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「待って。私を助けてくれた白馬の王子さま~」
「人違いだ~」
陰キャな俺は、屋上で昼食を済ませ、食後の時間を、本を読みながら過ごしていた。
本は良い。心が洗われる。そして何より時が経つのが早く感じる。
ページも中程に差し掛かった頃、突然声をかけられた。
鈴音だった。
「何を読まれているのですか?」
上目遣いにのぞかれた。
「?!見るな。俺も。本も」
「何でですか?教えてください。本のことも。あなたのことも」
俺は、戸惑いながらもその場を足早に去る。
それにしても・・・・・・、
(まさかばれたのか?)
(学校では黒縁メガネをかけ、黒髪ウィッグをつけているから、ばれる要素なんて1ミリたりともないはずなのに?)
(なぜだ!)
(このままでは、『陰キャ』から、美少女に声をかけられている『最高の主人公キャ』にレベルアップしてしまう!!)
「ティロリロリーン」
そのとき、レベルが上がったことを知らせる音楽が辺りに、・・・・・・まだ鳴り響かなかった。
「待って。私を助けてくれた白馬の王子さま~」
うっ、まだいたのか、あいつ。
「人違いだ~」
※
今日も雷生は、美少女からの追求をひたすら断り続ける。