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28話 天能と王都の城6

更新が遅くなり申し訳ありません。

それなのに読んで下さりありがとうございます。

感謝します!!

天能の能力トップを決める大会。

この国中にある魔法学校のなかで【療】を持つ者が集まる場所。

結構な人数が、豪華な大広間に集められたのだけれど……。

一次大会は想像よりもすぐに、簡単に終わってしまった。何を見定めるための一次大会か。限りなく謎だった。

待合室、広間には退屈しないためにかお菓子やデザートがたくさんおいてあった。

ケーキ、パイ、マカロン………。どれも美味しそうっ!!

が、私はほとんど待ち時間がなくすぐに呼び出され、会場に置いてあったお菓子にありつくことは出来なかった。

うぅ~っ、悔しい!!

お菓子が私を呼んでいたのに……。

そして前の人がしたように個室に入らされた。

きっとあの短い時間で何かしらの裁定が行われたのだろう。


私が会場、いや個室、小さな部屋で何をしたのか。

いたって単純。

小刀で切りつけた小さな傷を治しただけ。小指ほどの大きさすらない。

天能の威力を測るために自ら傷をつけているのはいただけないけど……。

傷は昨日治した先生の傷よりも、オリエンテーションで力加減を間違えて切りすぎた私の傷よりも浅く小さなもの。

あれくらいなら、魔法を使って治した方が確実だ。

こんな簡単に直せるものを………。

あれくらい瞬きする間なくできるし、体力も残ってるし、無駄に緊張しただけで体力的にはまだまだ元気だ。

きっと強さを確かめるものではないのよね。あんなに楽だったのだもの。他の人達も同じ疑問を持っているに違いないわ。

ふふ、安心ね。きっとメリッサも私も一次は通過できるわ!!

そしてまるで面接のような第一大会も終わり、二次大会のある明日まで突如フリーとなった。

二次大会も天能使って治癒させるだけだし、今足掻いたところで結果は変わらないだろう。天能で必要なのは魔力ではなく体力。体力をつけるために動き回って疲れてしまっては本末転倒だ。

だから特にこれといってやることもない。あとは自分の力次第。

さて、これから何をしよう?









午後の時間がまるっとあまったので散歩をしてみようということになった。なにせ第一学校だ。

敷地は十分すぎるほどにある。

この無駄金はたいて作られた学校を探検してやろうじゃない!!

まずは広い庭から。

でも、一人は嫌だわ。ということで、


「ヴァルっ!出てきて、一緒に歩こう!!」


呼ばれて影からスッと音もなく現れる。


「あ~、よく寝たよく寝た」


どうやら私が緊張して大会に臨んでいる間のんきに睡眠をとっていたらしい。


「なんかおじさんにみたいね。ヴァルはよく寝るし……」


「まあ、間違いではないな。齢なんて百過ぎてるし、むしろじいさんだな………。というわけでご老体なのだ。いたわれよ」


自虐してる割に、まだ十代の私よりも元気そうなのは悔しい。

足取りも軽そうだし。

まあ、いい。とりあえず歩こう。


「というか、百歳超えてるって冗談だと思ってた。召喚したときも年齢聞いたけど、聞き間違えかなって思ってたし」


「冗談ではなくリアルだ。天狼は魔法使いと同じで長生きなんだ。だが、最近までずっと寝てたからな」


「えっ……」


ずっとってどのくらいかしら。

私の尺度で考えてもいいのか、百歳の基準か……。 


「産まれてからほとんどな。何も、したいと思えることが無かったから」


ヴァル?

声をかけたかったけど、何かが私を止めた。

うつむき加減になったその背中は何かを抱えているといった風だ。


「たまに俺を呼び出す奴はいた。だが、俺が仕えたくなるような人間はいない。どいつもこいつも弱いから守って欲しいと願うのばかり。芯の強い人はいなかった。そんで俗に言うふて寝ってのをしてたんだが」


そこで顔を上げ私を見る。

狼なんだし表情なんてわかるはずないのに、その顔はニッと笑っているように見えて……。


「何十年かぶりにお前が俺を呼んだんだ。そんでわかったよ。お前こそ俺の仕えるべき魔法使いだって」


自信満々に私を見てくるが反対に私は首をかしげる。

私だって、ヴァルを呼び出した人たちとなんら変わらないと思う。

私は弱いわ。空も飛べないそれなのに……。


「私で、良かったの?」


「あぁ!なんで自信なさげか知らないけど、この世にお前ほど強い奴は滅多にいない。魔力だけの話じゃなくて、中身もな」


「ヴァルぅ、大好き」


嬉しい……。

ストレートな認める言葉。里にいたときはあまり貰えなかった。

あまりに感極まって、銀の毛並みをワシャワシャ撫でる。嫌がる気配は感じなかったので、これチャンスとばかりに顔を埋めてモフッてしまった。

気持ちいい~。

あぁこれはもう、冬場の毛布に使うので決定だわ。

布団のなかでしたときは迷惑そうにしているのに今はなぜかおとなしい。


「安心しろ。お前の背中は俺が必ず守る」


「へ?急に大袈裟ね」


背中を守るだなんて………。

今は戦争中でもないし、学生の私は命を狙われることもないだろうし。

オリエンテーションの時ユールに天狼はすごい生き物だ的なことを言われて、その後の休みの日に図書館で天狼について調べてみた。

自分の使い魔のことなのにあまりに知らなすぎたから。

天狼とは戦うのに特化した種族らしい。高尚でかつ自分の認めた者以外には従わず、無理に調伏しようとすればその者を殺める。

千年前に光の賢者の使い魔として存在し、その後も稀に目撃されたが使い魔の契約を結ぶことはなく、数自体も限りなく減少している。 戦うことが減ったから との説がある。

ヴァルは本能的に私を守ろうとしてくれている。

でも……。


「もう、戦わなくてもいいのよ。あなたの思うより世界はずっと平和なの。だけど、ありがとう。後ろを守ってもらえるのは とても安心だわ。だから、 私はあなたの後ろを守るわね」


いつ危険な目に遭うのかも知れずずっと気を張るのは疲れる。

大丈夫だと伝えようとしたけど、ヴァルの気持ちを無下にも出来ない。

なら、守って貰う変わりに私も守ろう。

お返しだ。

ヴァルは狼狽えてから、笑った。人間と表情筋が違っていても今のは確実に笑っていた。

私の元に来てくれるだけでありがたかったのに、こんなに優しい子が来てくれるなんてっ!

言い伝えも図書室の本も間違っているのでは?

だってこんな優しいヴァルと同じ種族の生き物が人を殺すわけないもの!!







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