学園祭のお誘い
久々に悠希、貴也ターン。
お久しぶり。
気付けば小6の秋、あと半年もすればゆりかも中学になる。
早いなぁ。
教室の窓から外を見つめる。
校庭では体育の時間でサッカーをしているクラスがいる。
サッカーか……。
宗一郎はどうしているんだろう?
あれから1年以上経った。
中学にも無事入学出来ただろうか。
一体どこの学校に通っているのだろう。
なんで連絡先聞かなかったんだろう…
は!何考えてるの!私!
浮気はいけないのよ!
私には悠希君という許婚がいるのよ!
今までいなかった素直なスポーツマン男子にトキめいただけだ。
そもそもこれが恋の訳がない。
恋?コイ?鯉?
コイってなんですかー?
コイって美味しいのー?
「どうかしたの?」
ゆりかが頭を抱えていると、後ろから話し掛けられる。
「千春さん」
話し掛けてきた相手はクラスメートの松原千春だった。
ショートボブの髪型と切れ長の目から中性的に感じられる少女だ。
そしてゆりかには珍しく話しが合う同年代女子である。
今まで悠希と貴也以外の同年代の子たちがどうにも幼子に見えて仕方がなかったのだが、小6になり、対等に話し合える千春という友人ができ、親しくなった。
男子に比べ、女子のが精神年齢が高い。
この年頃の男子はまだまだ子供だ。
悠希も例外ではないのだが。
「窓の外になにか?」
ゆりかの隣に立ち千春も窓の外を眺める。
「特になにも」
「物思いにふけって、他のクラスを見てるなんて…もしかしてゆりかさん…恋?!」
千春が口元に手を当て、楽しそうにゆりかを見る。
「まさか。そんなに節操なくないわよ」
ゆりかがクスリと笑う。
そう、学校では悠希とゆりかが許婚ということを誰もが知っている。
やたらに誰のことが好きなんて言えたものじゃない。
「誰が恋だって?」
よく知る声が割って入ってくる。
「和田君」「悠希君」
ゆりかと千春が同時に名前を呼んだ。
噂をすれば、だ。
ゆりかと千春の後ろにいつの間にか悠希が立っていた。
悠希とは同じクラスで、しばしばゆりかたちの会話に入ってくる。
ちなみに貴也は違うクラスである。
自分と貴也君以外に友達がいないのかしら?
ちなみに自慢にもならないが、自分にも友達と呼べる人間はほとんどいない。
「お前、恋をしてるのか?」
悠希は眉間に皺を寄せている。
「恋なんてしてません」
ゆりかがきっぱりと答えると、悠希が顔を顰める。
「ゆりかさん、それはそれで問題よ。
許婚の前で言う言葉じゃないわ」
千春が苦笑いしながら、ゆりかを窘めた。
「そうね。答えを間違ったわ。
私は悠希君の許婚だから、他の人と恋愛する気はありません」
万が一秘密を持ってしまっても、墓場まで持っていきます。
それが人生の幸せですから。
「それならいい」
悠希の口元が少し緩む。
恥ずかしいのか口元に手をあてて、目線をそらす悠希に、ゆりかは目を細める。
なんだかこうゆうところは可愛いんだよな。
自分の一挙一動作に反応をする。
一途というか純粋というか…1人の人間しか見えてなくて、自分とは違う。
結婚相手は条件で悠希と決めているが、気持ちはあやふやで、こんな自分のどこが良いいのか、サッパリわからない。
悠希の束縛行動はただの執着からじゃないのか?
そんな疑念すらも生まれてくる。
「そういえば、ゆりかさん。
土曜日、中高の学祭があるじゃない?
見学も兼ねて行かない?」
千春からのお誘いにゆりかは顔を上げる。
が・く・さ・い
学祭!
アラフィフの自分には、なんて甘美な言葉!
なんて青春っぽいの!
あれでしょ?
舞台に立ってバンド演奏している彼に惚れちゃったり、人影のない場所で意中の人と手を繋いでみたり、はたまたチューしちゃったり、しちゃうのよね?
あー、昔々が懐かしい!!
前半の下りは経験ありだが、後半は漫画での知識である。
今世では是非とも経験してみたい。
むふ。むふふふ。
「ゆりか?」「ゆりかさん?」
相当アウトな顔をしていたのか、2人が不審な顔をしてゆりかを見ていた。
あ、マズイわ。
思ってることがダダ漏れしちゃうとこだった。
「千春さんのお姉様も通われているんでしたっけ?」
気を取り直して千春に話しかける。
確か千春の姉は中等部にいたはずだ。
ちなみにゆりかの兄も今、高等部に通っている。
中高一貫校なので、同じ敷地内で同じ建物になるらしい。
たまに前を通り外観だけ見るが、かなり立派な建物であった。
「そうなの!
姉に誘われて。
1人は心細いから、ゆりかさんもどう?」
ゆりかは少し考え、「そうね、中高の中って見たことがないから、私も興味があるわ。行きましょう!」と答えた。
あくまでも学校に興味があるように、真面目なゆりかを装う。
チラリと悠希を見ると、2人のやりとりをじっと見つめていた。
…嫌な予感がする。
私がやましいことを考えていたのがバレたか?
貴也曰くゆりかに関することには鋭いという。
第三の能力で察したか?
その結果、まさかと思うが行動を制限したりしないわよね?
それともまたストーカー?!
悠希の口から何を発するのかと思わず身構える。
「そうだな。俺も一緒に見学に行こう」
げ!げげげ!
誘われてもないのに、堂々とついてくるパターンか!
悠希の言葉を聞いて眉間に皺を寄せたゆりかに対し、横で千春が喜んでいた。
「やったー!2人獲得!
和田君まで来てくれるなんて!
みんなで行けば楽しそうね!
和田君が行くなら、相馬君も誘う?」
何ですって?
これ以上面倒を増やすつもり?
ますますゆりかの眉間の皺が深くなる。
「ああ、貴也にも聞いてみる。
土曜日は習い事もないから、たぶん大丈夫だと思うぞ。
じゃあ、待ち合わせは…」
話がどんどん進んでいく。
この状況を見ながら、ゆりかはため息をひとつ深くついた。
私の青春はいづこ…とほほ。




