《天空ノ塔》へ── 2
静寂な天空ノ海を、大きな大きな一体の竜が舞う。
ソレは幻想的で、神秘的な光景だった。
雲の上を、雲の中を、雲の下を、彩るは音のみ。
大きな火ノ竜が、光輝く静寂の天空ノ海を泳ぐように羽撃たく。
日の光と、火ノ光が織り成し、天空ノ海の雲海に暖かい影を降ろした。
天空ノ海に、竜は舞ったのだ──。
行方不明になった天空ノ巫女──カグヤを探しに、竜が舞う。
天空ノ巫女──カグヤは民に“平和ノ象徴”と謳われる存在にして、女神──イサナの神託によって選ばれる尊き方。
《凛浄》と呼ばれる澄んだ地に住まい、日々世界の平和を祈り、民の平和を願う。
そして日々の平和に深く感謝し、神々に舞いを舞う。
そんな尊き方が行方不明になってから、約三ヶ月余りが経ち、ようやく分かったことが在った。
《凛浄》に在る、天空ノ巫女──カグヤの神殿に在った傷跡、
誰かと、争った跡が在った。
そう、会議では憶測の範囲を大きく超えた話が飛び出た。
もし本当に、何者かと争われたのだとしたら…、カグヤ様は行方不明になられたのか、何者かに連れ去られたのか、あるいは…。
嫌な不安と焦りが過る。
静寂な天空ノ海を、大きな大きな一体の輝く火ノ竜が笛の音のような音で鳴く。
ソレはどこまでも届きそうな程、澄んだ高い音だった。