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2話 いざ、王都魔法術学校へ

 ヴァルは私の言葉を聞いた後その場で頭を下げた

(実際には、犬の姿なのでよく分からないが人の行動で表すと多分そんな感じ)

 

「俺、いや、私は風の属性で種族は天狼。齢は、確か…120くらいだったか。リル様は、魔力が高いですね。そして、彼の賢者様に似ておられる。よし、リル様、あなたを私の主と認めます」


 実のところ、使い魔は呼び出して名を与えるだけでは契約の成立にはならない。双方が受け入れ認めることで、やっと成り立つのだ。


 契約が結べて良かったが、さっきヴァルが話した内容が嬉しいような、驚いたような聞き返しそうになる内容だった。

 嬉しいのは、私を主と認めてくれたこと。正直、呼び出した獣が私を認めないと言ったらどうしようと心配していたのだ。

 それから、驚いたことはヴァルが120歳だと言ったこと。

 聞き間違いかな?

 私は今まで魔法の練習ばかりしてきたので、ヴァルの種族のことはよくわからないが、見た感じ強そうだ。普通は、100歳が寿命のはずだがそれを超えていると言うことは、やはり強いのか。 


 うーん。もしかしてヴァル言い間違えた?

 聞き返すのも失礼だし、まあ様子見してから判断しよう。 

 

「良かったわねリル。相棒ができて。これからの学校生活、仲良く二人?一人と一匹?で頑張ってね。学校生活は、2年だけど使い魔と主は一生隣り合って歩くもの。とても素晴らしいわ」 

「ニャーアー」


 お母さんの使い魔、ニアがないた。


 黒猫の使い魔で、ずっとお母さんのそばにいる。

 寝るときはお腹の上だし、洗い物をしている時は足元でまるくなってねている。お互いに信頼しているのだろう。ニアは自分から離れようとはしない。


「ねえ、ヴァル。リルのことを守ってあげてね」

「はい。分かっていますよ。主を守らない使い魔はいませんから。それに、私のように使い魔は寿命を人間と繋ぎます。それは、主を失うと己も死に繋がるということですから」


 使い魔は契約することで人間に引っ張られる形で長生きできる。だから、主が死に契約が切れることで引っ張られて死んでしまうのだ。ある意味で、大きな賭け。ゆえに、使い魔は主を守るのだそうだ。


「リル、そろそろ行かないと。間に合わなくなるぞ。それから、使い魔召喚おめでとう」


 お父さんは、普段寡黙であまり会話をしない。

 その分、おめでとうに暖かさが込められていることも15年一緒に過ごせばそれくらいわかる。


 そう、本当にそろそろ行かないとマズイ。

 入学式は、明日の朝から。

 【飛行】の魔法が使えないので自力で走って行くことになるのだが。頑張って走っても夜明けくらいになってしまう。少なくとも、1時間は休みたい。だつて、入学早々疲れた顔で2年間共に過ごす人に最初から疲れた顔なんて見せたくないわ。


 だから、もう行かないと。名残惜しいけど。


「ヴァル、あのね明日学校の入学式なの。かなり離れているから今から走るわ。だから呼び出しといていきなり悪いけど、走って」


 私は部屋の片隅に置いてあった大きな鞄を持って家の外へ出る扉にち手をかけた。

 お、重い!

 教材はともかく、こんなに着替えいったかな?

 けど、もう荷物を整理するような時間はない。しかたがない…


「お母さん、お父さん。行ってきます。魔法頑張って練習して、強くなってみせます」


「ああ、気を付けて。無理はしないように」


「体には気を付けるのよ。寮で先輩と同室になったら失礼のないようにね」


 一度振り返って手を振ると、今度は前だけを見て扉を出て走りだし、15年過ごした華月の里を後にした。ちょうどそのとき陽が夕日に変わるのだった。

 


• • • • • •

 


 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。

 重いし!この荷物なんなのよ。

 昨日の自分に文句を言ってやりたい。絶対にそんなに荷物いらない。


 目の前には先が見えないほど長い道がある。

 一度、下見であるいてみたことがあるけどまだまだ先は長い。これは、1時間休憩とか言う前に遅刻すそうだわ。


 私は、ひたすら走った。手と足と呼吸を意識して。

 ヴァルも横を走っている。 

 その毛並みの綺麗なことといったら…、じゃない、今は見惚れている暇なんてないわ。

 

「あの」


「なに?ごめんけど、今忙しいのよ」


「なぜ、空を飛ばないのですか?魔法を使えるなら、飛べるでしょう?直線距離で行った方が楽でしょう」


「………」


 まあ、普通は不思議に思うでしょうね。

 急ぐなら、走るより箒で飛んだ方が楽だし、効率的だ。それをしないことは魔女を見る人にとって奇怪でしかない。


 でも、使い魔はこれからずっと一緒にいる存在だ。隠しても無駄よね。 


「飛ばない、じゃなくて飛べないの。…使えないの、【飛行】が」


「……」

 

 ヴァルは幻滅したかな。

 飛べないなんて、魔女としてあんまりよくないよね。初級魔法も使えないなんて。


「リル様、失礼します」


 あぁ、なんか疲れてきたな。走りながら話したからかな?

 てか、なんかヴァル謝ってる?違うな、ん?失礼しますってどういう、 

  

  ドカッ


 私の思考は遮られた。 

 何かが私にあたったのだ。そして体が宙に浮く。

 あっ、待って。これ落ちたら痛いやつだ。 


 そう思って目を閉じたが、なんの衝撃もないまま時間が経った。いや、小さな衝撃はあった。ただ、予想とは、全然違うクッションにあたったかのような。  


 ?、どうなったの。

 目を開けるとものすごい速さで景色が動いていた。 


 床は、銀色の毛が生えていて、……いや、違う。この毛、ヴァルのだ!


「ヴァル!?」


「はい、リル様。この方が速く目的地まで行けるでしよう?急に、あのような行動をしてしまい申し訳ありませんでした。ですが、とまる気配がなかったのでつい」


「いや、申し訳ないとか謝って欲しいとかじゃなくて、あの…重い、でしょう?私、まだ頑張れば走れるよ。だから、」


「いえ、むしろ軽いですよ。足には自信がありますし、あのまま走るより早く着きます。リル様、しっかり掴まっていて下さい。私の心配は無用です」


「ありがとう、ヴァル」


 確かに、速かった。

 以前、王宮騎士の馬を見たことがある。王宮騎士の馬は、走ることに特化して訓練されているらしく。この国では、一番速い乗り物だ。

 でも、ヴァルの速度はその倍くらいあるのではないかな? 


 今見えた建物も瞬きの間に遥か後ろへ流れて行った。

 それなのに強風どころかわずかな風すらない。

 風の上級魔法を覚えると使かえられる魔法だったはず。つまり、私が風で吹き飛ばされないようにしてくれているのか。


 ヴァルは足に自信があるといったが本当だった。

最初は、私に気をつかってのことかと思っていたが、そうではなかったらしい。 


 ヴァルのおかげで、夕方に家を出た私たちはなんと9時くらいに、王都魔法術学校につくことができたのだった。 

 

 王都魔法術学校。

 そこは、魔力の有無に関わらず魔法か魔術のことを、魔法に関することを学べる学校。

 ちなみに私は魔法が使えるので魔法科を選択した。


 これからここで、2年間過ごす。

 どんなことが、知れるのだろう?

 どんなことを、学べるのだろう?

 どんな人と、巡り合えるのだろう


 期待に胸を高鳴らせ、その大きな門をくぐるのだった。





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