蟲判定
「本気なの、りょうちゃん?」
対面に座る石崎涼子は背徳じみた神妙な顔つきで俯きながらも、しっかりと俺の問に頷いた。
「……そ」
呆れ返るしかなかった。
この女も、やはりその程度の女だったか。
「そういうのどうかと思うけどな、俺」
「そう、だよね……」
さも自分は悪い事をしている。分かっているけど、どうにも出来ない。だからそんな私を許して。そんな弱い私を受け入れて認めて。そんな気持ちが言葉とは裏腹にありありと恥ずかしげもなく滲み出ていて吐きそうになる。
「あいつには?」
「……言ってない」
「だろうね」
愚問か。そんな義理を通せる立派さを持ち合わせていたら、こんな軽率な行動には出ないはずだ。
「ちょっと時間をくれ」
「え?」
顔を上げた涼子の顔に僅かに期待の色が見えて、いよいよ我慢の限界を越えそうになる。
――本当にクズだな。
思わず火のついた煙草を眼球にねじ込んでやろうかという衝動に駆られたが、居酒屋でそんな騒ぎを起こすわけにもいかないのでなんとか衝動を抑え込んだ
「また連絡する」
俺はそのまま涼子を置いて店を後にした。そして携帯を取り出し、すぐに電話をかけた。
「もしもし、俺。ああ、そうだ。こいつもクズ蟲だよ」
そう言うと電話口の相手は「やっぱりな」と薄く笑いながら答えた。
しかし驚いたのはその後だった。
“実は――”
耳を疑った。しかし聞き終わった瞬間、俺は一目も憚らず大声で笑い声をあげた。
「ほっっんと、どうしようもねえ生き物だよな女ってのは!」
こんな奴らを野放しにはしておけない。
――遊んでやるよ。お望み通りに。
「なあ、いつかやってやろうと思ってた事があるんだ」
そして俺は、ずっと頭で考えていたゲームの事を伝えた。
“イカれてるな”
言葉でそう言いながらも、電話口の声は期待に満ちた満足気なものだった。