7.シリアスな雰囲気
9月9日
前回までの話を結構修正、設定を付け加えました。
もうこんなことしません。
修正はします。
帝都に着いた。
お尻が痛くてたまらない。
馬車の不便っぷりをなめていたな。
「取り敢えずそういうことで、休みたいんだけど、良いとこない?」
「そうね、取り敢えずギルドに行って来なきゃいけないから。色々とね」
ついてきて、と言うカグヤの後ろに、言われた通りついていく。ついていく道柄周りの街並み、もとい、帝都並みを見てみる。
入った時も思ったことだが城壁がバカでかい。巨人でも意識しているのか、と言いたくなるようなデカさだ。
まぁ測る手段も、やる気もないから、50メートルあるかは知らない。
今いる通りには、綺麗に店が構えられている。
八百屋、肉屋、雑貨屋、八百屋、武器屋、八百屋、八百屋、八百屋、八百屋、と。
途中にある、よくわからない店は除く。
武器屋を見て、ふと思いつく。
「なぁ、カグヤ」
「なに?」
「例えばさ、俺が武器を使うとしたら、何にするべきかね」
「例えばではないけど……そうね、武器というより手の甲とか、脛とかにあれつけてみたら? あの、メリケンサックみたいな」
「ああ、良いかもな。俺も名前は知らないけど」
確かに体技のレベルも高かったわけだし、その方がいいか。
と、思っていたら着いた、冒険者ギルド。
荘厳な雰囲気を持つ、石造りの建物。ドアはないのか。
中に入る。
……広いな。
椅子、机、椅子、椅子、机、椅子、椅子、机、椅子、受付……っと、受付か、目的は。
カグヤたちが、受付嬢と話して、報酬をもらっている。
「……で、パーティーが1人増えるんですけど。まだ登録していないので登録を、と」
「あ、はい。僕のことですね」
頭を下げる。美人の受付嬢に。
「よろしくお願いします」
「はい、ではこちらの記入用紙に、記入事項を。登録に必須な情報の枠は、紅くなっておりますので」
えー………名前、性別、
ステータスは、めんどい。
パーティー加入済み。
リーダー名……?
「あ、そこ、ビートにしといて」
こいつがリーダーなのか。
ビート、ビート………何だったか。ああ、思い出した。ヤオヤ、と。
提出して、カードを受け取り、言われた通り血を垂らす。
「はい、これで登録は完了です! 今日から冒険者ですよ。」
そう言って笑いかけてくれる受付嬢とは裏腹に、カグヤの機嫌がどんどん悪くなる。
「ほらっ! デレデレしてないで次行くわよ」
「わかった」
「否定しなさいよ……バカ」
全員が別の窓口へと移動する。獲物は別の窓口で受け取るのか。
カグヤが荒々しい口調で、荒々しく換金している。
換金が終わって、次は俺の武器を買いに行くらしい。
武器屋には、ハゲを売ってるハゲがいた。
日本語ミスった。
「おお、らっしゃい! ん? 何だ、刀の嬢ちゃんじゃねぇか。今日はど……何でそんな不機嫌なんだ?」
「何でもないっ!」
「そ、そうか、てっきりそっちの新しい嬢ちゃんが何かしたのかと思ったんだが……」
「何でもあるっ!」
「そ、そうか………」
「………」
それ、俺が何かしたって言ってるよな?
まぁいい、とりあえず武器を買おう。
「すいません。あの、手甲、みたいな。武具探してるんですけど」
「ん、ああ、ガントレットか。ガントレットっつーと……あった、これだな?」
「ああ、それです。 幾らですか?」
「これだけでいいのか? 肘当てとかも無いとこれは扱いづらいぞ」
確かに。失念していた。
「それもお願いします。ええっと、幾らですか?」
「そうだな……お、ちょうど銀貨3枚だ。」
ヤバ、手持ちが足りない。
こんな時は。
「なあ、カグヤ」
「何っ!?」
猫みたいに威嚇して来る。
フシャァァーッ!! と体を逆立てながら。
「あ、ああ、手持ちが足りなくてな。幾らか貸して欲しいんだが。」
すると、カグヤは腕を組み、そっぽを向く。
「フン! 彼女がいるのに。文字通り彼女が隣にいるのに、他の女性にデッレデレ、デッレデレするような人に貸すお金なんて」
「あ、じゃあ僕が貸してあげるよ」
「んなっ!」
ビートが貸してくれるらしい。
ありがたい。身に覚えのない、言いがかりをつけられずに済んだ。
買い物を済まして、武器屋を出る。
さっきからずっと、一層ましてカグヤが不機嫌だ。
プンプンと頬を膨らませ、怒っているとアピールしているかのよう。
「とりあえず、今日は宿に戻ろう。みんな疲れたろうし。あ、その前に、ルイの歓迎会でもするか。」
さすがリーダーだな。いい判断だ。
と感心していると、カグヤがプンプンをやめ、少し照れたようにこちらを向いて来る。
「た、多分ね、いや、絶対に!」
なんだ?
タブンネ? 魔法か。
「宿の部屋空いてないだろう、から、ね。あの、その。」
ああ、そういう事か。
どちらにしろ金も使いたくないし、そのつもりだったけど。
「じゃあカグヤの部屋泊まらしてくれ。頼む。」
「だからっ……え?」
それに他の奴らはまだ信用できない。寝首かかれちゃ堪らない。
と疑心暗鬼に陥っていると、プルプルとカグヤが体を震わせ、
「仕方ないわねっ! 泊めたげる!」
と満面の笑みで、仕方なく了承してくれた。
その後、歓迎会を終わらせ、カグヤの部屋にやってきた。歓迎会は結構楽しかった。おかげでパーティーメンバーの面々と仲良くなれた。
今ならタメ語で話せる。
ご飯は予想よりも美味しかった。いや、日本よりは美味しくないけれど。
そりゃもちろん。
「さて、こみいった話をしましょうか」
部屋のドアを閉め、ベッドに座りながら話を始める。
途端に、カグヤの言い回しが変わる。
「ん、俺は大して何もないけどな。」
「何いってるの。」
カグヤが真剣な顔をしている。
これには、さすがに俺も顔を引き締める。
「ルイも知りたいこと、色々あるでしょ? これからに関わることよ」
「まぁね、とりあえず」
呼吸を整え、最重要事項について問う。
――鉱は生きてるのか?
カグヤは、こくりと頷いた。
良かった。
とりあえずあいつが生きていれば、他はいい。仲も良く無かったし。
「というか、今日行った武器屋で雇われてるわよ」
は?
思わず瞬き。
ええと、
……ああ、そういう事か。
「刀工、だったものな。あいつ」
「ええ、まだ他のは上手く作れるわけではないようだけど」
そう、鉱の実家は今では珍しい刀工の家系だ。本人も小さい頃から家で刀を作る修行をさせられており、あまり外に出してもらえなかった。
故に、運動音痴だったり、馬鹿だったりするんだろう。
ドジは生来だ。
「私よりも一年ほど早くこちらにきたようだしね。上手く武器屋の人に取り入ったんでしょうね」
「ああ、そういうの、得意だものな」
というより、
「なら、なんで言ってくれなかったんだよ?」
「……感情が昂ってて忘れてたの」
しっかりしてほしい。
まあ、いい。俺の所為というのもあるんだろう。心当たりはないけど。
「あと、そうだな。冒険者の説明。急いでて受付嬢の説明、拒否しちゃったからな。頼む」
「うん、簡単にするね」
カグヤは右手を広げ、左手の指を三本立てた。
「冒険者は8段階でランク付けされているわ。上から言うと……
SS・S・A・B・C・D・E・F
って具合ね。」
「へぇ」
モンスターも同じよ。と、カグヤが付け加えて話す。
分かりやすい。
「で、カグヤたちはEと」
「Eって言っても、戦闘だけで言えばDに届くかもってレベルよ?」
D、ね。
「Dじゃ分らんな。俺はまだ中身完全に地球の住人だからな。」
「ああ、そうね。」
ボスッ
カグヤがベッドに横になる。
両手の指を立てて、くるくると回して遊びながら説明してくる。
「一生、冒険者続ければDとCの境目あたりには、なれると思う。普通の人ならね。Dは完全にベテランと呼べるわよ」
「ん? じゃあ」
あれ?
「カグヤたちってすごく優秀じゃない?」
そう言うと、カグヤが凄い勢いで起き上がって来る。腹筋の要領で。
「そうよっ! そもそもリリが第ニ位階魔法を使えてるって時点で、Eってレベルじゃないのよ。」
第ホニャララ位階。
不可解にかっこいい単語が出てきた。俺の中の厨なニの部分が、刺激されてしまう。
思わずソワソワしながら魔法について聞いてしまう。
「んーと、魔法もランクみたいなものがあるのよ」
先ほどと違って、今度は両手を広げてみせて、説明が入る。
「魔法は十よ。一から十。第何位階魔法って感じでね」
「ふーん。凄さって観点で行ったら?」
「私もよく知らないけどね、」
ボスッ
カグヤが布団に寝転ぶ。
「私は、A級の人が第六を使えるって聞いたわ」
「A級ってどれくらいすごいんだ?」
「そうね……さっき私たちは優秀、つまり才能があるって言ったわよね?」
自分で言うか。まあ、そうだな。
「でもね、私たちじゃC級上位、良くてもB級くらいにしかにしか行けないと踏んでいるわ」
「ん? なんでだ?」
またベッドから起き上がる。
「才能があるって程度じゃそのぐらいよ」
苦笑いしているが、少しカグヤの表情は暗く見える。
悔しい、んだろうか。
「A級の人、私見たことあるの」
「……」
「まあ、見てみて分かったわ」
――届かない、絶対に。
瞳の奥に明らかな悔しさが見える。届きたいんだろうか。
「でもね。でも、でもでも。」
でもでも。と口早にまくし立て、
息継ぎ。
そして、こちらを見つめる。
「ルイなら、いける。」
なれる、とカグヤは言う。
根拠もないのに、カグヤは言う。
前々からこうだ、俺に過度な期待を抱く。重いなぁ。
ふぅ、と息を吐く。
両人が、同時に。
「大して説明できてなかったわね」
「ああ、確かに」
「基本的に、朝にギルドの受付前のコルク版みたいなものに、依頼の紙が張り出されるわ。
近くに“新聞”も張り出されるから、見た方がいいわよ」
「おう、分かった」
「私たちも適当にフォローするから」
カグヤが立ち上がり、窓を開けると窓から月が見える。
あるのか、月。
「凄い、冷静よね、ルイ」
「毎日、日頃から望んでいたことだからな」
「……私は最初、泣きそうだったわよ、ルイが居なくて。健気にもね」
健気、ね。
カグヤの憂いを帯びた表情と、雲に隠れつつも光る月は良く合う。凄く幻想的で、綺麗だ。
中身ポンコツなのに。
「期待していた側からしてみれば、受け入れたいってくらいだよ。」
「……そう。」
窓からカグヤが離れ、またベッドに座る。
「寝ようか。」
この部屋には、ベッドは一つしかない。
オンリーワンベッド。
「つまり、そういう事か?」
「……え?」
沈黙が流れる。
沈黙、
沈黙、沈黙、
沈黙、沈黙、沈黙…………
ボフッ!!
とカグヤの顔が燃えるように赤くなる。
「な、何言ってんの! ベッド一つしかないから仕方ないでしょ! そ、そう言う展開は期待しないでよ!」
「いや別にそういう期待はしていない」
俺は違くて、とつないで、
「別に床で寝てもいいんだよって、ことだよ」
目の前の少女は、健気にも下を向く。
「べ、別にいいわよ……その、一緒のベッドでも。何もしないでしょ?」
「ああ、いやそうじゃなくて。狭ければカグヤは床で寝てもいいんだよって、言いたかったんだ」
するとカグヤはぽかん、と言った表情を浮かべて、
「はあぁぁ!? ここ私の部屋よ? 言うなれば、ルイは居候よ? なんで私が床で寝なきゃいけないわけ!?」
「ベッドが狭いからな。」
「だから、ルイが床で寝るんでしょっ!」
しんみりとした空気をぶち壊すための、軽い冗談だったんだけれど。
結果的に俺は床で寝ることになった。
体痛い。
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