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ツンデレ少年の優しい手と天使の悪魔の笑み

3回めの改稿してしまいました。

本当に本当にすみません。


しかし今更ながら……この小説読んでくださっている方いるのかしら??

 「……か!ゆりか!」


 名前を呼ばれ、暗い暗い闇から引き揚げられるように目を覚ますと、目の前には高円寺隼人――兄の顔があった。


 「……お……おにいさま……?」

重たい口を開く。

「ゆりか、大丈夫?すごくうなされてたけど」

兄が心配気な顔で覗き込んでいる。

「……え?」

周囲を見渡すと、よく見馴れた高円寺家のリビングのソファーの上だった。

ジョギングから帰ってシャワーを浴びた後、疲れてうっかりソファーでテレビを観ながら、うたた寝してしまったんだと気づく。

横たわっていた身体を起こし、顔に触れると涙を流した跡があった。


 「怖い夢でも見たの?」

兄に聞かれ、さっきまで見ていた夢を辿るように振り返る。


 あれは――記憶?

『真島ゆりか』に戻っていた。

黒い黒い感情に襲われ、もがいていた。


 ――『家に帰っても安らがない』

 ――『君は俺を必要としてないだろ』


 真島の言葉が木霊し、ゆりかの胸を締めつける。


 今のゆりかには真島司との記憶が全部思い出せていない。

何故こんな言葉をあの人が言ったのかもわからない。

なのに、夢の中同様に、酷く重い気持ちになり、小刻みに手が震えていた。

ゆりかは兄に悟られないように、やはり夢で見た時と同じようにきつくきつく拳をグッと握った。


 「……怖い…夢を見ました」

それ以上の言葉が出てこず、兄の言葉をそのまま返す。

「…………」

すると、兄は何を思ったのか、無言のままゆりかのすぐ隣にストンと座り、手に持っていた本をペラペラめくりながら、さも何事もなかったように読書を始めた。


 高円寺家の大きなリビングのソファー。

座る場所ならいくらでもある。

珍しくあまりにも近くに座ったものだから、ゆりかも一瞬キョトンとしてしまった。


 「お兄様?」

今度はゆりかが兄を覗き込むと、チラリと横目で見る兄と目が合った。

「……隣にいれば、怖くないだろ?」

一瞬、眉を顰めながらも、照れたような恥ずかしそうな兄の顔が見えたかと思うと、次の瞬間にはフワリと大きな手がゆりかの頭に降ってきて、その手がゆりかの髪をクシャリと撫でる。


 いつの間に父のような手になったのだろう。


 五歳年上の兄の大きな手は優しくて、ゆりかに安堵を与えてくれた。

それと同時に握りしめていたゆりかの拳の力が抜けていくのがわかった。


 兄もそれに気付いてか気付いてないのか、優しく「お茶飲む?」と聞いてきた。

ゆりかがコクリと頷くと、使用人にお茶を淹れるように指示をし、用意してくれた。


 「美味しい」

お茶を一口飲むと、ゆりかからいつもの笑みが溢れる。

暖かくて香りの良い紅茶。

『高円寺ゆりか』としての日常の世界に引き戻してくれる。

「いつものゆりかに戻ったね」

「はい、もう大丈夫です」

カップを持ちながらニッコリと笑ってみせると、兄は「やっぱりゆりかはそうでなきゃ」と満足気な顔をした。

ただ、一言余分な言葉も忘れていない。

「美味しいものだけでコロッと気分が良くなるんだから、単純で羨ましいよ」


 先程までの甘く優しい兄が台無しじゃないか。

しかも紅茶だけで気分が良くなった訳じゃないのよ?

お兄様が頭撫でてくれたから……だから…………でも絶対に教えてあげない。


 「この紅茶、前から家にありました?」

「この前、人からこの紅茶を薦めらたんだ。

美味しいから家にも取り寄せてみた。

なかなか良い茶葉だろ」

そう言いながら、兄もカップとソーサーを手に優雅に紅茶を飲む。

その姿にゆりかは見惚れていた。


 昔はただの男の子だった兄が、成長と共に気品や色気を兼ね備えてきている。

全校集会で皆が騒いでいたときは、ぴんとこなかったが、今ではそれもわからなくもない。

これまでは毎日一緒で見慣れすぎて気付かなかったのもあるが、ゆりか自身が大人な記憶があったせいで、ただのツンデレな少年としか見ていなかったのかもしれない。


 ここまで成長するとは……さすがお父様、お母様の子だわ。


 兄の姿をチラリと横目で見ながら、再びカップに口をつける。


 「そういえば、今日ランニング中に悠希君が怪我したんだって?」

「はい。私が土手から転げ落ちるのを庇って、足首を捻挫しちゃって……」


 振られた会話に何気なく答えていると、ハタとあの場面を思い出す。

あの場にいた男――『真島』と名乗った男――あれは――――

夢の中の自分の息子の顔が浮かぶ。

風に吹かれ、長い髪から一瞬覗いたあの男のイタズラ気な笑い顔。


 似ている……。

まさか……『ナオ』……?


 そう思うものの、自分の息子の『ナオ』はあんな小汚いおじさんではない。

医者であれ、あの男が自分の息子だと言われると、正直いやだ。

とゆうか、そもそも『ナオ』の学力で医学部は無理だ。


 ……まさかあんなのになっているわけないじゃない。


 ゆりかは頭の中で激しく否定する。


 ――……でも、もしも……。

もしもあの男が『ナオ』だったら…………。


 ティーカップを持つゆりかの指に力が入り、水面が僅かに揺れる。

ゆりかの強張った表情に、気付いた兄が怪訝な顔をした。


 「ゆりか?」

「……悠希君が怪我した時にすれ違いざまに助けてくれたお医者様がいたんです。

よく家に来てくれてるお医者様の病院の勤務医だと言っていました……」

先程あった事を振り返りながら、淡々とした口調でゆりかが話す。


 「ああ、あのおじいちゃん先生の病院か。

そうゆうことなら、父様を通してお礼を入れておこうか」

「ええ、私もそうしようかと思っていました」

「その助けてくれた先生の名前は?」


 兄の質問にゆりかは一瞬動きが止まる。

持っていたカップとソーサーをテーブルにそっと置くと、カチャリと小さく鳴ったはずの音が、やけに響いた気がした。


 「……『真島』……さんって言っていました」


 「『真島』さんね。了解。

……ところで、今日何かあった?」

「え?」

ティーカップに下ろしていた視線から、兄に向けると、兄がゆりかをじっと見つめていた。


 「ゆりかの様子が変だ」

いつにないような射るような視線を兄が向けている。

何かを訝しむような、真実を突き止めようとする目。

「……土手から転げ落ちただけ?」

「え……」

兄の声にゆりかはハッと現実に引き戻されるような感覚になる。


 「えっと、ついつい私が石に躓いちゃって、それを悠希君が庇って怪我をしてしまって……」

「……ふーん……」

兄が肘掛に肘を付きながら、面白くなさそうに適当な相槌を打つ。

「お、お兄様?」

「まあ、いいや。相手は悠希君だし。一応許婚だし」

少し投げやりな兄の態度に、ゆりかは若干混乱する。


 え?どうゆうこと?

私は『真島』という医者が気になるだけなんだけど。

悠希君と私が何かあったって言いたいの?


 「それで怪我は?」

「え?だから悠希君が足首を捻挫……」

兄の脈絡のない質問にゆりかは一瞬躊躇いながら返す。

「じゃなくて、ゆりかは怪我してない?」

「私は無傷です……」

「でも土手から落ちたんだろ?ゆりかはドジだから、見えないところを打撲してるかもよ?頭打ってない?」

「いえ、悠希君が助けてくれたので、大丈夫です」

「……あっそう」

兄は酷く素っ気ない声を出したかと思うと、数秒考えたかのように間を空けて、突如となくゆりかが想像し得なかった言葉を口にした。


 「明日からは僕も一緒に走るよ」


 「はい?!」

驚いたゆりかは思わず大きな声を上げてしまう。


 いや、別に私、走りたい訳じゃないし。

悠希君の捻挫でジョギングは無しになって、やったーなんて正直心の中で思ってたのに……。

大体お兄様はスパルタだから、私の苦手な分野でしごかれたら、とんでもないことになってしまうではないか。


 想像だけでゾッとしたゆりかは首を思いきり横に振った。

「お兄様!それは結構です!!

明日は休む予定になってますし……」

「早速活動休止じゃマズいんじゃない?」

「え?」

「ほら、悠希君は怪我してるし、貴也君と江間君は生徒会の仕事で忙しいし、これだと実質活動できるのはゆりかと松原さんだけだよね?

女の子二人だと危ないよ」

うすら笑みを浮かべながら兄が言う。

「……はい?」

兄の話が理解できないゆりかは、思わず首をひねった。


 「貴也君と宗一郎君が生徒会?活動??」


 確かに宗一郎君が生徒会入りしているのは今日の全校集会で配られた冊子で見た。

しかし貴也君まで??


 「あれ?まだ聞いてない?

今日貴也君が生徒会室に来た時に、生徒会の仕事手伝ってくれることになったんだ。

入学したばかりだから、まだ役員に入ってないけど、来期には役員になってもらう予定ではいる」

そう言いながら兄はティーカップを片手に優雅にお茶をすする。


 はい?!初耳なんですけど!

あの貴也君が生徒会?!

なにか裏があるんじゃないの……?


 「あと今日貴也君が出してくれた届出はちゃんと受理されるから、活動も学校が支援してくれるよ」

ニコリと笑う兄の顔に対し、ますますゆりかの顔が曇っていく。


 貴也君が出した届出?

活動を学校が支援??


 ――ふとよぎる今朝の貴也の様子。

良い事を考えたとばかりに、天使の姿で見せた悪魔の笑み。

極め付けに「ゆりかさんの願いを叶えてあげるよ」と。


 正直ここまでの流れでは、話が見えてはいないが、ゆりかにはただただ悪い予感しかしない。


 ゆりかは勇気を振り絞って、兄にたずねる。

「ちなみに、貴也君が生徒会室に出した届出って……?」


 ゆりかからの質問に、今度は兄が不思議そうな顔した。

なんでそんなことを聞くのかとでも言いたそうに。

そして次の瞬間、兄の発した言葉にゆりかは絶句した。


 「同好会の新設届出だよ」


 同好会……?

ジョギング……?

え?ええ?

……まさかまさかのジョギング同好会?!


 ゆりかの顔がだんだん青ざめる。


 ヤダヤダヤダ!

ただでさえ、ナオ似の男やら、悠希君の怪我やら気になることばかりなのに!

もー!次から次へと勘弁して!


 「お兄さま!ごめんなさい!もう部屋へ戻ります!」

先程までのしおらしくしていた姿が嘘のようにゆりかが勢いよく立ち上がると、兄は何事かと驚いた顔をしていた。


 しかし今はそれどころではない。

なにを企んでいるんだ、あの腹黒め!


 歩きながら誰にも聞かれないくらい小さな音で、チッと舌打ちする。

しかしその一方で、ゆりかの脳裏の片隅に高校生の『ナオ』の顔がかすめていた。

重たい内容に突き進もうかと思いましたが、白月の筆が重くなる一方なので、暗い過去は徐々に小出しになりました。


次回は書き損ねていた貴也の企みといきましょう。

貴也推しの方、しばしお待ちを!


※※※※※

再三にわたり、改稿申し訳ありません!


次の話に進みたいのに、この回のゆりかの心情が中途半端で、私としては納得できず……。

そして兄様の態度もなんか違うんだよな〜と。

その結果、結構な書き換えとなりました。

先に読まれた方には申し訳ないです。


でもこれでなんとか次の回に進めそうです。

今後もよろしくお願いします。

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