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14話 オリエンテーション4(レッツ、火起こし!)

「まずは火を起こすわ。ねぇヴァル、どうやろうかな?」


「知らん。勝手にしろ、ここは森の近くだ。やりようはいくらでもあるだろう」


 日陰になった場所へゴロン。そっぽを向いてしまう。

 冷たっ!

 さっきまでほんのちょっと優しいなとか思ってたけど。課題くらい自分でやれ、とそういうことね。我、関与せずと顔に書いてある。

 でもさ、助言とか、せめてみていてくれてもよくないかな?


 もう膝をついて寝ようとしているし。

 いいわ。一人で考えてやる。

 貰ったばかりのローブを翻して立ち上がった。裾には細やかな刺繍が施されている。とても良い素材で作られているのだろうけれど。

 田舎に長らく住んでいたわたしとしてはこのローブがいくらしたのか気がかりだ。汚さないようにしよう。


 それにしても暑いわ。

 何せ制服との二枚重ねになっているのだもの。課題が終わったら学校では制服は部屋に置いておこう。


 まだ新品でお蔵入りするのは惜しいけれど、道具は機能が高い方を使った方が何かと役に立つ。その効能が使い道が、一見学校生活に不必要なものだとしても。


 あっ、冬は二枚着たら暖かいかも。

 今は仕方ないので二枚とも着ておくことにしよう。


 さて課題だ。

 火を起こせば良いだけ、それだけなら簡単だ。

 だけど、サキシアス先生は条件を提示してきた。この丘から出てはいけないことを。


 この条件により簡単は難解と変換される。

 どういうことか、説明すると丘には中央に巨木と、それから草原しかない。燃やせるもの、つまるところ木が生えていないのだ。

 使いやすく加工しやすい木は森に、範囲外にある。丘内にあるのはさっきまで先生が持たれていた大きなのみ。


 この木、【風剣】を使うわけにはいかないよね。ある程度の物、ことにこれくらいの気ならあまり魔力を使わずとも切れそうだが……。あいにく木を伐採するための技術を持つ合わせていない。


 ヴァルが今まで寝ているふりをしていたくせにこちらを睨んできた。ものすごい圧力をかけてくる。私が考え、実行しようとしていることを読むとられたように。


 もちろん、そんなこと本気でしようなんて考えでもいないわよ。ヴァル、あなたは一体なにを疑っているというのかしら?


 私はただ、そこの大きな木と向かいあって考え事をしていただけよ。

 そんなに人のやることにケチをつけたいならあなたも手伝ってくれてもよくないかしら?


 これを倒したら薪が一晩過ごせるくらい作れるだろう。

 この木くらい薪にできるだろう。

 だが、下手すると自分の方に木が倒れてくるかもしれない。

 そうすると、私はこの下敷きに……。

 う、それは嫌だ。いかにも痛そうだ。

 私だって分はわきまえている。だから、仕方ないがこの木を諦めないと。


 方向性を考え直そう。

 他に燃やす物は丘の外の木と、丈の短い草か。

 どちらも現実的に可能性がない。

 丘の外に行けば課題が不正とみなさられるだろうし、こんな小さな草を集めていたら文字通り日が暮れてしまう。


 さて………最後はやはり魔法だ。

 前提でこれは魔法術学校の課題なのだし。魔法を使うように仕向けられているのかな。


 もちろんのこと、少々の問題が出てくる。

 実のところ、木属性の魔法は木の近くでないと効率がものすごく悪い、なぜか。

 魔術的な考えから言うと、物質があるからだ。風や火、闇、これらは初めから存在が不確かで触れることが出来ない。また、触られてもする抜ける水も然り。水は、空気中ならどこでも浮かんでいるから。

 けれど、木はそれらとは違う。初めから存在していて、魔法で作り出す物も実体のあるものだ。だから、木属性の魔法は木が近くだと使いやすく、木の多い場所から少し離れると使いにくくなるらしい。

 はい、ちょっぴり不思議な魔術のお話でした。


 巨木を倒す。森にゆく。草を集める。魔法を使う。

 一番どれか良いのか。

 やっぱり、せっかく魔法術学校に入ったのだから魔法かな。他はどう考えても、こちらに利がない。

 規則を破るわけにも、火を起こさぬまま夜を迎える訳にもいかないし。

 たった一本でも巨木があるなら、僅かでも力を貸してくれる、気がする。


 よしっ!


 手を広げて集中した。

 あ、もしかして入学してから初めて魔法を使う?

 もっとも、華月の里でも座学が多く、新たな魔法を覚える時意外あまり実技は行わなかったけど。


 大丈夫だよね。

 木属性は得意でもないけど、特別苦手なわけでもないもの。苦手なのは【飛行】とそれから、っいけないいけない。


 いまは集中だ。

 木が生えてくるところをイメージして。

 木の種類は、そうね……ヒノキ。それがいいわ。

 巨木さん、力を分けてください。


「地を富ます緑の力よ。我にその片割れを分け与えよ【レルトナ】」


 カラカラカラ。

 たくさんの長い木の棒が出てきた。あたりにヒノキの香りが広がる。なぜ、ヒノキかというと比較的燃えやすいから。

 思ったより簡単にできた。気の種類を指定したから難易度上がったかと思ったけど。この、巨木のおかげ?一本でも影響があったのかな?

 もしそうだとしたらありがとう。決して倒そうとは考えないでおこう。僅かでも、木に助けられたのは魔術学上間違いはないもの。

 久しぶりだわこの呪文。

 里は木があちこち生えてて魔法を使うまでもなかったから。


 特に魔法を使ったことによる疲れは感じない。

 あまり消耗した感じもないので次の呪文を使うことにする。魔力切れは減点の対象だ。減点理由は自己管理不足とされる。


「風の化身よ。彼のものを切り刻め【風剣】」


 

 きれいにすっぱり木が切られた。

 本当に一瞬なのだが、風の線が横切ったのが目に映った。

 これだけの量があれば盛んに燃やしても一晩は余裕で持つわ。予備を作る必要もなさそう。


 ふふ、それにしても中級騎士がきったみたい。

 幼い頃一度だけ中級騎士が里に来たことがある。私を含む子供たちに丸太を軽く切るところを見せてもらった。

 今のはそれと類似していて、そっくり再現できる魔法はすごいとあらためて感心する。


 その薪を取り分けて大小それぞれ二つの山を作る。大きい方は分けといて、火を絶やさない為の貯蓄としておく。


 仕上げだ。

 薪を作ることに成功した。

 そうしたら、次は……。


「燃え上がらせよ!【サンカ】」


 小さな方の薪山、焚き木に火がついた。

 火が手の平で生まれて、それがうつり火が燃える。それだけなのに、感動だ。

 自分で生んだ木に、自分の魔法で点火したのだから。

 火に感度するなんて経験、今までになかったわ。

 いやあ、苦労したわ。


「疲れた疲れた」


 そこで私はふと気づくのだ。


 はて、私はそんなに苦労したのか?

 疲れた、と口には言ってみたが魔力切れも起こしていない。魔力の減った感覚すらない。

 そりゃあそうだ。今使ったのはほとんど初級魔法で使う魔力も初級並みなはずだ。

 初級は生活で使うレベルの使いやすいもののこと。

 ちなみに、移動をしたのもヴァルだった。すなわち、私は何も疲労の要素がない。


 ……………。

 ヴァル、今更ながら寝てばかりのあなたに不満を持ってしまってごめんなさい。

 今日はあと、寝るだけだしそのまま寝ててね。いや、すでに夢の中か。そよ風に毛がそよいで気持ちよさそう。


 いいわ、私だっていろいろと出来ることはあるのだもの、それくらい頑張るわ。

 使い魔に頼りっぱなしの無能だ、とか思われたくはないわ。


 魔力のことはともかく、苦手な頭を酷使しそうだ。さっきも、巨木を倒そうとか危なげなことを考えかけてしまった。


 さて、一つ目のやるべきこと、火起こしは完了だ。

 

 次は、ええっと……………。


 

 



こんにちは。いえ、今は夜ですね。こんばんは。

更新、遅れてしまい申し訳ありません。


そして、今回まで読んでいただきありがとうございます。

これからも続いて行きますのでよろしくお願いします(^◇^)


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