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女神男子の正解を  作者: 作意 扉
第零章:スタートの前
16/18

16.脱出




 ――ステータスオープン



名前:ルイ・ヒスイ

種族:人間

LV:1

SP:197

MP:1879




通常スキル


身体操作LV13

闘気LV10

体技LV5

剣術LV1

鑑定LV8

魔力操作LV15



ユニークスキル


言語理解

腐敗



称号

天才・転移者






 ……さて、お待ちかね、脱出だ。






/////






 土魔法で公爵の持っていた鍵を真似て、鍵を作る。檻から手を出して……


 ガチャリ


 開いた。次はこの部屋を出る。これを考えるのが一番きつかったな。

 ドア側の壁に触れ、ペタペタと触る。

 部屋番がいるのは………

 ココ。


 手を止め、魔力を込める。

 


「第三位階音魔法――音破おんぱ



 キィィィイイイインッ!



 ドアの向こうでばたりと、誰かが倒れる音がする。ここで頭を使う。

 頭脳プレイ。



「第一位階音魔法――声玉こわだま



『奴隷がにげたぞぉぉおおっ!!』



 今、ドアの向こうで倒れている部屋番の声が、響く。再現してやった。


 ドタドタと足音が聞こえる。その音が、次第にザワザワという音になり………


 ガチャガチャッ……


 バンッ!



「どういう事………ぐぇっ!」


「まあ、焦るよね」



 焦って、コレクションの脱獄確認をせずに入ってきた使用人の首を横から掴み、へし折る。その流れで、部屋から出る。



「な、何ッ!」


「ど、どうして奴隷なんかが……」


「さよなら有象無象。

 第三位階火魔法――火輪ファイアーリング



 俺はニヤリと無邪気に笑って、自分の体を中心とした炎の円を拡げる。



「あっあつぃぃいいっ!!」


「なんだッ! この魔法はっ!!」


「あつあぁぁぁぁっ!!」



 とりあえず横になってて。少なくとも俺が逃げるまで。


 ――決まったぁぁぁーっ!


 部屋から出て、目の前の手すりを飛び越える。そのまま一階まで落ちる。

 えっと、ドアは……


 と、言ったところで、ぞろぞろと人がホールに入ってくる。

 来たか冒険者、と思っていると、


 するとその中から一筋、でかい殺気が身体に刺さる。


 そちらへ顔を向けると、黒い髭を蓄えた男が佇んでいた。いやになるくらい、渋い男。



「……本当に逃げるとはなぁ。

 だが、それはあの嬢ちゃんの努力を無駄にしたということに……っ」


「……」



 その男を目にしたと同時に、火球を放った。

 だがそれは手を払うだけで防がれ、その皮の手袋に焦げ目を残すだけという結果に終わった。



「おいぃぃ……会話ぐらいしようぜぇ。

 俺は少しばかりお前に興味があるんだからなぁ……」


「水槍ッ!」



 また手で払われた。

 と同時に、背後から声。



「その様子じゃあ、牽制はいらんよなぁっ?」


「っっ!!」



 蹴りを放たれる。

 

 跳躍で避ける。



「……なんだ、いやに機敏に動くじゃぁないか。檻の中で社交ダンスでも踊ってたかぁ?」



 そう言って、一瞬で同じく跳躍で目の前に飛んでくる。


 速すぎだろってっ!!


 風魔法で、天井まで自分の体を吹き飛ばす。

 男はそのまま落ちて、大人しく着地……

 しなかった。


 ドンッッ!


 着地と同時に、足首の力だけで、グオンと再び跳んで来た。


 また風魔法を使い、急速に体を落とす。

 万能、風魔法。大好き。


 勢い余ってゴロゴロと転がるが、

 すぐ立ち上がってバックステップを踏む。


 男を見ると、天井に腕を刺したまま、宙ぶらりん。

 そして、一点を睨んでいる。

 他の冒険者たちの集まっている方だ。



「お前らぁ、攻撃しろよぉ。

 金もらってる分は働くべきだろぉ?」



 C級冒険者たちがそう言われて、焦ったように襲いかかってくる。

 だが―――その足元が光り、先頭の冒険者の体が燃える。



「ぐわあぁぁっ!?」


「なっ…なんだっ!!」



 と、冒険者たちがパニックになってたじろいでいる中、



「魔法陣だろぉ」



 と、男が天井から、ズンっと着地。

 フゥッ………!

 息を、整える。



「えっ……魔法陣……ですか?」


「ほれ、そこら辺のアイツの足跡を見てみな」


「……なっ! コレは……」



 男がこちらをジロリと睨んでくる。



「足に魔法陣掘って、足跡の血で魔法陣を書くなんてなぁ……

 込める魔力量も、タイミングの難しさも尋常じゃぁないだろうに……っ!」



 ダンッと、

 男が加速し、

 跳びながら、ミサイルのような蹴りを放つ。


 それを屈んで避けて、咄嗟に前に転がる。

 と同時に、今自分のいた場所に脚が突き刺さる。



「粋なことをするもんだなぁ。

 これじゃぁ迂闊に動けないぞぉっ!」



 さっきから見事に全部避けてんだろうにっ!


 ブォンッ!


 唐突に放たれた拳を避ける。



 蹴りがとぶ  


   バックステップ


 回し蹴り


   頭を下げる


 回転しつつかかと落とし


   風魔法で吹き飛ばす――



 吹き飛ばせないぃっ!?


 横に転がるぅっっ!


 ドンっ

 壁にぶつかる、

 と同時に手を振って、氷の壁を生成。


 バキャァッッ!!!


 貫手で追撃される。



「おいぃ……コレで塞げるとでも………!」


「思ってないっ!」



 氷の壁の中にあった――

 ――魔法陣を象った(・・・)空洞が、光る。


 パキャァァ……!!


 男の右半身が氷で覆われ、その内に、男から離れる。



「ぬぅぅゔゔゔんっ!」



 バキャッ! と氷が崩れる。

 

 男が、ゆらりと上半身を揺らしながら振り向く。



「あの咄嗟の時間で、氷の中に魔法陣を作るなんてなぁ……

 どんな魔法の精度だぁ?」



 男はコートに付いている氷を払いながら、話す。



「あの檻の中でぇ………」



 ――どれだけの鍛錬を積んだんだぁ?



 こちらへ、歩いてくる。

 ゆっくりと、

 一歩一歩踏みしめて……

 ゆっくりと、



  ゆっ


    くり


      と



 ミシィッッ!!



「がっっ……はぁ……!」



 突然の加速からの、

 掌打。


 咄嗟に手をクロスしたが、あばらが折れた。

 が、



 ドゴォォォオオッ!!



 と、

 が吹っ飛んだ。


 その爆風と掌打で、俺の体はとんでもない勢いで吹っ飛び、

 壁を貫通。


 そしてそのまま、俺は広い庭に出た。






/////






〜レイリー視点〜


 今、なにが起きた?

 奴の腹に掌打を叩き込んだら、

 何故か(・・・)手から爆風が出て、奴が壁ごと吹き飛んだ。


 自分の手袋を見る。

 ……っっ!!


 

「………クックックッ!」



 静かなホールに、笑い声が響き渡る。


「やるなぁあの小僧。そうか、最初の一撃か。魔法陣は、作らせないように警戒してたつもりだったんだがなぁ……

 そうか、最初のか。」


 手袋には――

 ――魔法陣を象った焦げ目があった。


 魔力を込めたのは……

 氷の時か。

 また随分な量の魔力を込めたなぁ。

 まるで……



「俺が一切魔力を感知できないことを、知っていたかのようだなぁ」



 役立たず(・・・・)の冒険者たちを睨む。

 全員が、急に笑ったり、喋り出した俺を見て、どうしたらいいのか分からない、

 といった表情を浮かべている。

 

 クックッ。

 この中にはいないかぁ。

 おそらく奴が、檻の中で俺の事を、誰かからうまく聞き出したんだろう。


 あの嬢ちゃんがあそこまで執着するのもわかるなぁ。ここまでとはなぁ……


 感慨深く思っていると、冒険者連中が騒ぎ出した。まぁ、俺も冒険者なんだがな。



「レ、レイリーさんっ!

 部屋のドアが開いてしまってますっ! 他の奴隷たちを逃がさないようにしないと……!」


「無駄だろうよぉ」



 冒険者たちが、ポカンとした表情でこちらを見てくる。

 その視線に対して、三階を見上げながら応える。



「こんな事までやる奴だぁ。

 アイツら(・・・・)の凄さと価値が、分かってない訳がないだろうよぉ」


「は、はあ……?」


「要するに、もうとっくに逃げただろうという事だぁ」



 三階に、不自然な風が流れている。

 壁に穴でも開けたか。

 まあ、あの部屋以外は普通の素材だからなぁ、これでいい。

 あの小僧は兎も角、他のはあの男が所有するにはデカすぎる。

 いや、今となってはあの小僧こそがそう(・・)か。


 何年前からいたか忘れたが、

 その間ずっと、チャンスを眈々と狙っていた連中だぁ。

 ここで腐っていくべき奴らじゃあない。

 種族も含め、な。


 懐から葉巻を取り出し、魔道具で火を付ける。フゥ……と煙が、吹き抜けのホールに立ち昇る。

 やはり葉巻はいいな。

 あんなことがあっても、落ち着ける自分がいる。

 焦っている冒険者たちに背を向け、声を掛ける。



「あの貴族様に伝えてやってくれぇ……」


「その必要は無いね」



 声が響く。

 よく通る、カリスマ性を感じさせる声。

 振り向いて、その男と対峙する。金髪で短髪の、中肉中背の男。



「嗚呼、今日は随分と帰りが早いなぁ?」


「……本当に、やって、くれた、ねぇ?」



 いつも表情の動かない男の顔が、ヒクヒクと震えている。

 戦闘面での実力こそない筈だが、どこか恐ろしさを感じる。



「伝えたい事があったんだぁ。

 やはり辞職願い(・・・・)は、紙だけじゃなく、本人に言葉で伝えるべきだと思うからなぁ……?」


「……させるとでも、思うかい?」



 男に背を向け、奴の出ていった壁へとコツコツと歩く。



「悪いがなぁ………。

 やはり俺に守る(・・)なんてのはぁ、向いてなかったらしい」


「………」


「やっぱり、俺は元来―――」



 ――攻めるのに向いているらしいんでなぁ



 そう言い残して、壁から出た。

 さて、奴を追いかけるか。






/////






〜ルイ視点〜


 庭の方を、何とは無しに見る。


 ッッ!!!


 っ……いや、止まるな。


 俺は、逃げた。

 公爵家の門を出て、

 街中を走り回って、

 区切り(・・・)を飛び越えて、

 

 走って、

 走って、走って、

 門番を無視して、


 帝都を、出た。

 それでもまだ走る。

 目標は獣国方面にある森。


 持てる限りの魔力を使って、体を強化した。


 走った、

 走り続けた。

 そして、次第に歩き始め――


 ――止まった。


 外はもう、夜になっていた。

 本当に久し振りに空を見た。こういう時にしか、感じないのかもしれないから勿体無い。

 こんなにも、空というのは、広いものか。


 スゥゥッと息を吸い、

 ハァァッと吐く。

 空気を、堪能する。


 空を見上げ、さっき見た情景を思い出す。

 あまり、思い出したくないもの。



 さっき。


 庭に出た時、カグヤがいた。


 見た目は大して変わっていなかった、と思う。

 遠目だったからなんとも言えないけど。




 庭に出た時、

 俺は、カグヤと目があった。


 その目は―――





 ――蔑みの視線、だった



 これまで、何度も檻の中で見た、目。


 その目で、こちらを見ていた。


 コウの腕の中で。


 俺は、カグヤとコウは、

 2人だけは味方だと、信じていた。

 助けるのは無理だろうとも思っていた。


 分かっている――これは、俺の我儘だ。


 

「…………」



 仕方のないことだ。

 前を見るべきだ。


 人は変わるもの。

 そう…………そぅ……ぅ…。












 ――あ゛あ゛あ゛ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!






/////






 気付けば、

 自分の周りの地面が、自分を中心としてクレーターのように抉れていた。

 大きく、大きく、

 俺の心を反映するように。


 


 ゼロからスタート。

 そうしよう。


 頭をブンブンと振り、無理矢理思考を変える。


 まずはそうだな、名前を変えよう。

 カッコいいのがいいな。

 センスのあるやつ。

 俺は元の世界でいろんな言語を覚えた。

 それを使おう。


 ふと、目にかかる髪を見る。

 白………



『昇る、白』



 確か白はギリシャ語でレウコンだったか。

 昇るは………


 手のひらを、頭上の月にかざす。

 別に眩しくともなんともないけど、いかにも眩しそうに。

 指の間から月の光が漏れ、俺の顔を僅かに照らす。


 そんな自分の手を見て、ある事を思い出す。

 俺は檻に入れられる時、武器以外は何も取り上げられなかった。

 ポケットを弄る。

 そこから、一つのペンダントを取り出す。


 翡翠色の、ペンダント。

 それを、先程と同じように月へとかざす。

 あまり透明度の高くないそれをかざすと、顔にあまり光が当たらない。



 パァンッ!


 それを砕き、パラパラと落ちる破片を見ながら、俺は決めた。



「俺の名前は、今日から―――」



 ――レウ・アネベイノだ



 ステータスの名前が、変わった。






__________


 腐敗

 能力:対象を衰えさせ、腐らせる。

__________

 ここから、この物語は始まります。

 これからも全力で書かせて頂きます。

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