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二人の想いは

「………………」


 もしかしたら私は、とんでもないことを言ったのではないだろうか。


 正直私は昨日の出来事に関して、最後の方の記憶があまりない。


 寝ぼけていた、というのも勿論あるが、それ以上に私は安昼に好意と取れる発言と行動を取ったことが大きい。


「て……手を繋いで帰った……よな……?」


 自分の手のひらを改めて確認し、閉じては開いてを繰り返すが、それを証明するものは何もない。


「だが……記憶がないということは手を繋いで帰ったのだろう」


 繋いでいなければ記憶はあるに決まっている。何故ならそれはいつもと変わらぬ情景であるのだから。


 では何故そんなことをしたのか。


「安昼が私に好意があることは見ていれば何となく分かる」


 しかし私の態度が良くないせいで、安昼はいつも私に遠慮して微妙に距離を取ろうとする、いや近づこうとしても近づけないと言うべきか。


 故にあの二宮という女とその彼氏を目撃した時、安昼は曖昧な態度を示した。勘違いをされて私に迷惑をかけたくないと思ったから。


「だからこそ……私はそれを否定したいと思った」


 あれだけあれこれと私を中心に動き回る安昼が、きっと不本意に距離を置こうとすることに、私はそんな必要はないと伝えたかった。


 何せ最初からずっと私は安昼を――


「……それにしても、あの男は何処にいったのだ」


 お互いはっきりとした記憶がないのか、帰宅後もこれといった会話がなく、何なら普段どおりの時間を過ごしてしまっていた。


 何ならそれは今日になっても変わらず、今も安昼は用があると言って出掛けていってしまっている状態。


「大方紗希さんの所に行っているのだろうが」


寧ろそれ以外で安昼が向かう場所など、想像がつかない。


「まあ……不満がないといえば嘘になるが、その点において心配する必要はない、それより心配すべきは――」


 私は畳んでいた衣類の中から安昼のパンツを見つけ、それを広げて持ち上げる。


「私がここまでして知らぬフリでもしたら……タダではおかないからな」


       ○


楓夕ふゆに――好きと伝えようと思うのです」


「ほう? ライクか?」


「いいえラブです」


「そうか」


 俺はいつになく真面目な口調で言ったからか、雨夜先生は特に大袈裟な態度を取ることもなくごく普通な反応を見せる。


 因みに今いる場所は学校、休日も出勤など頭の下がる思いだが、先生的には『生徒がいない方が気楽』らしい、解せぬ。


「あまり驚かないんですね」


「まあ驚く要素がないというか……しかし湯朝がそう決意したということはデートを通して何か進展があったということだろ」


「はい――実は楓夕ふゆにアタックをし続けた結果かは分かりませんが、楓夕ふゆが『許嫁の自分を信じて欲しい』と言ってくれたんです」


「それは――如何にもあいつらしい返事だ」


 あくまで推測ではあるが――つまり楓夕ふゆは許嫁だから俺に付き合っているのではない、と言ったことになる。


正直そう言われた時、俺は楓夕ふゆとの距離が明確に縮まった気がした。


「しかもその手を繋いで家まで帰りました。控えめに言って――最高でした」


「そういう所は相変わらずだなお前……」


 ただまあ……俺もああいう経験は初めてだったので、極度に緊張しっぱなしで記憶が曖昧なのは否めないのだが……。


 あれ? そう思うと……告白なんてもっとヤバいんじゃないのか……?


「いかん、想像したら急に緊張してきた」


「まあ、タイミングとしてベストかどうかは分からないが……告白すること自体に問題はないだろ、だがどうやってする?」


「ううん……そこが悩みどころなんですよね……」


 そもそも告白ってどうすればいいのか分からないし、万が一楓夕に『そんなつもりで言った訳じゃない』とか言われたらそのまま死ねる自信すらある。


 はっきり言って距離が縮まっていてもビビっているのが本音である。


「夜景のレストランで――なんて年齢でもないしな」


「場所も大事ではあるのですが……それよりどう伝えるのがベストかなと」


「うん? そこは素直に自分の気持ちを伝えるだけだろ」


「気持ち……と言いましても、ただ好きだけでは駄目でしょう」


「いやー……恋愛なんて大した理由がある方が珍しいんだがな――だがそう思うのならどうして楓夕ふゆが好きになったのかを言うべきだな」


「理由を……?」


「可愛いからとか、幼馴染だからとか、許嫁だからではない、楓夕ふゆが好きな理由をしっかり伝えれば、ちゃんと帰ってくると思うぞ」


「…………」




 俺が楓夕ふゆを、好きになった理由は――

次回――

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