~僕の想い~
それから数ヶ月経ったある日、僕は駅前にあるファーストフード店に立ち寄った。
メニューを決め店員に伝える。「あのお客様、スマイルはいかがでしょうか?」とっさに僕は店員の顔を見る。
そこには、お世辞でも上手とは言えないぎこちない笑顔の詩織さんがいた。
僕はその顔に思わず吹き出す。それを見た詩織さんは少しだけ頬を膨らませて怒る仕草をしていた。
詩織さんが見える席に座り、頑張る姿を見ながら食事をした。詩織さんは今を必死に生きている。そう思うと僕は少し嬉しくなった。
翌日も学校の帰りにお店に立ち寄り、注文の間だけ少しの会話をする。そしてまた翌日も。
僕にとってのデート感覚だったのかもしれない。
毎日食事するお金はなく、コーヒーだけを飲む、それでも有意義な時間に感じた。
詩織さんは僕がお店を出る時間に合わせて、シフトを変更してもらい、途中まで一緒に帰るようになった。
やがて僕らは遠回りをして公園に立ち寄り、夕暮れ時まで一緒におしゃべりをする。
他愛も無い時間が僕にとっての幸せな時間だった。
お互い何気ない一日の報告をして、時にはケンカもして、それでも僕は詩織さんといる時間が生きている意味と思うほど夢中だった。
僕らは手を繋ぐようになった。
詩織さんの手を通して僕と詩織さんの鼓動が共鳴する。バラバラだった二人の鼓動は次第に同じリズムになっていく。僕は詩織さんの事が好きになっていた。






