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商会のあれこれ

魔力の流れを確認しながら魔法を発動しランドの体に循環させていく。こうすることで遅効性の水魔法でも効果が高まる。それと同時に風魔法の治癒を発動することで表面の傷にも治癒を施していく。


「痛みが消える、ありがてぇ・・・」

「おおげさに言うない、当たり前の事だ」


俺の魔法は回復特化、打撲や挫傷くらいなんてことない。まあ、特化といってもそれ以外は制御できないだけだが。

怪我は治ったがランドそれなりに体力も使っているのかやや疲れた表情をしている。商売が台無しになった精神的な疲れもあるんだろうか。


「此処が・・・件のお店ですね」


そう言うとアキナは少し不機嫌な様子で店を見上げた。


「アキナ、怒ってる?」

「怒ってません、別に・・・旦那様とのお買い物が台無しになったとか思ってませんから」

「そ、そう」


不機嫌オーラがムンムンと漂うアキナにちょっと引きながら二人はバンガラ商会の中へ入っていった。


『いらっしゃいませー』


店内はそれなりに広く、店の中には商品がうず高く積まれている。棚にあるわけでもないのに高いところではアキナの肩位まで商品が積まれている。


「なんか雑多な感じがするね」


クラウディアがそう言うとアキナも少なからず似たような感覚を感じていた。量もさることながら商品の内容に統一感が少ないのも理由かもしれない。

良く例えればデパートや百貨店のように多種多様な商品が揃っているが悪く言えば商品に統一感がなく、高く積まれた商品のせいで窮屈に感じる。


「それと・・・もう一つ気になったんだけど・・・」

「どうしたの?」

「私見習い時代に色々とお店を巡ったりしたんだけどチラホラ見たことある商品があるんだよね」


クラウディアは神官として見習いをしていた頃、治癒術の妙から旅に出て主張で仕事に掛かることも多かった。その際に露店を見て回ったり、ウィンドウショッピングを楽しんだりもしていた。


「露店で見かけた物に良く似てる気が・・・気のせいかな?」


大型の店舗では製造業を兼業していることもあるので系列のお店ならば似た商品を持っていることも珍しくない。しかしクラウディアが見覚えのあるそれは露店などで見るそれだった。布織物や工芸品、ガラス細工などなど。

職人を囲える商店ともなると土地の影響が良く出るので露店で商売をする人間と売るものが被る事など少ないのだが・・・。


「怪しいね、やっぱり」


アキナが同意する意思を見せ、二人は情報収集を続ける。原産地こそ明記していないが所々で異国情緒すら感じさせる商品が陳列されており、二人の不信感をズンズンと積み上げている。

商品は売っても売っても追いつかないのか捨て値で売られており露店で売られている商品よりもずっと安い。


「ねえ・・・これって、やっぱり・・・」

「どうでしょう、ですがもし私達の考えている通りだとするとどうして誰も咎めないんでしょうか」


おそらく捨て値で売れるのは仕入れ値が非常に安い為、そして何故安いのかはというと・・・。


「これ・・・」

「まあ、そういうことですよね」


驚いたことに新商品と書かれた棚にはランドが故郷の村で作っていた紐や帯が並べられていた。ランドの村では帯の色や模様は家によって様々であり、決して同じ物はない。値段も正規に仕入れたとはとても思えないほどやすい。


「どうするかなぁ・・・どうしたらこの事を解決できるんだろうね」


冷静に考えて見ると彼らが今回のような事件が当たり前のように起こっていることから察するにこの街の警邏を担当している騎士や兵士達がまともに働いていないかもしくはなんらかの圧力が彼らに働いているに違いないということである。


「一旦引き返してもう少し調べた方がいいかもしれませんね」


後ろ髪が引かれる思いだったが二人は怪しまれないように少しばかり商品を見学し、やがてこっそり店を後にした。


「・・・ということがありました」

「なるほどなあ、となるとバンガラ商会は商売敵である露店の店主達から商品を巻き上げて捨て値で売ってやがるわけか・・・」


仕入れ値がゼロなので如何様に売ろうとも損はせず、旅商人の売るものなので足がつき難いと言った厭らしいやり口である。


「ちくしょう・・・これじゃあどうしたらいいんだ」


ランドが悔しげに机を叩いた。彼にとって数少ない現金収入の方法を失ってしまったことになる、はっきり言って死活問題だ。

村の人間にとって現金で収入を得ることは思いの外難しい、なぜなら農業の盛んなこの国では穀物は非常に安価で供給過多の為輸出業者はともかく国内で販売するには加工業も行うかブランド化するしか方法はない。

商品作物も育てたいが一般の村にはそれを出来るだけの余力は少なく、手間に比べて利益が少ないので失敗のリスクも鑑みて実践する者は少ない。そんな中でランド達の様な手工業の職を持つ者は例外として安定した現金収入を得られる数少ない人間であるが、当然ながらその分食料生産に振れるマンパワーは少なく農家としては自給自足に届くかどうかと言った収入である。

その為安定した生活や不測の事態に対応するには何よりも現金収入が不可欠だし、商売をする上で税金など各種の支払いも控えている。

税金を滞納した場合ランドは農奴として安い賃金で過酷な労働を強いられることとなりそうなったらランドの家が再び帯など商うのに何年もかかってしまうのだ。そうなると働き手が減った彼の家は最悪破産して離散するか、借金を返す為に借金を重ねるといった破滅まっしぐらの没落生活が待っているのだ。









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