5 初出勤
冬休みに入り、面接までの4日間はあっという間だった。陸上部はもともとそんなに力を入れていないのでそんなにきつくはない。でもそんな部活で活躍している中川はやはり異常だ。あのハイスペック陽キャめ。
「君が柏木くんだね?成美ちゃんから話は聞いているよ。まあ、そんな緊張しなくてもいつ出れるかとかシフトを決めるだけだからね。」
ということで俺は今バイトの面接に来ていた。店長の北山さんは隣のクラスの北山奈々のお父さんということもあり、即採用とのことだ。ちなみに奈々は上川と同じ料理研究部で仲が良く、よく一緒にいるところを見る。
「いきなりですみません。よろしくおねがいします。」
といった感じでシフトを決めていった。俺は大体午前中部活があるので夕方から閉店までの遅番を担当することに。内容ははっきり喋れるとのことでホールになった。少し心配だがやるからには頑張ってみよう。
初出勤の日。俺は緊張しながらも駅前の喫茶店に来ていた。午前中は部活だったため多少の疲れはあるが気を引き締める。
「こ、こんにちはー」
面接のときに言われた休憩室に緊張しながら入る。パートのおばちゃんたちから「あれ?今日から?」「まあ、なかなかいい男じゃない」といろいろ言われたがそんなことよりも休憩室の椅子に座って休んでいる人物に目が行く。
「あれ、柏木隼人くん…だったかしら?」
なんとあの加瀬がいたのだ。まさかの同じバイト先だったとは。
…まてよ?これは加瀬に近づくチャンスなのでは?
「お、おう。今日からここでバイトすることになったんだ。よろしく。」
若干緊張しながらもなんとか会話をすることに成功。
――俺変な顔とかしてないよな?
「そう。これからよろしくね。」
あいかわらず顔色一つ変えず薄っぺらい言葉を並べる加瀬。もうさすがとしか言いようがないというか、、、まあ、俺に対し微塵も興味がないっていうことだけははっきり分かった。
その後俺はマニュアル通りに仕事をこなしていった。レジ、オーダー、片付けなどの作業を普通にこなしていた時だった。
「いらっしゃいませー。4名様で...って、唯?」
「あれ?おにい?」
なんかさわがしい集団だと思ったら妹の柏木唯とその集団だった。唯は中学3年で見ての通り人気が高い。他校にファンクラブができるほどに可愛く人気があり、頭もいい。俺に行くはずだったスペックがなぜか妹に行ってしまったらしい。もうちょい分けてくれてもよかったんだけどなー。
「おう、今日からここで働かせてもらってるんだ。」
「ふーん、おにいがバイトなんて、何か欲しいものでもあるの?」
まあ、普通はそう思うよな。欲しいのは加瀬彩花という女だ!とでも言ったらドン引きされるからやめておこう。
「まあ、いろいろあってな。冬休みも暇になりそうだったしちょうどよかったって感じかな。」
「そっか。頑張ってね。」
「おう。」と答えた後いくつか会話をしながら席へ案内する。仕事中だしな。
......まてよ?こいつ中学バレー部だったよな。よくうちの高校に練習に来てたし同じバレー部の加瀬のこと何か知ってるんじゃないか?よし、帰ったら聞いてみよう。そんなことを考えながら初出勤は何事もなく普通に終わった。
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