~それから僕は~
~2年後~
あれから僕は考え方も少しだけ大人になり、あの時、詩織さんが言っていた意味も理解できるようになっていた。大学受験を今年に控え、僕は学校、図書館、自宅を行き来するだけの生活を送っていた。
高校三年生の時は本当にただそれだけで、一年間は瞬く間に消えていった。
特に思い出らしいこともなく、勉強の毎日だった。
~さらに1年後~
そして僕は大学生になった。志望校には落ちたものの、上京するために滑り止めの大学に入った。
東京に出てきて、僕はボロボロのアパートに住んだ。トイレ・風呂共同の1ルーム1万8千円。
仕送りがない僕にとってこの家賃はとてもありがたい。
大学・バイトに明け暮れる毎日、深夜に帰って来て泥のように眠り、目覚めると急いで大学へ向かう。
こんな日常で僕は少し疲れていたのかもしれない。
ある日、僕はバイト中に倒れた。
医師からは1週間の入院を告げられたが、僕には入院費を払える余裕もなく自宅安静を約束に点滴だけして家に着く。バイトと勉強の両立は難しく、僕は少し混乱していた。
これからの将来を考えると、不安や恐怖で押しつぶされそうになる。
大学を卒業するまで、僕は耐えられるだろうか。こんなに必死に大学を卒業してまで、僕は将来何になりたいのか。僕の人生は社会の歯車の1つの部品として使われ、歳を取ったら捨てられるんじゃないか。
僕は疲労と混乱の中で息を殺しながら一日中泣いた。
目が覚めると少しだけ落ち着いていた。僕はもうダメかもしれない、実家に帰ろう。そう心に決め、上京した時のバッグを手に取ると一枚の紙切れが落ちた。それは以前、詩織さんが僕にくれた携帯番号のメモ紙だった。
藁にもすがる思いで僕は携帯電話で詩織さんに電話をかけた。
「どちら様ですか?」詩織さんの声を聞いた瞬間に僕はまた泣き出してしまった。
誰かも分からず、イタズラ電話と勘違いする詩織さんに、かすれた声で自分の名前を言った。
「ど、どうしたの?大丈夫?」詩織さんは僕を心配してくれている。あの時、自暴自棄だった彼女は立ち直り、彼女を心配していた僕が壊れそうになっている。そう考えると、苦しくて辛くて僕自身が僕じゃないみたいで、そう考えるだけで涙が止まらなかった。
詩織さんはずっと電話越しに僕の言葉に相づちをしてくれていた。そして、僕に会いに来てくれると言ってくれた。それから僕は久し振りに優しさに包まれるように眠ることが出来た。
少しの期間、別の作品を作ることになってしまいました。
大変申し訳ございません。