5.かぐやの災難?①
訂正箇所は勝手に直させて頂きます。
申し訳ありません。
内容が変わるわけではなく、言い回し等なのでご安心下さい。
私の名前はカグヤ・オリ、ただの女子高生だ。
……いや、だった。
私が、そうじゃなくなったのは、一年前のこと。
いつものように学校で授業を受けて、板書していた時、クラスの男子が何事か叫んだ。
それはもうびっくりするくらいの声で。
と思ったら、英文を書いていた谷原先生の足下の床が黒くなっているのに気づき―――
それからは一瞬だった。
気づけば私は浜辺らしきところで寝ていた。
時間が経てば、パニックに陥ったものの、累が話していたのを聞いていたおかげで『異世界転移』という可能性を考えることはできた。
だけど……もちろん最初は、訳がわからなかった。
周りには誰もいないし、どうすればいいのかまるで分からない。
食べ物を確保しようとしても、それすらどうすればいいのか分からないような状態だったのだ。
/////
1日が、経った。
現状のマズさが本格的に理解でき始めた。現状に向き合う必要性を感じる。
死を感じる。
水源は確保できたが、自分が野垂れ死ぬでは? と言う考えが頭をめぐる。
怖いよ、累………
2日目になった。
まだ体が十全に動くが、恐怖は払拭できない。行動は起こそうと、浜辺を歩いて探索するが……驚くほど何も手に入らない。
時折、浜辺の向かいにある森から唸り声が聞こえる。とても、ここから離れる勇気が出ない。
精神的な疲れも相まって、いつもより何倍も疲労が進むスピードが早い。
じわり、じわりと不安に侵食されていく。
……焦る。
3日目だ。
ここまでくれば、虫でもなんでも食べなくては。そんな考えが生まれ始めた。
だけど、そう簡単には踏み切れない。
まだ、夢やドッキリなのでは? なんて、思わずにはいられない。そんな、食べ物だともおもえないものを食えるほどメンタルできていない。
だけど。
死は、そこにある。
生きたい。
生きて、もう一回。累に会いたい。
私の憧れの人に。
小学生の時から、ずっと憧れていた人。
同じ高校に通って、付き合った私の彼氏。
今は、この世界にいるのかも分からないけど。
会い……たい…よ…………
何かが振り切れた。
そんな感覚がした。
……いいや。あいつに会えるなら。
虫でもなんでも、食べてやる。
絶対に! 生き残る‼︎
そう決めて立ち上がろうとした途端、視界が、歪む。
……え?
ここにきて、体力が尽きた?
いや、ちょっと、もう少しもってよ。
今、決心、したところな…んだ……か………ら――――
/////
気づけば、目の前に知らない天井があった。
ここ、どこ?
起き上がって、周りを見渡す。すると、今自分がベッドで寝ていたことに気づく。
いったい誰が―――?
思案していると、視界の端にあった扉がギィ、と音を立てて開く。
思わず警戒してしまうが、出てきたのは黄色の髪をした背の低い女の子だけだった。
その女の子は扉の隙間からひょこっと顔を出してこちらを覗くように見ると、その顔を喜色に染めてこちらへと近寄ってきた。
「よかったぁ! 目ぇ覚めたんだね!」
「え、ええ、助けてもらった様で。有難うございます、えっと……」
女の子は言いよどんでる私を見て、察したように自己紹介を始めた。
「ああ、私は冒険者で…えっとぉ、名前はリリっ!」
「(冒険者…)そうですか、リリさん、助けてもらってありがとうございます」
「リリでいいよぉ! 年、そんなに変わらないでしょ?」
そう言いながら、リリは気さくに私の寝ているベットの隣に座る。
「依頼でね、魔物除けの浜辺に異常が起きてないかって確認しに行ったんだよ。
そしたらあなたが倒れてて……どうしてあんなところにいたの?」
「えっと…それは……」
どうしよう。言うか、言うまいか。
また私が言い淀むと、リリが慌てたように、
「ああ、いや! 言いたくないことならいいんだよ?
ただ、あそこ、何もないところだからさ。海水浴とかならさ、わかるんだけど。
服装おかしいし、浮き輪とかもないし、倒れてたし。森にだって、大した魔物はいなかった訳だから……」
別に、リリさんだから話したくないというわけじゃない。
ただ、異世界人が処刑の対象だったりした時、今名乗るのはよくないってだけ。
名乗って直ぐに断頭台なんてシャレにならない。シャレにしようがない。
けど、もしかしたらこっちの世界にも異世界人が来て、文化を広めたりしたのかもしれない。
周りを見るに、文化レベルは高いとは言いづらい。
けどさっきリリさんは言った。
『浮き輪』って。
こんな世界なのに、浮き輪がある。
異世界人がいてもいいような世界なのかもしれない。
「……あの」
「もしかして」
こちらの声を遮るように声を立て、
リリが指を立てて覗き込むように、こっちを向く。
な、なに?
「あなたって異世界人?」
ドクン…!
心臓が跳ねる。自分の顔がこわばっているのがわかる。
焦る。恐い。先程まで安心して居た気持ちが霧散する。
どうしようどうしようどうしよう。
思わず目を瞑る、が。
「その反応……異世界人なのっ!? 凄い!」
予想とは違う、万歳というリアクションをとられ狼狽する。
ほぇ?
と、呆気にとられていると、リリさんが破顔して迫ってくる。
ちょ、ちか……!
「やっぱり!? 初めて会った! わーっ! なにかおかしいと思ったんだよ、すごい口調が丁寧だし、髪綺麗だし!」
「え、あ、いや今は髪は綺麗じゃないと思うけど……」
「え〜! そんなことないよう!」
呆気にとられた。別に警戒する必要は、なかった。
はぁ、なんか疲れた。
ひたすら質問責めにあって困っていると、この部屋をノックする音が耳に入った。
「なんでノックする必要がある?」
「バカ! 女の子が二人いるんだよ? それがマナーってもんだよ」
壁の向こうから会話が聞こえてくる。若い男の声と、太い男の声だ。
その声を聞くと、リリさんが質問をやめてドアを開けようと立ち上がり、ドアへと近づく。リリさんがドアの前に立つと、バンッと勢いよく扉が開き、
「はべっ!」
と、急に開いた扉に鼻をぶつけて倒れる。
「そんなもの気にす……ってどうした、リリ」
「うう〜っ!」
「だから、マナーだって言ってんのに……」
私は結構いい人たちに助けてもらったのかもしれない。
何となく、その光景を見て笑いながら思った。
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