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下山しよう!

ブクマが100を超えました、ありがとうございます!

『信吾ッ!!!!!』


ルントが快く許してくれたのでホッとしていたが肝心な事を忘れていた。曽祖父の曾孫ということで追及を逃れているが宮殿を半壊させてただでさえ罰を受けている最中だというのに二連発目の不祥事である。いかに激甘な曾祖父ちゃんといえど怒って当然だ。


『うっ・・・』

『齢は百に足らず、いかに連れ帰ってまだこの世界に慣れておらぬといえど二度続けての不祥事!舌の根の乾かぬ内に・・・しかも暴力沙汰とは!』


アインツベルも此処までは暴れんかったぞ!とキツイお叱りを受けてしまった。


『曽祖父ちゃん・・・勘弁』

『ならん!!しばらく山を降りて頭を冷やすがいい!』


曽祖父ちゃんらしからぬキツイ言葉に俺以上に周りがざわめいている。


『グランド様!それはあまりに・・・』

『そうです!百に足らない年齢の龍を下界になんて!』

『爺様、それはあんまりじゃねえのか!』


ルント達が口々に抗議するが曽祖父ちゃんは頑として応じない。まあ当然だろう。子供の頃叱られて廊下に立たされたり家の外に出されたりしたこともあったしな。その時は餓鬼の時分だったし、近所に公園や顔馴染みの店があったりして匿って貰ったりしてたっけか。怒られるなんて何年ぶりだろうか・・・。

しかし龍にとって百歳って人間換算で何歳なんだ?万を数えるならほんとヨチヨチ歩きって感じだが。周りの反応を見るに間違ってない感じがするな。とはいえ俺も人間として35年生きてきたんだ。此処は一つ曽祖父ちゃんの言葉に従って山を降りるか。何も今生の別れって訳でもないんだしな。


『わかった、曽祖父ちゃん・・・ちょいと山を降りて反省するよ。この世界の事も勉強しなくちゃいけないしな』


そういうと驚きの視線が今度は俺に集中する。曽祖父ちゃんが一番驚いてる気がするのはスルーしとこう。


『いいのか?下界には人間や魔物もいる!危険だぞ!』


魔物は知らないがお前等神様に等しい存在だろ、なにビビッてんだよ。いいのか頂点の存在がそんな弱腰で。それともやっぱし俺の年齢が三桁に行ってないのがそんなに不安なのか・・・?なりはでかくとも人間で言えば数歳の子供が一人で出かけようとしているのなら引き止めたいのが人情ってもんだろうけどな。


『いいんだよ、この際だが俺は長いこと人間として暮らしてきてたからな』


帰ってきて早々追い出されるのはアレだが曽祖父ちゃんが決めたことだし、いくら罰が重かろうと皆に言われてハイそうですかとやめる訳にもいかないだろう。


『じゃあな曽祖父ちゃん!ちょっとの間お別れだ!』


正月には帰るから!って正月あるか?この世界?まあそんなことはどうでもいい。俺は助走をつけて飛び上がると翼を広げ、山頂から飛び降りた。人間のときならば問題だが今の俺には翼がある。本能に従って翼をはためかせると自然と体は風に乗り、自由落下から自力での飛行へと徐々にシフトしていく。


『うっひょー!これは・・・すげえな!』


人間はかつて空に憧れて様々な物を開発した。それは気球だったり飛行機だったり。パラシュートだったり、ハングライダーだったり。しかし今の俺は自力で空を飛んでいる!風を切って、自分の力で!決して飛行機より早くはないかもしれない。けれどこれは誰の力も借りずにできることなのだ。年甲斐もなくテンションは爆上がりである。


『人類の夢に届いたぜーっ!人間やめてるけど!』


テンションがどんどんとハイになっていく俺を他所にその頃山頂では・・・。



『シシリアー!大変じゃあ!』


グランドがあたふたとあわてながら宮殿の中を走っている。人目を憚ってルント達の前では冷静に務めて見たものの可愛い曾孫が家を飛び出してしまったのは一大事であった。それが例え自分の言葉から発したことであってもだ。


『どうしたのですか?そんなに慌てて・・・』

『信吾が・・・信吾が出て行ってしまったんじゃ!』

『あらまあ!どうしてそんなことに・・・』


シシリアがそう尋ねるとグランドはぎくりと肩を震わせると露骨に動揺しだした。あからさまに怪しい素振りにシシリアの表情はたちまち険しくなりグランドはたまらず事の顛末を話した。


『ということだったんじゃ・・・』

『まあグランド!貴方って人は!ドラゴンが100を数える前に下界に降りるなんて聞いたことがないわ!』

『ひー!勘弁してくれい!』


ドラゴンは体こそ強大だが知識の発達は遅く、人間と比べると子供の時間が長い(あくまで人間の感覚ではだが)。100歳以下のドラゴンは総じて孤独というものに弱く、群れからはぐれたドラゴンは気性が荒くなる傾向にあり人間の討伐対象にされてしまったりしている。問題は討伐対象にされるからといって討伐できるかといえばよほどの幼体でなければ無理な上に親の恨みを買うこともあるため実際は撃退程度にとどまっている。ちなみにルント達は今年ですでに500歳を超えており人間で言うと16歳くらいの精神年齢をしている。彼らくらいになるとようやく下界に降りて人間と交流したり、戦争の調停役として降臨したりと世界の調和に一役買える存在となるがそれでもグランド達から見れば青二才に過ぎないのである。


『仕方ないわ、人間として35年生きてきたのなら他の子達みたいにだまされたりすることも無いでしょうし・・・でもドラゴンとしては未熟も未熟、いろいろと教えておかないといけないから私が後を追います』

『えー、ワシは?』

『貴方が原因でしょう?お仕置きされたいの?』


そしてもう一つの懸念は悪人や悪い精霊によるドラゴンの悪用である。そもそもこの世界で一人のドラゴンの後ろ盾を得ることは大国の後援に等しく、過去にもドラゴンと親交を結んだものが成り上がった事は多く書物や伝記にもなっている。それゆえに権力者や宗教家、果ては冒険家などはこぞってドラゴンに取り入ろうとする。それらとの適度な距離感を図るのもドラゴンとして重要なことなのだ。そして最後にドラゴンが持つ技術が上げられる。


『信吾ちゃんには私達の技術を学んで貰わないといけないからねえ』


ドラゴンは魔術師の頂点として精霊を使役し、それを物体に宿す技術を持っている。それは並みの魔力ではなく、物体の創造に近いものである。ドラゴンの技術には常に燃える石や決して溶けない氷、風を呼ぶ羽や決して砕けない金属など様々である。その中で精霊に近い体質のエルフやドワーフ達がそういったドラゴンの生み出した物を加工し世に送り出しているのだ。

ドラゴンが生み、ドワーフが鍛え、エルフが装飾するといった風に役割があり。その中でエルフとドワーフの役割が入れ替わったり片方だけが鍛造と装飾をこなしたりしてライバル関係にあるのに対しドラゴンの生み出す能力だけは古今東西代替できるものはいない。錬金術師はかろうじて近しいことが可能だがそれもドラゴンが生み出し、彼らが加工した魔法道具を利用してようやくである。とどのつまりドラゴンとは権威であり、軍に匹敵する戦力であり、魔法道具の原材料を生み出す鉱脈である。



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