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第三者から見た二人

「ねえねえ湯朝くん、ちょっといい?」


 数学の授業が終わり、今日もまた何一つついて行けなかった事実に嘆息しながら次の移動教室の準備をしていると、一人の女子生徒が声を掛けてきた。


「ん――? ああ、二宮さん、どうしたの」


 彼女は端的に言うまでもなくクラスメイトであり、茶髪のミドルヘアにウェーブがかかった髪型が特徴的の、男子の中で一際可愛いと名高い女子。


 ――とは言うものの、今は彼氏がいるとかで男子諸君はショックを受けているらしいのだが、まあ俺には至極どうでもいい話ではある。


「あのさちょっと聞きたいことがあるんだけど――」


 そう言うと二宮さんはすっと顔を近づけ耳打ちをするような態勢になる。何だ……? 俺に聞きたいことなどあるとも思えないのだが。


「湯朝くんってさ――雨夜さんと付き合ってるの?」


「? いや付き合ってないけど」


「へ? 付き合ってないの!?」


 彼女としては最大限抑え込んだのだろうが、それなりに驚いた声を上げた彼女はハッとして口を抑えた。


「あ、ご、ごめん」


「いや別に気にしてはないけども……」


「って、いや、それマジなの? 一切そういう関係とかないの?」


「うん? うーん……」


 許嫁の話は人によってはややこしく可能性もあるから、あまり下手に口には出来ないしな……どう説明したらいいものだろうか。


 しかしわざわざあまり面識もないのにそんなことを訊くということは、俺の楓夕ふゆへの好意はバレているということか……。


 流石モテる女は察しがいいと言うべきかもしれない。


「まあその――実は前から彼女のことは気になってはいて……」


「まさかそれで通ると思って?」


「え?」


 決して嘘はついていないのだが、何故か二宮さんは俺を胡散臭いものでも見ているかのような目でジロリと見つめる。


「というかはっきりと言わせて貰うけど、結婚を前提にお付き合いしてるよね?」


「いやいや、結婚はしたいと思ってるけど、付き合ってはないって」


「は? え? ――…………はぁ?」


 何言っているんだこいつはと言わんばかりの表情から、それはまずいと思ったのか、彼女は再考するがやはり意味が分からなかったご様子。


 しかし俺は楓夕ふゆへの気持ちに嘘はつけないのでこう答えるしかない。


「えーと……じゃあつまり、仲はいいけど、湯朝くんは雨夜さんに好意があって、でもその想いは伝えられずにいると?」


「まあそういうことになるな、仲が良いのかはイマイチ分からんけど」


「あれで仲悪かったらこの世の人間関係に不信感覚えるよ」


「ええ……そうか……?」


 昔からの付き合いと仲が良いっていうのは比例するとは思えないのだが……第三者の視点から見るとそう見えるのだろうか。


「というか……何を悩んでるのかしらないけど、告白したら絶対いけると思うけどね、雨夜さん君のことしか見てないじゃん」


「えー……? いやーそんな単純な話ではないと思うけどな……」


 そもそもいけると思ってるならとっくの昔にいっているに決まっている、いけないから何とか楓夕ふゆに好意を持って貰おうと頑張っているのに。


 しかし……天下の二宮さんが言うならあながち間違ってもいないのだろうか、ならば案外教えを請うのもアリか――?


 と思っていたら、突如俺の右半身を黒いオーラがふわりとなで上げた。


「おい……貴様……」


 え? あれ? 楓夕ふゆさんなんか怒ってらっしゃる……?


「移動教室だというのに随分と呑気なものだな……」


「あ……悪い、すぐに準備を――って、あれ? おかしいな……」


「貴様が探しているのはこれではないですか」


 次の授業で使用する科学の教科書が見当たらず慌てて探していると、楓夕ふゆがこれ見よがしにその教科書を俺の前に掲げた。


「机の上に放り出されていましたよ、貴様が宿題をしているのは感心ですが、終わったらちゃんと鞄に戻す癖を付けておかないといけませんね」


「そういえば完全にやりっ放しだったのを忘れてたな……いつもありがとう楓夕ふゆ、マジに助かった」


「…………いやー……その……」


「全く……貴様は私がいなかったら完全に駄目人間に落ちぶれていましたね」


 そう言うと同時に、楓夕ふゆは一瞬だけ口角を上げて二宮さんを見たような気がしたが、すぐに何事も無かったかのように俺の方へと向き直る。


「いやはや、ぐうの音も出ないな」


「まあ、私からすれば当たり前のことをしたまでの話だが――常人では少し難しいかもしれませんね。さて、もう授業が始まります」


「え、ああそうだな、二宮さんごめん、じゃあまた今度」


「…………あ、はい」


 ふむ……やはり何処からどう見てもいつも通りの楓夕ふゆでしかないな、これで告白した方がいいなどやはりリスクしかないと思うのだが……二宮さんには一体何が見えているのだろうか。


 ただ――楓夕ふゆは怒っているように見えたのに、耳が赤くなっていなかったのは何だったんだろうか。




「いや……両想いじゃなかったらどう説明すればいいのこれ」

二宮さんはあくまで第三者視点としての登場なのでヒロインではないです。

今後出る可能性はありますが。

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