところだけれど、その抱きかかえている手を放してくれないかしら?」
そういうと彼は悲しい顔と驚いたような顔をしてから「ごめん」といって手を離した。
私は彼のやさしさに気づいてしまった。
それから私たちは割ってしまった食器を片付け、店を閉めた。休憩室に戻ると、店長が一足先に戻っていたので事情を説明し謝罪した。その時柏木君も一緒に謝ってくれた。店長は「よくあることだし気にしないでね」といってくれたが悔しかった。もっと努力しなければ。
そういって店から出ると少し後に彼も出てくる。そういえば、ここのバイトのRINEグループに彼はまだいなかったわね...
「RINE。やってるでしょ?教えて。」
彼は驚いた顔をしていた。
「勘違いしないで。この喫茶店で働いている人が全員入っているグループがあるのよ。あなたまだ入ってないでしょ?」
...そんな露骨に残念そうな顔しないでよ。何かものすごく悪いことしちゃったみたいじゃない。とにかく、私たちは連絡先を好感し、彼をグループに入れた。
実は私の初めての男子の連絡先だったりする。
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