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カフェ【 if】の伝説   作者: 名無しの権兵衛
店主と魔の音が鳴るカフェ
2/7

カフェ【 if】②

「フェスと言ったな?」



「言ったな。」



「一体何の祭り事なんだ?」



ふと気付いた疑問だった


アズはこういった事には無頓着でどういった記念日なのかを分かっていない



「……それ去年も言われたな。」



キリュウは呆れた顔で言った


それもその筈だ。このやり取りは店を始めてからというものの毎年恒例に行われている


キリュウ自体呆れはするものの、コイツらしいと好感的に答える



「《人類の栄光ある勝利の日》。今日で晴れて3年目だな。」



「…そう言えばそうだったな。魔王からすれば敗戦日、そうやすやすと喜べないな。」



「それ、全く同じことを去年も言ってたな。ていうか3年連続で言ってるな。魔王って“王”って付くぐらいなんだから一応は王様なんだろ?いいのかよ?そんなに記憶力がお粗末で…。」



挑発的な発言にアズも流石には黙っていられない


まだ暖かい紅茶をグビッと飲み干し、椅子から勢いよく立つと自己主張するように背筋を伸ばし、目付きも魔王時代の時のように鋭くする



「魔の王とは血統書だけで非ず。我が最も優れているのは魔力量にその質である。魔法に魔術は疎か禁呪に至るまで魔の業の全てを熟知している。それどころか魔力のエンチャントによる身体強化は魔術師にとっての弱点と言える非力さを克服している。我が力は歴代魔王の中でも上位の者とされている!」



キリュウの言葉が癇に障ったのか、台詞は徐々にヒートアップする


アズから伝わってくるプレッシャーは過去に世界を恐怖に染めてみせたそれは正に健在と言っても過言ではないのだろう


アズ自身の実力は勇者パーティーの一人だったキリュウ自身がよく知っている



「我が力はそれだけに非ず。そもそも「そろそろ店の前を掃除したいからピアノの調子を見とけよ」…む、致し方ない。」



アズの台詞の途中、キリュウの興味がない故に切り出される言葉にすんなりと応じてしまう元魔王


少し納得いかなそうだが仕事なのでそれはそれで割り切る





箒とちりとりを持って外に出るキリュウ


ドアを開ける際になる鈴の音が耳に入る


特に拘りのない音だがその平凡的な所が意外と気に入っていたりする



外は早朝の筈なのに既に活気付いていた


資材を乗っけた馬車や竜を使った運搬車が大通りの外れにあるこの場所からでも良く見える


向かえにある噴水上ではパフォーマンスの団体が時間の割り振りを最終確認していたり


色とりどりの布が一杯結ばれたロープで広場を飾る人々も見える



「いつも通りに起きたのは失敗だったか?なんだこの出遅れた感じ…」



「まいどー!どうもキリュウさん。注文分の食材持ってきましたよ」



いつも通りに店前を掃除しようとした時


大きな木箱を台車に乗っけて明るい挨拶とともに現れた赤髪の少女がダチョウの様な大きな鳥に乗っかっていた


赤髪のショートカットに大きい目は黄色に輝いていて、挨拶と同時に見せる笑顔は無邪気さを感じさせた


動き易さを考えて着ている作業着は男増しではあるが、女の子さを出すために上は少しはだけている


前髪に付けている可愛らしい花のデザインを凝った髪留めは年頃の女の子である証だろう



「エリナか。おはよう。今日も元気だな」


「はい、おはようございます!確認の後に受け取りのサインお願いしますね!」



エリナと呼ばれた赤髪の少女のハキハキとしたその働きぶりは、小さい頃からの店の手伝いが培ったものでもあるのだった



「お父さんが言ってたよ。キリュウさんの出す料理はウチの店のいい宣伝になるって」


「親父さんの仕入れる食材は値段の割には上等過ぎるぐらいに新鮮で上質だからな。俺の料理よりも質の良い食材のおかげだな。」



エリナの家は俗に言う家族営業をやっていて野菜や果物そして調味料などといった物を売っている


店の仕入れ具合も豊富で飲食店からは贔屓にされている


こういった食材の配達はお得意様以上に店の大将であるエリナの父が気に入った相手だけに行うサービスでもある


キリュウはいつものように食材に目を通して帳簿にサインをする



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