遊戯
「実は、俺も夏希に誘われたよ」
整った外見と確かな地位というものは人を寄せ付ける。それだけで女は群がってきた。しかしそのどれもが、自分と言う人間の本質を見ようともしない、外面に装着された薄っぺらい部分しか見ていない碌でもない女ばかりだった。
関係を持つたびにがっかりさせられた。
それだけならまだ良かった。事もあろうに、平気で二股をかけようとする輩もいた。どうしたらそんな無神経な事が出来るのだ。
貪り漁り、男とあらば手を付ける。腹を空かせ続けた単細胞の蟲達には呆れる一方だった。
「俺達でさ、成敗しない?」
そして、悪戯な笑顔で近づいてきた同じ病院で働く真樹人も、自分と同じ悩みを持っている男だった。
俺達は女と出会う場に顔を出した。簡単に女は釣れた。そのどれもが馬鹿だった。いつもはばっさりと捨てて終わりにするだけだったが、真樹人は違った。
世直しと称して、低脳な女達に凄惨なゲームを与えた。そのどれもが狂気的で残虐で独創的で、そして爽快だった。
「外科っていいよねー。人を傷つけて感謝されるんだもの」
日頃病院内で見せる精悍で爽やかな表の顔からはまるで想像も出来ない猟奇的な一面を、俺の前では惜しむことなく曝け出した。今まで出会ったことのないタイプの人間に少し嫌悪も感じたが、女性に対しての気持ちは同じだったし、何よりこの危険な男が繰り広げる遊戯に底知れぬ魅力を感じている自分がいた。
何人目だっただろうか。
涼子と夏希という女性と酒を飲んだ。
流れで俺は涼子と付き合う事になり、真樹人は夏希と付き合う形になった。だが彼氏彼女の関係だと認識していたのは女のほうだけで、俺と真樹人はどうせ次の遊び相手程度にしかならない蟲達だろうと踏んでいた
そして予想通り自分達と同じく、病院で勤務する職の身にありながら、彼女達の脳みそはスポンジのように軽かった。
涼子と付き合って一か月が過ぎたあたりで、夏希がまず俺に声を掛けてきた。
「真樹人君もいいけど、尚樹君とももっと仲良くなりたいな」
反吐が出る。しかし嘆かわしいのはおそらくこんな浅はかなやり方で今までの男たちはなびいていたという事だ。
しかし今回は違う。俺は心の中で静かに笑った。
夏希と別れた後、すぐさま俺は真樹人に連絡を入れた。
「真樹人、いい知らせだ。お前の彼女が俺にアプローチしてきたぞ」
もはや笑うしかなかった。
「まとめてやっちゃいますか」
そして、真樹人はまたゲームを用意した。彼から聞かされた内容は今までにない凄惨なものだった。
「相変わらず狂ってるな」
感心しながらそう言ったが、真樹人は少し不満気な顔をしていた。
「どうした?」
「いや、かなりいいとは思うんだけど。思うんだけど、もうワンエッセンス欲しいなと思って」
「まだこれに何か足すのか?」
「ああ、出来れば。もう少し時間をくれるか。いい考えが出そうなんだ」
数日後、真樹人から改めて聞かされた内容に思わず戦慄した。
――この男、やはり頭がおかしい。
どこかでこの男と縁を切るべきだ。でないといずれ俺もこの男ともども破滅に導かれる。そう思わせるほどに強烈なものだった。
だが、俺はおそらくまだやめられない。
この男のもたらす遊戯を、まだ俺は見ていたい。




