表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/69

海外年越し

 小学校3年の冬休み、母の提案で年越し海外旅行をすることになった。

 父のヨーロッパ出張がクリスマスも年末年始も跨いでしまうということで、ママも一緒について行きたいと手を挙げたのだ。

高円寺家にとって初の海外年越しになる。


 これまでにお茶目な母の提案で、紅白を観て、除夜の鐘をきき、使用人や護衛たちをぞろぞろ引き連れ、夜中に初詣なんてことも何度かしたことがあるが、ゆりかにとって、よくテレビで芸能人が年越しハワイなんていうのは別世界のような気がしていた。

 年が明ければ、いつもは親戚の挨拶回りがある。

高円寺家にとってそれは慣例だった…なのにだ!

今年は父の仕事ということで、一切なしなのだ。


 ゆりかは両手を上げてスキップしたい気分だった。


 「ゆりかちゃん、隼人さん、22〜23日がプラハ、24〜26日がウィーン、そのあとは年明けまでフランスですって。

行きたいところがあったら、リクエストしてね。

パパは仕事だからずっと一緒は無理だろうけど、

私の秘書の高橋と他にもガイドを付けてくれるそうよ」

母が隣に高橋を従えて、リビングでお茶をしていたゆりかと隼人にそう告げた。

 「私はプラハのクリスマスマーケットと、ウィーンで本場のオペラ座でオペラでしょ。

あとフランスはモンサンミッシェルに行きたいです!」

「いいね。

僕はあとベルサイユ宮殿とルーブル美術館も。

ああそうだ、ウィーンのシェーンブルン宮殿も行きたいです」

ゆりかと隼人もすかさず行きたいところを次々に述べる。

それを母がやはりニコニコ聞いていた。

「今のを高橋に取りまとめて連れて行ってもらいましょうね。うふふ」


 そして後日、そのような内容のスケジュールがゆりかたちに渡された。

私達家族は大はしゃぎだが、その裏で高橋が馬車ぐるまのように奮闘していたことに気づく。

ご迷惑をお掛けします。


*****


 そんなこんなで終業式後、すぐに出発することになった。

飛行機は一足先にヨーロッパ入りしている父がビジネスクラスをとってくれた。

 一年前の夏にハワイに行ったときは「社会勉強だよ」と父が往路だけだが、兄とゆりかの席をエコノミーで用意したことがあった。

前世ではエコノミーに乗り慣れていたが、

1度ビジネスの味をしめてしまうとエコノミーに乗れない。

特にヨーロッパ便のような長距離便は厳しい。

ビジネスクラスで良かったと、涙が出そうな程嬉しかった。

 ありがたく乗らせていただきます、パパ!

きちんとお金を稼いで払ってくれるパパにあとで労うことを誓います!


 チェコ・プラハに着くと、父がホテルで待っていた。

みんなで食事したり、旧市街地に出てクリスマスマーケットを観た。

旧市街地はおとぎの世界のような可愛い街並みでうっとりした。

パパとママは美味しそうな香りのホットワインを道端で買っている。

 それ、前世の私の好物!

 真冬のヨーロッパの道端ではあちこちに売られていた。

果物やシナモンを浸けたサングリアのホット版の飲み物だ。

あれを飲みながら歩くと身体がポカポカ温まるのだ。

喉から手が出るほど欲しかったが、匂いを嗅がせてもらう程度でとどめた。

 子供なのが悔しい!


 クリスマスはオーストリア・ウィーンで過ごした。

希望していたオペラ座でモーツァルトの『フィガロの結婚式』のオペラを家族で観ることになり、ゆりかはウキウキしていた。

 クリスマスにウィーンのオペラ座でオペラなんて素敵じゃない?

 ボックス席の最前列。

オペラグラスを片手に鑑賞する。

ヨーロッパ貴族のような気分にゆりかはうっとりと酔い痺れる。

 ただ問題がひとつあった。

ここはウィーン。

ドイツ語なのだ。

ドイツ語がわからないゆりかには子守唄に聴こえ、途中船を漕いでしまった。

あとで兄に怒られたのは言うまでもない。

 ああ、ドイツ語の勉強も必要なのかしら…。


 そんな楽しい東欧旅行を終えフランス・パリへ入り、ホテルに着いたと思った矢先、ホテルのロビーにまさかの来訪者がいた。


 「Bonjour!」


 天使の顔をした悪魔…いや、相馬貴也だった。


 ゆりかたちの姿を見つけると、にこやかにソファーから立ち上がり手を挙げる。

笑顔が眩しい。

神々しいまでのエンジェルスマイル。


 「…なんでここにいるの?」

ゆりかの顔が驚きから、怪訝な顔に変わる。

「せっかくわざわざ会いに来たのに、そんな顔されたらがっかりだよ」

ゆりかの反応は想像していたのだろう。

そう口では言いながらも、貴也の顔は笑顔を崩していない。


 「あら?貴也君!」

母が貴也の存在に気づく。

その母のうしろには父と兄がいた。

「こんにちは、おば様、おじ様、隼人さん」

貴也が天使の笑みで挨拶をする。

「貴也君、なんでここに?

はっ!お父さんは?!」

父がキョロキョロと相馬父を探し出す。

ゆりかと母と兄が白い目をしていたが、父は気付いていない。

「大丈夫ですよ、僕1人とお付きの者だけです」

貴也も苦笑いしている。

 パパ、ホントやめてほしい…。


 「実は和田の伯母様に今日から高円寺様達がパリに来るって聞いて、会いにきたんです。

母も仕事だったり用事だったりで、僕も家で暇してて、ガイド代わりにお役に立ちたくてきました」

貴也が控えめに言う。

「貴也君、私たちは年明けまでしばらくここに滞在するから、もしよければ一緒に観光しないかい?

今日ももしよければ一緒にディナーを食べよう」

父からの思わぬ提案に一瞬ゆりかは目を丸くするが、

わざわざ会いにきた人間を無下にするほどゆりかも性格は悪くない。

「ありがとうございます。

お言葉に甘えてぜひディナーを一緒させてください」

貴也が深々と頭を下げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ