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カフェ【 if】の伝説   作者: 名無しの権兵衛
店主と魔の音が鳴るカフェ
3/7

カフェ【if】③

「そういえば、キリュウさん“キコの実”の搬入依頼してましたよね。アレって渋みが強い上に灰汁抜きが難しいって聞きましたけど…大丈夫なの?」



キコの実は手のひらに乗る、調度ビワと同じようなサイズで形も似ているが歯応えはゴムの様に固い

色は薄紫で匂いは良いが味はゴーヤの様に苦いと言われている果実である


食用よりも主に香水の原料や布といったものの色染め用に使われている事が多い


灰汁抜きも夜通しでお湯で煮込み漸く柔らかみが少し出る程度で味は変わらず


そこから高級レストランでは独自の用法によって味付けをしたり包丁を入れてお皿の上に飾り付けしたりするのだ



「ああ。この間いろいろ試してみたんだが面白い感じになってな。軽く湯がいて皮剥いて塩漬けにして置いといた後に水分抜いたらこうなったんだ。」



そう言うと店の入り口にかけてある網の中から干し柿の様に萎れたキコの実をエリナに渡すと食べてみろと無言でジェスチャーする


眉を八の字にして少し嫌そうにするエリナ


だが折角頂いた物を蔑ろにはできない


恐る恐る口に近ずけて小さめの一口でキコの実をかじる



「………ん!?モチモチしてて甘い!キコの実の香りも消えていないし!凄〜く美味しい!」



さっきまでとはうってかわって今度は目を輝かせながらキコの実をかじる



「コレ完全におやつですよ。こんなキコの実生まれて初めて食べました!」


「製造には結構時間がかかるが…まあフェス中の間は作り置きで何とかなるだろ」



木箱の中身のチェックを済ますとサインを帳簿に書き入れるキリュウ



「ほらエリナ。サイン済ませたぞ。まだ次の仕事が残ってるんじゃないのか?」


「そうでした!それではキリュウさんまたのご贔屓を。キコの実ご馳走様です!行こドードー!」



礼儀正しく挨拶するとエリナはドードーと呼ばれた鳥に跨り次の配達先へと向かった


ドードーはこの鳥の名前である。怪鳥の一種でクッピルと呼ばれている


クッピルの特徴と言えば長い首に大きな脚である。鳥ではあるが風に乗って飛ぶことは出来ない。頑丈な骨で構成されたその身体は脚が異様に発達している


よくエリナがドードーの首に抱きつきぶら下がったりしているが、クッピルの首はそれを簡単に支えるぐらいに頑丈だ


頭も大きく半分は口ばしで開くとヤシの実は加えられるぐらいにコレもまた大きい


走るスピードで言えば馬よりかは遅いが二本足で走る分小回りが人間と同じぐらいにこなせる


色などは多色あるがドードーは明るい黄色に翼の先は薄い青色である


犬の様に忠誠心が強いドードーはエリナの言うことをよく聞く。家族から頼りにされる事がドードーにとって喜ばしいことでもある


但し他の者に対しては結構ドライな面を持ち合わせているがエリナがよくキリュウに懐いている事からドードーもキリュウとに対して特別扱いをしている


そんなパートナーに乗り走り去っていくその背中を木箱を担ぎながら見送るキリュウはそのまま荷物を店の中に運び入れる



「今の声はエリナか?ということはまたあの鳥も来たのか?」


「来たぞ。っていうか仕入れの時はいっつも一緒だろ。」


「チィ。あの鳥めキリュウが撫でた時は何もしなかった癖に何故私の時だけ!」



小さな舌打ちの後思い返す様に少し俯き奥歯を噛みしめるアズの様子



「その高飛車な態度が気に入らなかったんじゃないのか?」



その一言で「ヌガーー!」と怒声を上げるアズを余所にキリュウは食材を冷蔵保存できる厨房下に片付ける








余談だが過去にアズはドードーの頭を撫で様とする際に手を容赦無く噛み付かれたのだ


魔王形無しであった。イケメンが残念になるぐらい変な奇声を上げたのだった






………………………………………………………





「掃除良し、テーブルにカウンター良し、仕込み良し。」



指差しながらチェックを入れるキリュウ


店に置いてある大きな置き時計を見るとその時間は既にオープン15分前となっていた


時間としてはいい時間で、少しでも早めにオープンできる様にと几帳面な仕事ぶりを見せる


コレもまたいつも通りに行っている訳で、もはや習慣といった方が早い


いつもと違う点を言えばエール様のグラスをいつも以上に冷やしてストックしているところだ



「アズ忘れてると思うから説明するが、フェスは3日間にかけて行われる。初日である今日は昼から飲み食いする客が多いし国民の殆どがハメを外しにかかる。まあ、祭りの初日だからはしゃぎたくなるのは当たり前だ。」



人差し指を立てて説明を始めるキリュウ



「二日目だが、この日は各国から魔王討伐に貢献した実力者や国王が集まる。拳剛バルジムや聖国のアーサーがそれだ。覚えてるだろ?」


「ああ。覚えてるとも。」



過去に戦った相手となると忘れる訳もない。それが強敵なら尚更である



「ロインの奴もこの日に来るだろうな。未だに旅を続けてると言っても優等生みたいな奴だからな。予定した通りに行動するだろうよ。…それで三日目だが」


「その日だけ店を閉めるだったな。城の宴会に出席しないといけないのだろう」



キリュウが三本目の指を立てるのと同時にアズはその日の予定を口にする


流石にもう覚えてきたのか、フェスの流れは分かっているみたいだ



「そうだ。だからこの二日で稼げるだけ稼ぐぞ。昼過ぎに3時間の休憩を入れる。それからは夜の部に切り替える」


「分かっている」



確認が取れた所でキリュウは「良し」と頷くとopenと小洒落た感じに書かれた小さな看板を持って表に出る



「カフェ【if】開店だ。」





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