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カフェ【 if】の伝説   作者: 名無しの権兵衛
店主と魔の音が鳴るカフェ
1/7

カフェ【 if】①

魔王の支配を阻止して3年

世界に平和が訪れた




とある朝


木々に集まる小鳥の囀りが耳をこそばす


その鳴き声を朝の合図とし一人の青年がベッドから背を伸ばす



「ん〜〜。…今日もいい天気だな。」



寝起きのいい彼は目を覚ますと目を擦りながら着替えを始めた


彼が寝ていた部屋はベッドや机に椅子、本棚、そしてクローゼットがあって一つの部屋を使い切ったぐらいと言える広さだった


部屋にはベッドの横に窓が一つだけで寝泊まりするには十分な部屋だった


そのクローゼットから


土の様な茶色い布に襟元の紐で括る様なデザイン


そしてハンドポケットのついた灰色の長ズボン


そんな至って平凡な服を取り出し着る彼は、部屋の椅子に掛けてある長めの腰エプロンを手に部屋から出て行く


部屋を出ると迎えにもう一室へと続く扉


右を見ると突き当たりに窓だけ


左を向けば下りの階段がある


彼は迷わずに階段に歩を進めて寝起きらしくゆっくりと一段一段丁寧に下りていく


階段を下りきると折り返しがあり、もちろん彼は道なりに進み先へ進む


進んだ先はそれなりの広さがある広間だった


彼から見て左側はカウンターに合わせて背の高い椅子が数個


そことは反対側の広さがある場所には丸いテーブルが二つと椅子が四つずつ置かれているのが彼の立ち位置から分かる


カウンターの中は当たり前の様に調理器具やそれに伴う機器があった


彼は定位置の様にその中に入り食材のチェックをし始める


コーヒー豆、紅茶の茶葉、乳製品に砂糖


穀物品に油、肉類に魚介類、そして料理に使用するのに前以て仕込んでいた自家製のオリジナルソースなど…


一通りチェックを終えると彼はティーカップやグラスを手に取り布で綺麗に拭き始めた


無音だった部屋にキュッキュッっといった音が木霊する


その中、退屈を持て余した視線が部屋内を見て回した



カウンターから見える景色はテーブルが一番視線が置きやすかった


頭を上げればそこにテーブルが二つ並んでおり、カウンターなどは段差により腰掛ける人の手元など見えはしない


そんな分かりきった視界の中に一箇所だけとある一人だけに用意された場所があった


それはテーブルが並ぶ更に右側だった


周りに少し間隔を取り数センチの段差がある小さなステージ


そこには一台の綺麗な黒が飾られた立派なピアノが置かれていた



彼は暫くそのピアノを見つめると、再び自分の作業に戻った



………………………………………………




少し経つと上から物音が聞こえた


それをいつもの事だと聞き流す彼は作業を進める


さっきの自分の様にゆっくりと階段を下りる時のちょっとした木の軋む音に耳を傾けながら、火に掛けていたポットの中身が沸騰したのを確認した


ティーポットの中に乾燥した葉っぱを適量に入れると次に沸騰したお湯を上から注ぐ


ここで葉っぱから色が滲み出す前に入れたお湯の内の半分を捨てて再びお湯を入れるのが彼のこだわりだ



「おう。おはよう。」



階段に続く通路に向かってそう口にする彼


その視線の先には、この世のものとは思えない長く下ろした綺麗な銀の髪に凛々しく整った面立ちをしたクールな男がいた


服装は黒いコートを身にまとっていた


身長も高め、それに似合うスラッとした長い脚に、服の上からでも判るモデル体型


服とは対処的に肌も白い彼は女性が理想の男性を求めるとしたら大方クリアしているであろう美男を彼は持っていた



「ああ。おはよう。」



丁寧に挨拶を返す美男の彼はカウンターに近寄ると同時に一つのティーカップを出された



「いつもの紅茶だ。」



「すまないキリュウ。ありがたく頂く。」



湯気が立つティーカップにゆっくり口を付ける彼をよそにキリュウと呼ばれた男は別の作業に取り掛かる



「今日は中央でフェスがあるからな。いつもより賑やかな1日になりそうだ。今日もアレの演奏宜しく頼むぞアズ。」



キリュウと呼ばれたこの世界でも珍しい黒髪に黒目の青年


目付きは少し鋭いがそれは表情が柔らかくなれば全然気にならない程度だ


加えて短くツンツンした前髪に多少伸ばした後ろ髪は紐でくくられていた


一般の人間より太めの腕には切り傷の痕が残っておりいよいよをもって怪しさを感じる


そんな彼こそ異世界である修羅の国からやって来た住人であり勇者と共に世界に平和をもたらした勇者パーティーの内の一人


鬼柳その者であり…



「任された。今日は少しアップテンポな曲にしよう。なにピアノの演奏は私にとって唯一と言っていい楽しみだ。」



そしてアズと呼ばれたこの男


この男こそ世界を支配しようとした唯一の人類の宿敵であり恐怖の象徴とも言える、勇者パーティーに討伐されたと言われている魔王その者であった



二人の会話からしてそういった宿敵感を持った会話は一切見られない


寧ろ、お互いに友好的でお互いに向けあった信頼感は昔からの親友とも言える


何が一体この二人をどういった経緯で二人でカフェなどを始めたのかも理解に苦しむ





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