27話 天能と王都の城5
かなりお久しぶりです。
遅くなりごめんなさい。
そして、こんなに時間が空いたにも関わらず読んで下さりありがとうございます。
先生は元ゴキを掴む。素手で拾い上げた物体を、開けた窓からポイ。えっ、掴んだ?棒に乗せたりしないの?
まあ炭化してる物体なんだけど。元々はゴキなんだけど。
本人は全く気にした様子がない。
「なら、これくらいの傷は治せるか」
私の目の前に出してきたのは腕。火傷らしき跡が腕全体に広がっている。できてすぐのなのか傷が赤を主張している。こんな傷、長いローブで隠れていたから見えなかった。
烏がじっとそれを見つめているけど、何を考えているのか……
本人は苦痛な表情ひとつ出さないけど、これは絶対に痛いやつだわ。
顔を上げると先生と視線が交錯する。自らを実験体に私の天能を試そうってことなのね。
でもそんなことよりも傷が気になる。治したいと、自分の中で何かが言う。
「……これは、どうしてこんなことに?」
もし、私の回復効果を推し量るためなら単に、この間の呪文を使えばいいのでしょう。選定で判明し、酔い止めに使える便利な呪文を。
この時どういう訳か、怪我の理由も聞いた方がいいと感じた。
何故出来たのか。何故この傷を負ったのか。
先生は気まずそうにしていたが、僅かに躊躇っただけですぐに話した。
「とある魔法が失敗に終わった。夢に見た、存在しない魔法を使おうとしたのだが、制御出来ず暴走し、結界を貼る前に自分自身の術に焼かれた……」
なるほど。躊躇う訳ね。
魔法を教える人がそれを扱いきれずに暴走させたとなれば、体裁が悪い。出来れば生徒たる私に知られたくない、と。
未知の魔法なら仕方のないことだろうし、まして挑戦しようとするのは凄いことだ。
恥じるだなんて謙虚だなぁ。
そして日常でする怪我より魔法でできた傷は治りにくい。更に普及していない、新たに生まれようとした魔法ときた。
本気で自らの身体を持って力を試すつもりなのだわ。
大きく、しかも治りにくい類の怪我。
痛々しく……実際に痛いであろうに先生は表情一つ満たさない。どれほど表情に出ない人でもこれは………。
傷に……慣れてしまっているのだろうか。
それは、寂しいことの気がする。
治癒は難しいだろうに私は出来る気しかしない。あの日使った治癒の神力と名付けられた天能なら絶対出来る。
赤い傷口に両手をそっとかざした。
「痛みを忘れた怪我人。されど時を戻す。我の願いを応諾し傷を治せ、癒せ。【ルイース】」
初めて使った日。
自分に向けてした。だから見えなかった。
放った天能が柔らかな春日のように淡く光り、暖くなる事を。
赤を包みこみ、それを薄くし、消し去った。あっと言うまで呆気に取られてしまう。
自画自賛するのは好きではないし、過大評価するつもりはないがこれは、これは……………。
「綺麗だな」
その声は私のものでなく、先生から発されたものだった。
何を思っているかは、単調な声すぎて不明だ。
「前世でいた。とても似た力を利用し、戦った人を……」
今のは怪我や不調を治す術。
それが、どうすれば戦うことに繋がるのだろう?
前世……。
「もしかして………」
記憶者ですか?
しかし、寸前で喉元まできたそれを飲む。
有名な話だ。
懐かしい記憶や思い出が、必ずしもいいものと限らない。
そしていいもの確信ないのに尋ねるのは間違えている。
どちらにしても過去に囚われて、今を生きて、楽しい人などほとんどいないのだから。
さっきの先生の言葉は、私に向けたものと言うより、独りごとに近い気がした。
「どうですか?明日は周りの生徒に劣ることがないでしょうか?」
………。
間があり返事が返ってくる。
「ああ。予想以上の力だ。劣るなどないだろう。だから、学校の集会で見せた時の意欲を見失うことなく、見せつけてやればいい。第五学校は田舎者の溜まり場と揶揄されているそうだからな」
な、何ですって!?
田舎で悪かったわね!!
でも、家があるところよりよっぽど都会だし、貴族みたいにドロドロした粘着気質の人も少なくのよ。(あっ、メリッサとユールは模範的な貴族だけど……)
と、やる気を燃やす自分。
敵は貴族、目指すは優勝!!
で来るかなんて分からない。だけど、目標を高くするのは悪くないことだし、初めっから決めつけて可能性を縮めるのはダメだ。
当たって砕けろ、よ!!
「にしてもすごいわね。天能って酔い止め以外に活用できたのね!!」
「酔い止めがどうかしたのか?」
独りごとが聞こえてしまったようだ。
マズイ、誤魔化さねば。
「い、いえ……。なんでもありません」
危ない、危ない。
あやうく校則違反がバレるところだったわ。怒られるのは面倒だもの。
第十七条、校内の廊下及び教室において走ることを固く禁じる。
あの日、後から生徒手帳を読んで冷や汗をかいたものだ。きっと、ヴァルに乗って廊下を爆走することは、もうない。
とりあえず、違反は違反。隠し通しておくに越したことはない。
その後、私たちは片方ずつ分かれて屋根部屋に入った。
予定通り前日の夜についたが、あと少しで日を跨ぐ。
明日に備えて体力つけとこう、と横になるとすぐに寝てしまったのだった。




