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3話 夜と、朝の目覚め

「光よ我が行くべき道を示せ【ファーナ】」


 少しだけ手に魔力を流すと光の玉が現れた。そして、私を誘うようにフヨフヨと暗闇を進んでゆく。行くべき道、つまり寮の場所を示してくれるのだ。

  門をくぐったら意外と暗かったので明かりに光の魔法を使った。 


 【ファーナ】が鍵となる呪文で、それだけ唱えるとただの光の玉が出てくる。 

 私は、寮の場所が知りたかったのでその光の玉に命令を付け加えたのだ。

 

 寮は、門のすぐそばにあったらしい。 

 いくらも歩かないで、それらしき建物の前で玉は止まった。 


 扉を開けると、中には光が溢れていた。

 そして、魔法で出した光は消えてしまった。建物の中の光に負けたのだ。もっと魔力を込めたら消えはしないが、あくまで目的は夜道を照らし寮の場所を知ること。それ以上は必要ない。


 お母さんは、必要な魔力を流す量を見極めることも大切だと教えてくれた。


「やあ。こんばんは、新入生だね部屋はもう用意しているよ。お前さん名前と科はなんさね?」


 扉を開けてすぐ、寮母さんにそう聞かれる。優しいほんわりとした雰囲気を纏っている。そして、会話のペースが寮母さんに乗せられている。


「こんばんは、リル・ライラント、魔法科です」


「そうかい。ええと…確かこのへんだったはず…」


 しばらく、鍵の並べられた棚を見ていたが少し経って鍵を手に戻って来る。


「あった!あったよ。ほれ、これが鍵さね。4107号室、4階さね。ちなみに先輩と同じ部屋、ふたり部屋さね。んっ!リル、お前さん重そうな荷物持ってるさねー。ここまで大変だっただろう。そうさね、今日は特別やよ。【テーシ】彼の者をあるべき場所へ」


そう言われて呆けていたら、急に景色がグニャリと歪んだ。あ、この魔法転移だ。と、気づいた時にはもう鍵に彫られた番号と同じ番号の部屋の前に立っていた。



•  • • • • •




 っと、言うわけでマイルーム(となる場所)へやってきました。


 珍しいな。転移を使える人はあまりいないらしいのに。私は、つい最近使えるようになったけれど苦労した。

 しかし、確かあの魔法って物の移動につかう魔法だったような気がする。


 まぁ、いいか……。



  ズズッ

 鍵をさしてから気づいた。


 確か、寮母さんに先輩と同室だって言われたわよね。ノックすべきかしら?無言で入ったら非常識だよね。

 でも、もうこんな時間だし起こしてしまったら逆に失礼だよね。疲れていて眠っているかもだし。


 よし、静かに入ろう!

 挨拶は小さめに。


「お邪魔します」


 木目を基調とした落ち着いた部屋。

  中は灯りがついていたが、とても静かだった。

 突き当たりには大きめの窓があって、左右対称に机、ベッド、棚、クローゼットがある。棚になにも入っていないから、私は左かな。


 チラッと見ると先輩はいたが寝ているようだったので、荷物を机の上に置いてそのままベッドへ潜り込む。

 先輩が寝ているし、片付けをする物音で起きてしまったらいけない。

 とりあえず、明日に備えて早く寝ておいたほうが懸命だろう。


「ヴァル、おいで一緒に寝よう」


 電灯を消してうす暗くなった部屋のベッドで小声でヴァルに話しかける。

 だがヴァルは少しだけ顔を歪めて言った。


「私は床でも大丈夫です、ゆったりとお休みください。リル様、私は獣の姿をしているかもしれませんがこれでも一応、雄なのですよ。異性ですよ」


「そうは言っても、獣は獣でしょう?私は、自分の使い魔を固い床で寝かせるほど意地悪じゃないわ。身体を痛めるし、今日はたくさん走らせてしまったし」


 それでも、動きそうにない。

 うーん、心の距離を感じるわね。

 口調も堅いし、甘えるという行為を知らないのかしら。


 仕方ないか、主としての特権を使わせてもらおう。このまま寝たら、寝覚めが悪くなりそうだもの。


「命令よ、私の隣で寝なさい」


「………御意、分かりましたよリル様」


 長めの間があり、しぶしぶといった感じで布団に入ってくる。わー、ヴァル暖かい〜。

 そんなこんなで私たちが布団に入ってしばらく。 

 暖かいなあ、これ冬になったら良い湯たんぽになるな、とか考えていたころ、ヴァルは私に話しかけてきた。


「リル様、伺ってもよろしいでしょうか?」

「ん?」

「リル様は、飛べないのですか?」


 あー、やっぱりそれ気になるよね。うんうん。

 私も立場が逆だったら聞くと思うな。普通の魔女は飛ぶものだし、魔女といえば箒で飛ぶものだし。


「す、すいません。聞かれたくないこともありますよね」

「あの、ね。うん、そうよ。私飛べないのよ」


  私は、昔話をすることに決めた。

 簡単にだけど。

 

 あれは魔法の修行を始めた日の3歳の時。

 一番初めに魔法使い見習いの初魔法として【飛行】の魔法を使った。最も簡単で使いやすい魔法だから。

 その時は、1回目はうまくいって自分の身長くらい飛べた。身体が浮く感覚に興奮して喜んだのをよく覚えている。

 でも、もっと高度をあげようとしたらどういう訳か体が急に強張って魔力を込められなくなってしまった。あの時、手が震えて指先は感覚がなくなった。

 なんだか、来るな来てはいけないって誰かに言われた気がすると分かったのだ。そうか、行ってはならないのだって。

 そして箒と共に屋根くらいの高さから地に落ちた。

 あれから幾度試しても、自分で魔力を断ち切ってしまっているのか、不可抗力で止められているのかは謎で、もちろん飛ぶことなんて出来ない。

 あの日からは、何度やっても駄目だった。

 頑張ろうとしても、箒に跨ること自体が怖くなってしまって。

 それまでは光の賢者様と同じ色だって里のみんなにも期待されていたのに、私もそれが誉れだったのに、みんな私を空に拒まれて空から落ちる、落ちこぼれって言われるようになった。

 村の人たちは陰口を言ったり、私をあからさまに避けるようになった。

 それが悔しくて悔しくて見返してやろうっていくら修行して他の魔法をいくつも使えるように練習した。

 それでも、風の上級魔法を使えるようになっても【飛行】だけは出来なかった………。

 

「……………」


「はいっ!これでおしまい。」


 話は端的にかつ概要が伝わるように語った。長いと聞きにくいからというのもあるが、話すとことのほか詳しく詳細のヴィジョンが見えてしまう。そして、見えるものの中に良いものなど何一つない。

話終わったというのにヴァルは何も話してくれない。ひたすら沈黙……。


 もしかしてねてる!?

 酷くない?自分から聞いておいて。

 でも、今日は走っもらったから疲れたのかもしれない。そっとしておこう。


「人は、残酷ですね。勝手に期待して、勝手に落胆して」


 少し間が空いてヴァルは急に話しかけてきた。


「そんなものよ。みんな、自分の好きなように解釈するの。そんなら、最初から期待なんかしないで欲しい」


「ありがとうございました。辛いことを聞いてしまいましたね」


「ううん、いいの。私が飛べないという事実はかわらないから。それに、他の魔法は並以上に使えるし……あっ、そうだ。使い魔って、命令には従うのよね?」


「はい、そうですよ。そういう契約ですので」


 いいことを聞いたわ。その言葉忘れないでね。

 特権は使うためにあるものよ。


「ふーん。でも、それっておかしくない?契約は対等なものなんでしょう?」


「そうは言われましても、服従は別物と考えられています。昔からですので」


「そう、でも大昔なんて無関係。私たちは対等、いいえ。むしろあなたの方が格上だと思うわ。さっきの走りだって凄かったし。ヴァル、あなたにかしこまられたらなんだかやりにくいわ。そうだ、私のことはただリルと呼びなさい。敬語も禁止、そもそもあなたそれが常用語ではないのでしょう?呼び出してすぐのとき、俺って言い間違えそうになっていたものね。」 


「………御意」 


 ヴァルは何が解せないというふうに、私の言った言葉に同意した。


「それからね、もう、なんでも同意するのやめて。自分の意志で決めて」


「………………ああ、リル。わかった」


「ありがとう。……おやすみ、ヴァル」


「ああ、おやすみ。これだけは覚えておけ、俺はいつでもリルの味方だ。たとえ【飛行】が出来なくても俺がどこへでも連れて行ってやるし、文句を言う輩には仕返しをしてやるから……」


 その言葉を最後に私は眠りという深い闇へひきこまれた。 



• • • • • ・

 


朝日が顔に当たって目が覚めた。

 まだ寝ているヴァルを起こさないように、ベッドから降りて、荷物から制服だけを取り出した。

 制服はいたってシンプルだ。黒のワンピースに紺のローブ。服の裾などところどころに、刺繍がしてある。あまり華美ではない。実習で動きやすいようにらしい。


「まあ、よく似合っているわ」


 ちょうどその時、洗面台にいたらしい先輩が戻ってきた。昨日は寝ていたし、今日は目が覚めたら洗面台にいたので先輩と話すのは、これが初めてだ。


「おはようございます。はじめまして」


「おはよう。いろいろ話したいけれど、ごめんなさい。私、もう行かないといけないの。準備がねあるねよ。自己紹介はまた今夜しましょう」


  そう言って先輩は、若草色の髪を翻し部屋の外へとかけて行った。明るい人だな。

 少し、新生活が楽しみだ。

 ワクワクする気分で私はヴァルを起こして、王都魔法術学校の立派な校舎へ向かうのだった。










 

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